予測した先 乱馬、遅いな。どうかしたのかな。 まさか事故・・・それとも、何か事件に巻き込まれた? 結婚した今、帰りの遅い乱馬のことを考えると、頭をよぎっていくのは、身体のことばかり。 玄関を出て、扉の前に立つ。 空の色は昔と全く変わらない。 ちょっと前までは、この時間になれば瞬いていた星も、まだ見えない。 藍のかかった色の空は、喧嘩ばかりしてたあの頃を思い出させて、 今でも胸をきゅっと締め付ける。 あれから、乱馬とわたしは・・・・・・。 流れていく雲をぼんやりみつめた。 あの頃は、結婚して一緒になれたら、不安から解放されるって思ってたけど。 気持ちを確かめ合って、夫婦になっても、乱馬と一緒にいない時間がある限り、不安は消せない。 どんどん、我儘になってる気持ち。 乱馬のこと、ひとり占めしたいっていう想いが、こうなって余計に強くなるなんて思わなかった。 静かに目を閉じる。 耳に木々がざわめく音が聞こえた。 あの頃と何も変わらない。 ん? 何かが顔の前をかすめた。 ゆっくり目を開いたら、目の前に、待っていた顔があった。 「ら、乱馬。」 玄関の扉に手をかけて、顔を近づけていて・・・それはまるで・・・。 「え・・・あっ。」 慌てて乱馬の頬を両手で押える。 「な、なにすんだよ。」 閉じていた瞳を開けながら、それでも乱馬はぐいぐい顔を近づけようとしてきた。 「こっちが聞きたいわよっ。」 押えた頬を今度はむにむに掴む。 「だって あかね、顔上げて、瞳閉じてるから。」 「それは。」 「だから、おれはてっきり・・・。」 「・・・・・・。」 別に、それは嫌じゃないけど・・・でも、そういうこと全く今考えてなどいなかったから。 「そんなつもりで、上見てた訳じゃないもん。」 そう言うと、乱馬は わたしの身体から離れ、上を見る。 「・・・なに、見てたんだ?」 「空。」 ようやく輝きだした一番星が目に映った。 「・・・・・・。」 一時、黙って、ふたり並んで空を見上げる。 そのうちに、だんだん雲の色も空に混ざって見えなくなり、空気もひんやりしてきた。 「おれ、あかねのこと、不安にさせてんのか?」 「え・・・どうして?」 いきなり、乱馬が言い出したことに、正直驚いてしまう。 「だって、あかね、昔から・・・なんかあると空、見上げてただろ。」 「・・・・・・。」 あの頃のこと、覚えててくれたの? 「だから、また、おれ・・・なんかしたかなって。」 心配してくれているのか、乱馬は不安そうな表情をしてわたしの顔を見る。 「ううん、なにもしてなんかいないよ。」 「本当に?」 「本当に。」 乱馬はあの頃とちっとも変わってなんかいない。 優しいまま。 だから、不安になるのかな。 なにも出来ないわたしだから、このままでいいのかなって。 乱馬の優しさに甘えたままでいいのかなって。 「いつもより、ちょっと遅くなったもんな。」 「え・・・うん。」 「だから、ここで、待っててくれたんだ。」 「・・・うん。」 そういうことにしておこう。 「そっか・・・嬉しいよ。」 「えっ。」 やだ・・・なんだか照れてしまう。 「あかねがここで待っててくれてるってだけで。」 「・・・本当に?」 「本当に。」 乱馬は玄関の扉を開けて、わたしを先に通す。 上にあがって、乱馬の方に振り返ると、まだ乱馬は外に立っていた。 「乱馬?」 「ただいま。」 「・・・おかえり。」 ちゃんと進んでる時間を すぐそこで感じながら、急いで 冷めた鍋を再び火にかけた。 =おしまい= 呟 言 未来にきても煮えてんだか煮えてないんだかな・・・(汗) こっちも何が言いたいのさって話でありますが、 現代から続いてきた先っていうのを書いてみたかったというか。 何気に乱馬くんがくさっなのは、未来だからってことで(逃) ひょう