あ。見つかっちゃった? 理由はいらない 「夫婦は一緒にいなきゃだめよ。」 そう言われてあかねの部屋で過ごすことにした、乱馬とあかね。 お互いに背を向けて座る。 ぎこちなく、重い空気が漂う・・・ 間がもたない。 息苦しい。 ドキドキしすぎてくらくらする・・・。 何か話さなきゃっ。 何か言わなきゃっ。 お互いが気を遣い合っているせいで、ますます雰囲気が重くなる。 あかねはムードを良くしようと思いたち、乱馬の方を明るい声を出しながら振り向いた。 「ね、ねぇ。乱。」 乱馬は薄目を開けて唇を突き出していた。 あかねは驚き、次の瞬間!! ばちーん!! 乱馬の頬に、平手打ち。 「いってーっ! 何すんだよっ!」 「こ、こっちが聞きたいわよ! 何してんのよ!!」 「え、キスだけど。」 「それは、わかってるわよっ! どうしてかって聞いてんのよ!」 「夫婦がキスしちゃ駄目なのか?」 「そんなこと、言ってないでしょ、急に、急にしようとするから。」 「んなことに、急もゆっくりもあっかよ。おれがしたいから、する・・・どこが悪いんだよ。」 「!!」 乱馬の態度に、あかねの顔はみるみる引きつっていく。 「なに、その自分勝手な言い方! わたしの気持ちは無視な訳?」 「したくねーのか、おめーは。」 「こんな風にはしたくなんかないわよ。」 「なんで?」 「なんでって・・・。」 あかねは言葉に詰まる。 「だったら、いつ、おめーはおれとキスしたくなんだよ。」 「・・・・・・。」 「おれがしたいから、しちゃ駄目か?」 「駄目。」 「・・・・・だったら、もういいよ。 おめーみてーな色気もねぇ女と、誰が好き好んでキスなんかするかよ。」 乱馬はそこまで言ってはっとした。 しまった!! つい、いつもの、調子で・・・。 あかねの瞳に映った自分の顔が歪む。 「そんな風にしか、わたしのこと、見てくれてないんだ・・・。」 頬をひとすじ・・・涙がつたう。 乱馬は罪悪感から逃れたくて、あかねを怒鳴りつけた。 「あー、もう、何でわかんねーかなっ!」 「わかんないわよっ!!」 結局、あかねに部屋を追い出された乱馬。 しばし廊下にたたずんだまま、あかねの部屋のドアを見つめる。 どうしろって言うんだよ? 愛してるなんていいながら、しなきゃ駄目なのか? おれはそんな冷静な人間じゃねぇ! あかねがそういう男が好きだったら おれは・・・おれは、変われねーよ。 あかねは部屋で泣いていた。 乱馬と結婚したことを後悔する。 わたしじゃ、駄目なんだ。 わたしとじゃ・・・・・ 晩御飯になり、ふたりは居間にいた。 交差する視線は、決して合うことはなく、 お互いに気になるけど、その顔を、その瞳を見れない。 乱馬はあかねの流した涙の跡に、その胸を締め付けられる。 あかねには、何も言わず黙々と食事をする乱馬の様子が怒っているようにみえて、少し怖かった。 「ごちそうさま。」 当然、箸の進まぬあかねは早々にその場を立ち去る。 普段通りの乱馬の様子に、こころが痛む。 わたしのことなんか、気にならない? 「あら、あかねちゃん、もういいの?」 全くといっていい程、食べていないあかねの様子に、乱馬の気持ちは落ち着かない。 んだよ、飯食わねーのは・・・おれ、責めてんのかよ。 「うん。」 元気のない返事をしたあかねは、部屋に戻っていった。 乱馬は食事を済ませ、部屋に戻ると、あかねがそこにいた。 「ら、乱馬。」 俯いたまま、一枚の紙切れを差し出す。 「何だよ。」 「・・・・・名前、書いて。」 「何だ?これ?」 「いいから、書いて。」 あかねの手からその紙切れを奪い取る。 離 婚 届 そう書かれた紙。 「り、離婚? おめー、一体いつの間にこんなもん。」 「・・・・・婚姻届、出した時に・・・こっそりもらってたの。」 「なんで!」 「だって乱馬、いつだってわたしに優しくなんかないし、 好きだなんて言ってくれないし、愛してるなんてもっての他だしっ。」 「・・・あのなー・・・だからって、なんでこんなもん、籍入れた日にもらってくんだよ。」 「それは・・・。」 当然、乱馬はそれを破る。 「あっ!」 「何が、気にいらねぇんだよ。ちゃんと言ってくれねーと、おれにはわかんねぇよ。」 「・・・乱馬はどうして、わたしと結婚したの? やっぱり、この道場のため?」 「こんなぼろ道場のために、んなことすっかよ。」 「な、なによ、その言い方!」 「そんなもんのために、人生決めっか。」 「じゃあ、何よ。」 乱馬は今までに見たことがない程の真剣な瞳であかねを見つめた。 その瞳に魅入られてしまう。 「あかね、選ぶのに理由、いるのか? おれはおめーといたいから、一緒になったんだ。」 「・・・・・・乱馬。」 あかねのこころの、靄が晴れる。 「・・・悪かったよ。」 「え?」 「あかねの気持ち、無視するようなことしようとして。」 「ううん、わたしも、素直じゃなかった。」 「・・・え?」 あかねは乱馬を見つめかえす。 「キス、しよ?」 「・・・・・うん。」 ふたりはそっと唇を重ねた。 =おしまい= 秘密的呟言 にーぼーさまに差し上げたキリリク小説。 同じ物を載せるのも芸がないし、にーぼーさまのところに遊びにいったとき ついでにでも読めるし・・・という理由であえて隠してみたり・・・。 きっと探す人もいまい。 でも、置いとかないと、自分サイトに置けないもん送るなーーー!! と、怒られそうなので置いとります。 あえて探してくれた方がいらしたら感謝vv ひょう