想いが届くまで 隠 的 食事が終わり、あかねは部屋に案内された。 「ひらひら、かわいい。」 窓辺にかけられたレースと刺繍の施されたカーテンに触れて、嬉しくなった。 その時、乱暴に扉が開いた。 「え。」 「え?」 何も知らない乱馬がそこにいた。 「・・・な、なんでここにいるんだよ。」 「ここ、わたしのお部屋だから。」 「違う。ここはおれの。」 と言いかけて、あかねの表情がみるみる曇っていくのがわかった乱馬は慌てた。 「乱馬のお部屋だったの? わたし、乱馬のお部屋、取っちゃった?」 「い、いや・・・なんでもねぇ。」 「・・・・・・。」 涙を必死にこらえているような、そんな顔をあかねはしている。 「大体、おめーなんなんだ? いきなり現れて、いきなりここに住むなんて。」 「・・・わたしのお父さんとお母さん、いなくなっちゃったの。」 「え。」 「遠い遠いところにふたりで行ったんだって。もう、戻ってこれないって、 みんなが言ってた。」 「・・・・・・。」 「それで、わたし、ひとりぼっちになったの。」 「・・・そか。」 「本当のお家にいたかったけど、ひとりじゃいられないから。 だから・・・。」 「なっ、泣くなっ!」 「・・・・・・。」 あかねはぽろぽろと、大粒の涙をこぼす。 困り果てたおれは、なんとか泣き止ませようと思い、 首にかけていたペンダントをはずした。 「これ、やっから。な? おれの一番の宝物だっ。」 母親のくれた、それをあかねの前に差し出す。 「これ、なに?」 「よくは知んねぇけど、魔除けのペンダントだ。 悪いことから、身を守ってくれる。母さんがくれた。」 「そんな大事な物、もらえない。」 「やるって言ったら、やるっ。」 あかねの手を掴み、手のひらに、それを置いた。 「それしてれば、嫌なこと、起こんなくなっから。」 「・・・本当?」 「ああ。」 「・・・・・・。」 「だから、泣くな。」 「うん。」 頬を涙で濡らしたまま、頷く。 「・・・いいな? もう泣いたりすんじゃねぇぞ。」 部屋を出ようとするおれを、あかねは引き止めた。 「待って、乱馬。」 「ん? まだ、なんか。」 「これ。」 そう言って、あかねは胸元で輝く、大きな石の入ったブローチをはずす。 「わたしのお母さんのなの。さっき、お母さんのかわりって言ってもらったの。」 「うん。」 「乱馬、お母さんからもらったの、わたしにくれたから、わたしもこれ、乱馬にあげる。」 「いっ、いいよっ。それはおめーの大事なもんだ。 おれはいつだって、母さんからもらえる。けど、おめーのは・・・。」 「ううん。乱馬、わたしにお父さんとお母さん、貸してくれる。 だから、これ、乱馬に。」 あかねはおれの胸元に、そのブローチをつけた。 「・・・大事にするから。」 「うん。わたしも、これ、大切にするね。」 「おやすみ。」 「おやすみ・・・。」 おれの頬にそっと、あかねはおやすみのキスをしてくれた。 それから、おれとあかねはいつも一緒に遊ぶようになった。 気が付けば、いつも隣にあかねがいた。 あかねに寂しい想いをさせてはならないと、子供ごころにわかっていた。 出来るだけそばにいてやりたかった。 その実、そばにいたいと思っていたのもあったけど。 あかねは、あれ以来、おれの前で涙を見せることもなく、 親父たちの前でも、明るく振舞って見せていた。 やはりどことなく、遠慮している感じがあったけど、 おれにだけは、こころを開いてくれてるように思えた。 時折寂しいのか、一緒に寝てほしいと、枕を持ってくることもあったし。 だけど、段々大きくなると、あかねも少しずつ、事実を理解し、 気持ちに整理をつけることが出来るようになった。 それが、おれには少し寂しく思えていた。 そして、おれとあかねが初めて出逢ってから、十年の月日が流れた。 「乱馬、乱馬。」 「ん・・・・・・。」 うっすら目を開けると、輝く笑顔をした女の子がおれの顔を覗き込んでいた。 あまりにも、きらきらとしていて眩しくて、天使が舞い降りてきたのかと思った。 思わず、触れてみたくて、手を伸ばす。 「起きた?」 「・・・え?」 伸びた手は空を切った。 その代わり、腕の辺りを掴まれ、身体を前へと引っ張られる。 「え・・・えええっ!! なっ、なんであかねがっ!」 「あ、これ?」 メイドの服に身を包んだあかねが目の前にいた。 昨日まで腰の辺りまであった髪も、ばっさりと切られ、 肩にすらかからない長さになっていた。 「似合う?」 「・・・・・・。」 その格好も、その髪型も悪くないな・・・と思いつつ。 「そ、そういや、おれ付きのばあさんはどうした?」 「ばあやさん、もうよいお年でしょ? この頃、この仕事辛いんですって。 だから、わたしが代わりに。」 「・・・そうか。」 もう・・・こんな格好じゃ眠れねぇな・・・。 肌蹴た胸元をシーツで隠しながら、あかねが用意してくれている服に手を伸ばす。 「乱馬付きだから、なんでも言ってね?」 おれの髪を結いながら、どことなく楽しそうな声であかねはそう言った。 食堂に行くと、親父たちはすでにもう座っていた。 席についてすぐにお祈りが始まる。 「・・・それじゃあ、いただきます。」 「いただきます。」 スープをすくう おれに、親父はおもむろに話しだした。 「乱馬。」 「ん?」 「お前ももう、十六。そろそろ、フィアンセのひとりくらいいてもおかしくない年だ。」 「は?」 「あなたにはガールフレンドもいないみたいだし、こっちで決めさせてもらうわね。」 「ちょ、な、なんだよ、いきなり。」 「わしの知り合いの娘さんなんだが、お前を見かけて気に入ったと言っておってな。」 「嫌だよ、そんなのっ!」 「え? どうして?」 「どうしてってそれは・・・。」 「おや? 乱馬、いい子でもいるのか?」 「だったら、家に連れて来なさい。」 「・・・・・・。」 「あかねっ!」 「どっ、どうかしたの? 乱馬?」 あかねはまだおれの部屋にいて、シーツを取り替えているところだった。 「あ、なにか気に入らないことが・・・髪の結い方、よくなかった? 朝ご飯のとき、そば仕え出来なかったのはね、まだわたし、ベッドメイキング、 得意じゃなくって・・・。」 「そんなことはどうだっていいんだ。」 「え。」 「なんで、いきなりメイドになんかなったんだ? 親父たちになんか言われたのか?」 「ち、違うの。昨日ね、おばさまに言ったの。わたしももう十六になったし、 そろそろ、ご恩返しがしたいって。」 「・・・あかねは、おれたちの家族だ。遠慮はいらねぇ。」 「遠慮じゃないの。わたしの気持ちがね、そうさせるの。 いつまでも甘えてるわけにはいかないから。 それに、わたしは・・・本当はこんな口の聞き方だってしちゃいけないのよ。」 「おめーは貴族の娘だ。おれと一緒だ。」 「ううん。わたしには、わたしを証明するものがなにもない。」 「・・・違う。あかねは、あかねは・・・。」 「わたし、他の仕事もあるから・・・行くね。」 ばたばたとあかねは部屋を出て行ってしまった。 「乱馬。」 「ん・・・なんだ、おふくろ。」 夕方近くなったころ、部屋にいたおれの元におふくろがやって来た。 「明後日、フィアンセとなるお嬢さんに会うことになりましたからね。」 「は? 明後日?」 「嫌がっても無駄ですよ。もうお父さんが手配しています。」 「まだ、早すぎるっ!」 「別に今すぐ結婚しろとは言ってはいません。 ただ、結婚相手として、お付き合いをしなさいと言っているのです。」 「同じことじゃねぇか。」 「こうでもしないと、あなた・・・このままだと結婚する気などないでしょう?」 「そ、そんなことはねぇ。」 「想う子がいるのなら、母さんたちに紹介しなさい。 どんな身分でどんな子であれ、あなたが選んだ子だったら、 母さん反対などしないから。ね?」 「・・・・・・。」 「失礼します。」 ちょうどそこに、あかねが入ってきた。 「乱馬の洗濯物、持って来たの。」 「そうなの、ありがとう。」 「え・・・い、いえ。仕事ですから。」 「・・・乱馬、いいわね? 逃げたりしないように。」 「・・・・・・。」 「それから、あかねちゃん。」 「は、はい。」 「昨日も言ったけど、あかねちゃんがメイドの仕事することには、 みんな反対なんですからね。」 「・・・・・・。」 「仕方ないから乱馬付きにさせてるけど、 乱馬、あなた自分のことは自分でやんなさい。 あかねちゃんに甘えるなんて、母さん許しませんからね。」 「わかってるよ。」 そう言うと、おふくろは部屋を出て行った。 「・・・それ、よこしな。」 「ううん、このくらい、なんてことないから。」 「・・・・・・。」 クローゼットに、乾いた洗濯物を入れるあかねの姿は・・・やっぱりどこか楽しそうで、 無理やり奪い取ることなど出来なかった。 「乱馬、結婚するの?」 「は?」 「さっきね、聞こえたの。フィアンセがいるって。」 「ち、違ぇよっ。あいつらが勝手に。」 「綺麗な人なんだろうね? 乱馬の結婚相手って。」 「知らねぇよっ。」 「うまくいくといいね?」 「・・・うまくいってほしいのか?」 「うん。だって、乱馬には幸せになって・・・。」 あかねの身体を背中越しに抱きしめる。 「ら、乱馬?」 「・・・おれは・・・昔から、おれは・・・。」 「どうしたの?」 「おれの気持ち、知ってんだろ?」 「え?」 「おれが一緒にいたいのは。」 言いかけたとき、扉の外に気配を感じ、慌ててあかねの身体を離す。 「乱馬?」 「・・・なんでもねぇ。」 その時、扉が開いた。 「あ、あかねちゃん、まだいたのね。 さっき、言い忘れてたのだけど・・・あかねちゃんにもね、 その・・・フィアンセを紹介したいって思って。」 「は? あかねにフィアンセ?」 突然のことに、わけがわからなくなる。 結婚相手? あかねに? なんで? それはあかねも同じらしく、きょとんとした瞳をして聞き返していた。 「え? わたしにですか?」 「あなたが、メイドの仕事を辞めてくれるって言うんなら、無理にとは言わないのだけど・・・。」 「そんな、わたしのことなんて。」 「そ、そうだよ、あかねの好きにさせといたらいいだろ?」 「あなたは黙ってなさい。」 「けど。」 あかねがこの家を出て行くなんて・・・おれには耐えられねぇ。 「わたしにはもったいないお話です。」 「・・・あかねちゃんには幸せになってもらいたいのよ。」 「おばさま・・・。」 「悪い話じゃないから。」 「・・・・・・。」 あかねは一度大きく息を吸った。 なにかを決意するかのように。 それが、決しておれが望む答えじゃないことは・・・なんとなくわかった。 「・・・喜んで、お受けします。」 そう言って、にっこりとあかねは微笑んだ。 「そう?」 「はい。」 「だったら、話を進めておくからね。」 「お願いします。」 おふくろが部屋を出て行った後、しばらくおれは呆然としていた。 あかねがこの家を出て行こうとしている。 だけど、おれにはなにも出来ねぇ。 結婚相手になることはもちろん、引き止めることすら。 「もう少ししたら、晩御飯だからね? 乱馬?」 「・・・・・・。」 「乱馬?」 「用が済んだら、とっとと出てけ。」 「・・・う、うん。」 あかねが部屋を出て行った後、苛々した気持ちがどんどん沸きあがってくる。 あんなに嬉しそうにしやがって。 おれのことなんか、どうだっていいのか? こんなにおれはあかねのこと、想ってるのに。 あかねからもらったブローチだって、肌身離さず、身につけているというのに。 メイドになってから、あかねはおれが渡したペンダントをつけてくれていないようだし・・・。 おれの気持ちはもういらねぇってことか。 むしゃくしゃして、あかねからもらった大切なそれを無造作に外し、床に向かって投げつける。 床に落ちた途端、からんっという音がした。 「ん?」 見ると、土台と石がはずれ、中から小さな鍵が出てきた。 「・・・なんだ、これ・・・。」 すぐに拾い上げ、じっと見る。 「なんの鍵だ?」 なにか手がかりはないかと、壊れたブローチを調べると、 その土台に、小さく文字が刻んであるのが見える。 「・・・あかねの部屋、クローゼットの中・・・。」 どうやら、そこになにかがあるらしい。 「行ってみるか、あかねの家に。」 小さな鍵の存在は、今のこのどうにもならない気持ちを抑え込むには充分だった。 あかねのことがなにかわかるかもしれない。 そう思うと、さっきまでの苛々は消え、 それどころか嬉しいような、わくわくするような、そんな気持ちになれた。 そうして思い立ったおれは、晩飯のとき親父に一応相談し、 昔から預かっていたという、あかねの家の鍵を借りた。 ひょっとしたら、あかねにとって大切な物がそこにあるかもしれない。 もしそうだったら、やっぱりあかねにその場にいてほしいと思う。 しかし、あかねを誘うか・・・正直迷った。 あかねに対して、苛々してたのもあったし、 今更辛い過去を思い出させるようなところへわざわざ連れ出す必要もないだろうと思ったからだ。 だけど、ひょっとすると、おれたちの前では気丈なふりをしているだけで、 本心はいつだって、本当の家に帰りたいと思っているのかもしれない。 一応、一言・・・ブローチのことも話さなければならなかったし、 一晩悩んだ末、あかねに声をかけることにした。 「おはよ。」 「あれ? 乱馬。今日は起きてたの?」 「ああ。」 「珍しいね。乱馬、いつだって寝坊するのに。」 「・・・あの、あかね。」 「ん? どうかしたの?」 「これ・・・。」 ばらばらになったブローチを差し出す。 「壊れちゃったの?」 「ああ・・・。」 正確には壊してしまったのだが。 「・・・そう。」 「ご、ごめん。」 「ううん、仕方ないよ。だって乱馬、いつもこれ、つけててくれてたし。」 大切な物を壊されたというのに、なぜかあかねは嬉しそうだった。 「それでな、この中から、鍵が出てきたんだ。」 「鍵?」 「ああ。土台に、あかねの部屋、クローゼットって書いてあって・・・。」 「わたしの部屋の・・・。」 「それで、この鍵がなんの鍵か確かめに、あかねの家に行こうと思って。」 「・・・家に。」 「あかねも・・・その、一緒に行くか?」 「え。」 「い、一応、おめーん家だし、おれ、間取りとか知らねぇからさ。」 「・・・わかった。」 「行くんだな?」 「うん。わたしも行く。」 「そんじゃ、今から行くから、支度しろ。」 「え・・・支度っていっても、別にこの格好で・・・。」 「家に帰るんだ。メイドの服なんかじゃなくて、ちゃんとしたのを着てこい。」 「・・・うん。」 あかねは急いで、自分の部屋へかけていった。 それからふたりで馬車に乗り、あかねの住んでいた家に向かった。 あかねは緊張した面持ちで、おれも一緒になぜか緊張していた。 あかねの両親に会うような、そんな気持ちだった。 「うちに来て以来、帰ったことなかったのか?」 「うん。一度も。」 「・・・帰りたかった?」 「ううん。だって、乱馬の家、にぎやかで楽しかったから。」 「・・・・・・。」 本心はどうなのかはわからない。 だけど、今はあかねのこの言葉を信じるしかなかった。 たどり着いたあかねの家は、今も空き家となっていて、 なにもかもすべてが当時のままのようだった。 「・・・ただいま・・・なのかな?」 あかねはちょっと恥ずかしそうに家の中に入る。その後におれも続いた。 「おじゃまします・・・。」 「・・・・・・。」 あかねは複雑な表情を浮かべながら、廊下を進んでいく。 「覚えてる?」 「うん。」 「・・・大丈夫?」 「え?」 「い、いや・・・だから、ほら・・・その・・・。」 「懐かしい匂いがする。」 「え。」 「ちょっと、埃くさいけど。」 あかねは笑ってみせた。 本当にあかねには、かなわないなと、思う。 「ここがわたしの部屋よ。」 ちょうど突き当たりの部屋の扉をあかねは開いた。 あかねの部屋には、家具だけが二、三置かれていただけで、 他の荷物は運ばれていたため、ほとんど無かった。 「これが、クローゼット。」 「この中に鍵の付いた引き出しとかあんのか?」 「そこまでは覚えてないなぁ。」 開いてみると、右下の隅の方に、小さな引き出しと鍵穴があった。 「ひょっとしてこれかな?」 念のため、取っ手を引いてみるけど、鍵がかかっていて開かない。 「試してみるか。」 持ってきていた、小さな鍵を、その鍵穴に差し込んだ。 かちりっと音がした。 「開いた?」 「・・・みてぇだな。」 取っ手を引くと、すっと引き出しが出てきた。 中には埃にまみれた紙がたくさん入っている。 おれはぱたぱたと埃をはたき、軽く目を通す。 「どうやら、あかねの・・・身分の証明みたいだな。」 「え。」 「それから・・・この家の権利書と・・・残されてる財産のことと・・・。」 「わたしの?」 「詳しくは、おれにはわかんねぇけど・・・多分、間違いねぇ。 帰って親父に見てもらおう。」 「うん。」 家に戻ったおれは、引き出しにあった書類を親父たちに見せる。 「乱馬の推測どおり、あかねちゃんのお父さんたちが、 あかねちゃんのために残してくれていたもののようだね。」 「身分を証明するものと・・・。」 「後は遺産のようだ。あの家の他に、あかねちゃんが一生、 なに不自由なく暮らしていけるだけの財産と・・・。」 「え。」 あかねに唯一残されていた、この形見があかねの身分を証明する証となった。 「お父さんたち、あかねちゃんのこと、愛していたのね。」 「・・・・・・。」 あかねは隣にいたおれに抱きつき、胸で泣いた。 ずっと溜めていた悲しみの元も、この涙と一緒に流れていくことだろう。 「・・・よかったな。」 「うん・・・。」 あかねの髪を撫でながら、おれも嬉しくなっていた。 「よかったわね。あかねちゃん。これで、ふたりの間に障害はなくなったわ。」 「おばさま・・・ありがとうございます。」 「今、この時に、これらが出てきたことは、間違いなく、 神様があなたたちを結び付けようとしてくれていたのよ。」 「は?」 おれは、なにを言ってるのか意味がわからず、聞き返した。 「なんの話だ?」 「なにって、あなたとあかねちゃんの話よ。」 「おれとあかね?」 「あなた、あかねちゃんのこと、好きなんでしょう? 昔から。」 「なっ、なっ、なんだよ、急にっ!」 「急にって・・・みんな知っとるぞ?」 「え。」 あかねを見ると、恥ずかしそうに俯いていた。おれもつられて赤くなる。 「あ、あかねも知ってたのか?」 「ううん・・・今、はじめて、知った。」 「そ、そう・・・。」 「母さん、あかねちゃんからあなたのこと相談されてたの。」 「え?」 「私は身分なんてどうでもいいって言ってたのに、あかねちゃんは気にしててね。」 「あ・・・あかねも、おれのこと・・・。」 「・・・うん。これで・・・同じ目線に立てる。」 「んなこと、気にするかよ。」 「だって。」 「そうよ、あかねちゃん。」 「フィアンセの一件だって、乱馬の気持ちを煽るためについた、嘘なんだから。」 「え! ほ、本当かよっ!」 「ああでもしないと、お前は本当の気持ちを言いそうにもなかったからな。」 「・・・な、なんだよ、ったく・・・。」 どんどん恥ずかしくなり顔が熱くなっていく。 「あの・・・乱馬。」 あかねは赤くなった顔を隠すように、伏し目がちにおれを見た。 「う、うん?」 「わたし、ね、乱馬のこと・・・。」 あかねがなにを言わんとしているか、わかったおれは、慌ててあかねの言葉をさえぎる。 先に言わせるなんて・・・これ以上、格好悪いことはごめんだ。 「おれ、あかねと一緒になりたい。」 「え。」 驚いた瞳であかねはおれを見つめる。 おれも、その綺麗な瞳を見つめ返した。 「・・・いいだろ?」 「うん!」 嬉しそうに微笑みながら、返事したあかねの手をおれはしっかりと握り締めた。 =おしまい= 呟 事 最後抱きしめてもよかったんですけどね・・・一応、本筋のエンディングを意識しつつ。 ここをあえて探して読んでくださった方に、こころからお礼を言いつつ。本当ありがとうでした。 なんとなく間違って来ちゃったって方には、お詫びもいいつつ。本当失礼しました。 私的には割とこのありがち展開が好きだったりしてます・・・ひょうでした。