SH療法を導入した経緯
SH療法は、従来のワイヤーとブラケットによる矯正とは考え方、
治療方法が異なっています。顎にあわせて歯を並べることに目標はなく、
生活習慣により内側に倒れてしまった歯を起こすことで歯列を広げ、
体のバランスを整える要である舌が、ゆったりとくつろげるスペースを確保しつつ、
起き上がることでできたスペースに歯を押して並べていく、そんな治療法です。
私は大学入学と同時に矯正を始めました。
歯並びがとても悪かったため、4本抜かないと顎の大きさに収まらないと言われ、
知識も無かった新入生の時期もあり、何の躊躇も無く
4本抜歯してもらい矯正を始めました。
7年かかって矯正が終わり、歯はきれいにならびましたが、
枕が合わなくなりました。首が凝りやすくなりました。
肩こりはひどくなりました。かむ時にカンカン音がするようになりました。
下の前歯は根の先が溶けて短くなりました。
顎の関節からじゃりじゃり音がするようになりました。
歯をきれいに見せたいという思いは、体の違和感を伴わないといけないものなのでしょうか。
もう2度と戻らない自分の歯を4本も犠牲にして得られたものは、
満足のいくものではありませんでした。
その後、首や肩の違和感を治す方法を探しに様々な勉強会に行きました。
勉強して感じたことは、本当に顎に対して歯が大きいから歯並びが悪くなるのか?
歯が倒れこんでいるせいで見かけ上歯並びが狭くなっていることはないか?という考え方と
そして何より、歯並びも大事だけど舌がゆったりとできるスペースを確保してあげることが重要だと感じました。
それからまずスクリューつきの装置とヘッドギアを使って自分の上あごを広げることから始めました。
この装置も良い装置で、使い始めて1,2週間で上あごの広がりを感じ、
首の違和感が消えていく感じがしました。良い物に出会えたと思いました。
しかし1ヶ月ほどすると骨に変化が出始めたのか、
装着していることがとても苦痛になりました。
骨に変化が出ることは良い兆候なのですが、
私には耐えられなかったのです。夜あまり眠られませんでした。
装置をつけないと歯並びを広げられないし、かといってつけたまま寝ても
首や頭が痛くてすぐ起きるという状態でした。
どんなに良い方法でも、患者さんによっては受け入れられない人もいる。
普段患者さんに説明していることを、身をもって体感した時でした。
その体験後はヘッドギアを使わずに、しかし寝ている間に装着するだけで
内側から広げてくれるような装置を作れないか、
より多くの患者さんが気軽にトライできる
矯正治療はできないかと考えておりました。
そんな折、SH療法のセミナーの存在を知り受講したところ
内容はとても満足のいくものであり今すぐにでも導入したいと考えました。
しかし、長崎にはまだSH療法を扱う先生がおられず、
多様な患者さんのニーズに応えられるのか、不利益を与えるようなことにはならないか1年間悩みました。
しかし、その間にもたくさんの方から歯並びの相談を受け、ワイヤーや金額のために諦めてしまう姿を見て
すべての患者さんは無理でも治せる範囲では全力で取り組みたいと思い
初めてSH療法のセミナーを受けて2年後、SH療法を当院でもスタートさせました。
長崎ではまだまだマイナーですが、現在は同じSH療法をされている全国の先生方とzoom等で
症例を見せあいながらより良い治療を常に行えるよう努めております。
本原歯科医院
院長 川久保敦