長崎県議会への請願

2010年9月10日
長崎県議会議長 
末吉光徳様
             
見通しのないフリーゲージトレインによる
             長崎「新幹線」建設の中止を求める請願書



紹介議員  堀江ひとみ          請願人  長崎「新幹線」建設の中止を求める県民の会
                           代表 川崎一宏
                         連絡先 長崎市恵美須町7-19 建交労長崎県本部内
                                 電話 095(801)8800
1.請願の要旨
 完成の見通しもたっていないフリーゲージトレインによる、名ばかりの九州新幹線西九州ルート(長崎「新幹線」)の建設中止を表明していただくよう請願いたします。

2.請願の理由
 今日、長崎県民の暮らしや営業、就職の厳しさ、介護、医療の負担の重さは深刻です。地方自治法にあるように、地方自治体は住民の福祉や安全に力を入れ、税金はそのために優先的に使うべきです。長崎県の借金は1兆円を上回る深刻な状況にあるだけに、税金のムダ遣いは許されません。
 長崎県の財政状況と以下の点から、長崎「新幹線」建設を中止していただきたいと考えます。
 第一は、交通手段としての安全性に関わる問題です。今月7日に国交省の軌間可変技術評価委員会は「軌道可変電車の技術開発に関する技術評価」を発表しました。それによれば、@在来線のカーブや分岐器などでは、現行特急より10〜40q/h下回る性能しかない、A直線でスピードは出せるが、長時間走行した場合の安全性は検証する必要がある、B問題点の解決は「台車の改良だけでは目標達成は難しい」と指摘しています。2007年に完成予定のものが、現在も完成も実用化の見通しもたっていません。こうした状況を各新聞は一面トップで「カーブ走行開業時期に影響か」(長崎新聞9/8付)や「開業に遅れる恐れ」(西日本8/20)などと報道し、安全性への懸念を指摘しています。
 フリーゲージトレインが実用化されている国の線路の幅は、日本のJRの1.4〜1.5倍も広いのです。JRのような狭い軌道を高速で走るフリーゲージトレインは技術的にむずかしく、世界のどこにも実現していません。もし、完成しなければ、それこそ税金の壮大なムダづかいになります。
 安全が第一である交通機関・長崎新幹線の建設を、完成の見通しもないまま、フリーゲージトレイン導入を前提にすすめていることは大問題です。
 
 第二は、誇大な宣伝で建設が推進されていることです。
 最近、県(長崎新幹線建設期成会)が作成したリーフレットは、従来と比較基準を変えるなどしながら、数値目標を一変させています。「26分短縮が41分短縮に」「新幹線の利用者は約2.8倍」「西九州ルートの効果額は約2.2倍(8586億円)」など裏付けのない数字が並んでいます。
 決まってもいない長崎までの延伸を前提として短縮時間を26分から41分に。しかし、延伸しても長崎・博多間の所要時間1時間16分(これまでは1時間19分)ですから、わずか3分の短縮効果です。利用者数では、これまでは1日6100人が6800人に増える、約11%の増加としてきたのに、突如2.8倍に変更。経済効果では、直接便益が3910億円だったのが、一気に2倍以上の8586億円にふくれあがり、費用対効果も2.2倍にするなど。まさに誇大宣伝ではありませんか。過大な見通しで開発したが「飛行機が来ない空港」「船が入らない港」などと批判されている大型開発の試算と同じではないでしょうか。
 長崎「新幹線」は、工事費が整備新幹線予算から出てはいますが、出来上がるものは新幹線ではありません。国交省は「全国新幹線整備法に基づく新幹線は時速200`以上という定義になっている。したがってフル規格のものを前提にしている」と述べています。長崎「新幹線」は新幹線ではないのです。ここが他の新幹線と根本的に違うのです。「新幹線」と偽って宣伝することは許されませんし、他の新幹線を例に出して宣伝すること自体が問題です。
 昨年来、計画を推進してきた民主党や自民党の国会議員から、今の計画では「役に立たない」、「全線フル規格」にすべきだという声があがっていますが、名ばかり新幹線だということが明らかになってきたことを裏付けるものではないでしょうか。
 名ばかり新幹線や時間短縮、経済効果などについて、真実を県民に明らかにすべきです。

 第三は、この名ばかり新幹線建設が、大型開発や大型公共事業推進の大きな理由になっていることです。長崎「新幹線」建設の着工を前提に、JR線連続立体交差事業、長崎駅周辺区画整理事業、長崎駅改修、県庁移転、旭大橋の架け替えなどの大型公共事業が具体化しました。
 国や地方の財政がきびしい今日、名ばかりの新幹線建設が、必要性や緊急性もない大型開発・大型公共事業推進の理由にされることは問題です。

第四は、長崎「新幹線」の建設工事は、ほとんどが大手ゼネコンにしかできません。地元の中小業者にはいくらも仕事はまわってこないので、地場産業の不況対策にはなり得ません。

 第五に、今年の知事選でのマスコミアンケートはすべて「新幹線は必要ない」が「必要」を大きく上回りました。知事選に出た元自民党県議の女性候補は、「新幹線建設に賛成してきたが、県下を回ってみたら、県民の多くの声は新幹線はいらないだった。私は反対します」とテレビで語り、候補者カーにも大きく書いたほどです。多くの長崎県民は長崎「新幹線」はいらないと考えています。
 県民の多くが交通問題で望んでいるのは「新幹線」建設よりも、JR在来線やバス路線の利便化なのです。

 以上の点から長崎「新幹線」は中止し、税金は県民の暮らしや生活に直結する施策、中小業者への融資制度の充実、医療、介護、教育などにこそ優先的に使われるべきです。このような長崎「新幹線」の建設中止を表明していただくよう請願いたします。