2010年9月17日
長崎市議会議長
吉原 孝様
見通しのないフリーゲージトレインによる
長崎「新幹線」建設の中止を求める請願書
紹介議員 内田隆英 請願人 長崎「新幹線」建設の中止を求める県民の会
代表 川崎一宏
連絡先 長崎市恵美須町7-19 建交労長崎県本部内
電話 095(801)8800
1.請願の要旨
完成の見通しもたっていないフリーゲージトレインによる、名ばかりの九州新幹線西九州ルート(長崎「新幹線」)の建設中止を表明していただくことを請願いたします。
2.請願の理由
今日、長崎市民の暮らしや就職の厳しさ、介護、医療の重たい負担などは深刻です。地方自治法にあるように、地方自治体は住民の福祉や安全に力を入れ、税金はそのためにこそ優先的に使うべきです。長崎市の借金は年間予算を上回っており、税金は優先順位をつけ、ムダのないことが必要です。
長崎市の状況と以下の点から、長崎新幹線建設は中止していただきたいと考えます。
第一は、交通手段は安全が第一です。今月7日の国交省の軌間可変技術評価委員会の「軌道可変電車の技術開発に関する技術評価」によれば、@在来線のカーブや分岐器などで現行特急より10〜40q/h下回る性能、A直線でもスピードは出せるが、長時間走行した場合の安全性は検証する必要がある、B問題点の解決は「台車の改良だけでは目標達成は難しい」と述べています。
各紙が一面トップで「カーブ走行開業時期に影響か」(長崎新聞9/8付)や「開業に遅れる恐れ」(西日本8/20)などと報道したのは、こうしたことへの懸念なのです。2007年完成予定のはずだったフリーゲージトレインの完成、実用化の見通しはたっていません。
フリーゲージトレインが実用化されている国では、線路の幅が日本のJRの1.4〜1.5倍程度程広いのです。JRのように狭い軌道を高速で走るフリーゲージトレインは技術的にむずかしくまだ実現していません。もし、完成しなかったらどう対応するつもりですか。それこそ税金のムダづかいになります。
安全が第一の交通機関である・長崎新幹線が、完成の見通しもたっていないフリーゲージトレイン導入を前提に建設をすすめていることは問題です。
第二は、県民、市民への誇大な宣伝で建設を推進することは許されません。
最近の県(長崎新幹線建設期成会)が作成したリーフレットは、これまでと比較基準を変えるなどして数字を一変させています。「26分短縮が41分短縮に」「新幹線の利用者は約2.8倍」「西九州ルートの効果額は約2.2倍(8586億円)」など裏付けのない数字が並んでいます。
決まってもいない長崎までの延伸を前提に、短縮時間を26分から41分に。しかし、長崎・博多間の所要時間1時間16分(これまで1時間19分)ですから、わずか3分の短縮効果しかありません。利用者数では、これまでは1日6100人が6800人に増える、約11%の増加としていたのに、突如2.8倍にする。経済効果では、直接便益が3910億円だったのが、一気に2倍以上の8586億円になり、費用対効果も2.2倍にするなど、誇大宣伝ではありませんか。「飛行機が来ない空港」「船が入らない港」などと、見通し違いが批判されている大型公共事業の試算と同じではないでしょうか。
長崎新幹線は、工事費が整備新幹線の予算から支出ていますが、出来上がるものは新幹線ではありません。国交省は「全国新幹線整備法に基づく新幹線は時速200`以上という定義になっている。したがってフル規格のものを前提にしている」と述べています。「新幹線でない」ものを「新幹線」と宣伝することは許されません。この点が他の新幹線と根本的に違うところです。
最近、民主党や自民党の国会議員などから、今の計画では「役に立たない」、「全線フル規格」になどの声が出ているのは、役に立たない名ばかり新幹線だということを証明しているものです。
「名ばかり新幹線」や時間短縮、経済効果も含めて、市民に真実を明らかにすべきです。
第三は、この名ばかり新幹線が来ることが、大型開発、公共事業推進の大きな理由になっていることです。長崎新幹線の工事が決まった途端、長崎駅改修、JR線連続立体化事業、長崎駅周辺区画整理事業、県庁移転、旭大橋の架け替えなどの大型公共事業が具体化しました。
国や地方財政がきびしい今日、名ばかりの新幹線建設がムダな大型開発・公共事業の理由にされることは許されません。
第四は、長崎「新幹線」の建設工事は、地元の中小業者にはほとんど仕事はまわってきません。だから地元企業の不況対策などにはなりえません。
第五に、先の知事選挙でのマスコミのアンケートは、「新幹線は必要ない」が「必要」を大きく上回りました。知事選に立候補された元自民党県議だった女性候補は、「新幹線建設に賛成してきたが、県下を回って県民の多くは新幹線はいらないといっているのがわかった。私は反対します」と表明したのです。県民、市民の多くは長崎「新幹線」はいらないと考えています。
県民の多くが望んでいるのは「新幹線」建設よりも、JR在来線やバス路線の利便化なのです。
以上の点から、財政のきびしい状況の中で、市民の暮らし、生活に直結する施策、中小業者への融資制度の充実、医療、介護、教育などにこそ優先的に税金を使うべきであり、このような「新幹線」建設の中止を表明していただくことを請願いたします。