奉仕の理想探求語録     第54号

          長崎東ロータリークラブ  松林政寛選        

 

戦後日本の忘れ物 (友 2002−8 地区大会講演 国士舘理事長 西原春夫)

 

日本は今、歴史的な大転換期にあります。

ここ数年、日本の社会ではそれ以前に起こらなかったような事件が次々に起こって

いますが、それはどこに原因があるのでしょうか。

戦争で全てを失い、ゼロからスタートした日本人の限りない「豊かさ」の追求、

憲法の中心的な理念である「権利と自由」の一方的な追求、

ここに原因があるのではないでしょうか。

物質的な豊かさでなく、心の豊かさについて、私達は改めて考えなくては

ならないのでだ、と思います。

 

“物質的に豊かになることだけが幸せになることではない。”

 昨年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ以降、アフガニスタンや、

パキスタンでのアメリカの軍事報道に関連して、イスラム教とか、イスラム人の行き方と

いうものが報道されました。

こんなに強烈に報道されたことは、戦後一度もありませんでした。

そこから私達はいろいろなものを学びました。

みなさんはどうだったでしょうか。

 日本人は少なくとも明治維新以来、欧米のイデオロギーだけを見てきました。

日本人は戦後社会の中で、アメリカの物質至上主義の考え、すなわち豊かになることが

幸福なのだという考えに、いつのまにか巻き込まれてきた気がいたします。

しかしそういう世界とは違う世界があることを、われわれはアフガニスタンの戦争以降

見せつけられました。

あの質素で平等な衣服、礼拝、断食、聖戦。

みな欲望の自己制御を養う手段だったのです。

(中略)

最近、文部科学省では「心の教育」という言葉をつかっています。

物質的に豊かになるだけでは幸せではない。

私達の大学にも国際てきなボランティア活動をやっているグループがあり、ネパールや

ベトナムの山奥で、学校作りの手伝いをしています。

村人と一緒になって汗水流して、帰る時には村人達が総出で見送りにきて、涙を流して

抱き合って感謝してくれた。

胸を揺さぶるような、体の底から湧き上がるような、その感激こそが人間の一生の中で

一番幸せではないかということを、学生達は実感して帰ってきました。

そのような人間の価値、人間にとって大事なことは何か、ということを、

明らかにする必要があります。

古いように見えるが、伝統的で、かつ21世紀にも当てはまる、

そういう道徳的な理論体系を、理論的に築いていくことが重要だ、と思います。