テポドンが飛んできたらどう家族を守るの?
憲法九条改定反対の街頭署名の中で
廣瀬方人 ・「城山憲法九条の会」世話人
1月、私たちは小学校区の商店街で「憲法九条を守る」ための賛同署名活動をした。メンバーはこの地区に住む歯科医、小児科医、元教師、被爆者、城山教会所属の信者など10人。1時間で82人の賛同署名を集めることができたが、署名活動したあとの気持ちがどうもすっきりしなかった
署名を頼むと「共産党がやっとる運動じゃろう?」と言って断る人(60代男性)。商店街の人で「憲法九条って、いつもテレビで聞きよるけど何ですか?」と尋ねる60代の婦人。意外な質問だったが、実はこんな無知、誤解が怖いと思った。こんなにメディアで騒いでいるから誰でも知っているはずだ、と思うのは誤解だということを改めて知った。
「北朝鮮がテポドンで攻撃してきたら、どうして家族を守るんだ?」と反論する40代男性もいた。「あなたは本気でそう思っているんですか?そういうことを宣伝する人が、実は憲法九条改定や日本の核武装を唱えているんです。騙されないようにしましょう」というと、「あなたとは立場が違う」と議論になってしまった。しかし私たちの運動は、相手を議論で打ち負かすことではないく、国民投票になったとき、憲法九条改定に本当にノーと言う人を集めることだ。
長崎では高見三明大司教が「憲法九条の会」のよびかけ人になっておられる。それにこたえるかたちで、さる1月29日中町教会で「ピース9の会・ながさき」の学習会がおこなわれた。55人が参加、その中には12名のシスターの参加もあった。長崎でも憲法九条を守る運動と意識は確実に高まっているが、実際には国民投票がおこなわれたら結果はどうだろう。私の小学校区の有権者は約3万人。もっと頑張らなければ先は遠い。
私は旧制中学4年生のとき、特攻隊に志願した。昭和19年の春、クラスの一人が「おい、みんな!今こそ俺たちがお国のために命を捨てるときがきた。みんなで予科練に志願しよう」と呼びかけた。クラス全員で署名血判して私は15歳の春、福岡県糸島海軍航空隊に入隊した。入隊したとき「お前らは着陸訓練は必要ない。飛びたったら敵艦に突っ込むのみだ」と言われた。「お国のために命を捨てる」それが当時の若者の心情だった。
たとえ憲法九条を改定して戦争ができる国の体制になったしても、国民とくに若者に「お国のために命を捨てる」という心情が定着しなければ、国は簡単に戦争などできない。
そのために次に狙われているのが、「教育基本法]の改定だ。生徒の愛国心を成績通知表に点数化しようという試みが福岡でおこなわれた。また、生徒の「君が代」を歌う声の大きさを測って教師の指導力を評価する馬鹿げた試みもあった。
「馬鹿げたこと」と書いたが、戦争中におこなわれた馬鹿げた教育の例を上げればきりがないほどだ。私は原爆投下で長崎の街が焼け野が原になった後でも、神風が吹いて形勢が逆転するという教師の教えを漠然と信じていた。教育の力は強い、そして恐ろしい。憲法も教育基本法も改定の前に一つひとつ具体的な取り組みの中で潰していかなければならない。