薄毛とプロペシア(男性型脱毛症治療薬)について

 

 男性に見られる、いわゆる薄毛・若禿げといわれる症状は、正式には「男性型脱毛症」といいます。遺伝傾向がみられることもありますが、原因となる遺伝子は見つかっていません。男性ホルモンの影響で、毛髪が細く柔らかくなり、抜けてしまうものです。この現象は、頭髪のみに起こり、体毛やひげなどは男性ホルモンで濃くなります。胸毛や腕の毛、ひげは黒々とたくさん生えているのに、額や頭頂部が寂しくなっているというイメージです。日本人男性の頻度は、軽症の人も含めると、三分の一くらいと言われています。年齢的には、20歳台後半から30歳台にかけて増えてくるようです。

 

 治療法はありますか

以前は、塗り薬、いわゆる育毛剤しかありませんでしたが、最近飲み薬が使われるようになりました。塗り薬は、主なものは二種類あって、ひとつはひところ話題になったミノキシジルというもので、「リアップ」という商品名で、一般薬として薬局で販売されています。もう一つは、塩化カルプロニウムという医薬品で、円形脱毛症にも保険適応が有ります。「フロジン液」という名前のほか、ジェネリック医薬品もいろいろ出ています。これらは細胞賦活作用や血行促進作用により、脱毛に効果があるとされています。また、局所の血行促進のため赤外線照射を行うこともあります。

飲み薬は、フィナステリドという薬品で、日本では「プロペシア」という名前で販売されています。これは処方箋医薬品なので、医療機関で診察の上購入するか、処方箋を発行してもらう必要があります。薬局などに直接行っても購入できません。また、保険が効きませんので、自費診療になります。

 

プロペシアとはどんな薬でしょうか

プロペシアは、薄毛となる男性ホルモンを作る酵素の働きを妨げる作用があります。このため薄毛の治療、あるいは薄毛の進行を予防するための薬として使用されています。一日一回、一錠の内服で、効果が現れるまで数ヶ月から半年くらいかかることがあります。メーカー側も、効果確認には半年は続けてほしいといっています。また、効果には個人差がありますが、臨床試験を行ったところ、1年後で58%が改善、40%が現状維持、3年後で78%が改善、20%が現状維持というデータがあります。

 

副作用などの心配はないのでしょうか

この薬は、比較的副作用が少なく、数年にわたって飲み続けている人もいます。ただし、まったく副作用がないというわけではないので、内服中になにか気になることがあれば、医師に相談してください。また、前立腺の病気で治療や検査を受けている人は、検査値に影響が出ることがあるので、泌尿器科の医師に、プロペシアを飲んでいることを知らせてください。また、ドーピング検査で陽性になるので、アスリートの方はご注意下さい。以前、九州の某プロ野球チームの外国人投手がドーピングで問題になりましたが、プロペシアを飲んでいたそうです。それから、女性は飲んではいけません。

 

女性にも使えますか

女性では、通常男性ホルモンによる薄毛ということはないので、プロペシアは使えません。ミノキシジルは、女性用の製品がでています。塩化カルプロニウムや赤外線照射も男女を問わず使えます。

 最近の研究によると、脂漏性皮膚炎を合併した男性型脱毛症の方で、脂漏性皮膚炎の治療を併用すると、発毛に対しても効果があるというデータが発表されています。脂漏性皮膚炎とは、頭皮や顔面などに脂ぎった感じの発赤やかゆみを生じる慢性の皮膚疾患です。毛穴の脂分を好む真菌(カビ)の増殖が原因の一つとされており、いわゆる「ふけ症」もその軽いものといわれています。こちらの治療は、ステロイド剤とカビを抑える塗り薬を併用すると効果的で、保険も利きます。  


 なお、当院では20年中から21年上半期にかけて、18名の方がプロペシア内服を開始され、21年末の時点で9名が続けておられます。つまり半数の方が、半年以上続けていることになります。印象としては、明らかに発毛がみられる方、少し良いかなという感じの方、現状維持の方が、それぞれ三分の一づつのようです。21年下半期から治療を開始された方も含めた経過は、改めて御紹介します。