食物の除去

注)以下のデータは厚生労働科学研究斑による食物アレルギーの診療の手引きによるものです。

食物アレルギーとアトピー性皮膚炎

乳児において食物アレルギーがみられるのは5〜10%程度でその多くはアトピー性皮膚炎です。アトピー性皮膚炎ではすべて食物が関係しているとか、アトピー性皮膚炎には全く食物は関係ないとかは間違いです。

原因の食物

全国調査の結果では
第1位: (38.3%)
第2位:牛乳 (15.9%)
第3位:小麦(8.0%)
以下、甲殻類(エビ、カニなど)(6.2%)、果物(6.0%)、ソバ(4.6%)、魚(4.4%)、ピーナッツ(2.8%)  以前、第3位だった大豆は2%でまれになっています。

食物アレルギーの症状

なんでも食物アレルギーと片づける傾向がありますが、実際は下記の様な症状が食物アレルギーでは起こります。

第1位:ひふ症状(88.6%):かゆみ、赤み、じんましん、浮腫(ひふが腫れること)など
                通常、食べて約1時間以内にでます。乳児ではまず食べた口のま                  わりにでることが多いようです。
第2位:呼吸器症状(26.8%):呼吸が苦しくなる、せき、ヒューヒューいう、鼻水、鼻づまりなど
第3位:粘膜症状(23.8%):のどがつまった感じ、のどのかゆみ、目の充血、涙目、目のはれなど
第4位:消化器症状(13.4%):おなかの痛み、吐き気、下痢など
第5位:ショック症状(10.9%):最も深刻な症状です。血圧が低下してぐったりしたり、意識がなく                   なったりします。

食物アレルギーの予防
妊娠中のアレルゲン除去

各国で研究されていますが、あまりはっきりとした効果はみられていません。
家族にアトピー性皮膚炎がある場合妊娠8ヶ月以降のゆるい卵の除去(生卵や半熟の卵料理を避ける)をするくらいで良いと思います。

母乳栄養中のアレルゲン除去

やはり各国で研究されていますが、結果はまちまちです。確かに母乳中には母親の食べた食物アレルゲンが検出されます。よって母乳を介して食物アレルギーをおこす可能性があります。妊娠中と同様、家族にアトピー性皮膚炎がある場合ゆるい卵の除去で良いと思います。

食物アレルギーの予後

卵、牛乳、小麦、大豆などは耐性を獲得し、80〜90%の人は年齢とともに食物アレルギーはなくなっていく傾向があります。ほとんどの人はいつまでも食べれないわけではないので心配はいりません。半年くらいに1回、検査をしなおしてその結果やそれまでの食物アレルギーの経過をみて解除していくことができます。
エビやカニなどの甲殻類、果物、魚類、ソバ、ピーナッツなどは耐性を獲得しにくいので注意が必要です。

食物アレルギーの検査
血液検査(特異的IgE抗体、IgE-RAST)

 一般に血液検査が最もよく行われていますが、陽性になったから食べてアレルギーがでるわけではありません。特に2歳以上では症状がでない場合がほとんどです。
 卵や牛乳では特異的IgE抗体(IgE-RAST)がある値以上になるとほぼ全例に食物アレルギーがでるといる研究結果もありますが、この値が高いと食物アレルギーがでる可能性が強くなるくらいに考えるべきです。
 卵、牛乳では陽性にでると食物アレルギーがでる可能性が高いが、小麦、大豆では陽性になってもでる可能性は低い傾向があります。

ひふの検査(プリックテスト)

血液検査と検査の意味は同じで結果もよく一致します。ひふの検査の方がその場で結果がわかること(15分で判定)、検査料が血液検査よりかなり安く他種類のアレルゲンを同時に調べられること、やや感度が高いことから当院ではひふの検査を行っています。当院では食物アレルギーをおこす頻度の高い食物 15種についてひふの検査をしています。

食物負荷試験

通常、入院して専門の医師が行う検査です。いろいろな方法がありますが、医師の観察の元に少しずつ、実際に食べてもらって反応をみるものです。この検査が最も確実で安心ですが、専門に行っている病院に入院することが必要なので簡単ではありません。

当院の食物除去の仕方
問診

生まれて今まで何の食べ物にアレルギーをおこしたかお聞きする。

U. ひふの検査

当院では食物アレルギーをおこす頻度の高い15種の食物アレルゲンについてひふの検査をします。

V. 除去の判断

食物アレルギーの症状がでるかどうかは以下の要素によって左右されます。
@年齢
A食べ物の種類
Bひふの検査の陽性の強さ

そのことを考慮しながら除去の程度(食品表の弱から強)を判断します。

一般に年齢が上がるとともに解除できる場合がほとんどです。

牛乳
生卵
半熟の卵料理
牛乳、牛乳を含む飲み物(コーヒー牛乳など)、粉ミルク
マヨネーズ、ソフトクリーム
熱をしっかり加えた卵料理
ヨーグルト、バター、チーズ
生クリーム、ケーキ
茶碗蒸し、プリン
鶏肉
卵を使ったお菓子(卵ボーロ、カステラなど)
卵を使った料理(フライ、カツなど天ぷら粉を使用したもの)
牛乳を使った料理(クリームシチュー、グラタン、ホワイトソースなど)
牛乳を使ったお菓子(ホットケーキ、ビスケット、カステラなど)
牛肉

軽症ミルクアレルギー用  :Eあかちゃん(ペプチド乳製品)など
ミルクアレルギー用     :ミルフィーHP(加水分解乳)、のびやか(乳清タンパク分解乳)など
重症ミルクアレルギー用  :エレメンタールフォーミュラ(アミノ酸乳)など

低アレルギーミルク

卵、牛乳、小麦、ソバ、ピーナッツの5品目は含まれているか表示義務があります。除去を指示された患者さんは加工食品の袋や箱の裏をみて確認して食べて下さい。

加工食品の表示義務
卵アレルギー児の注意する予防接種
食物アレルギーの人が気をつける薬、添加物

インフルエンザワクチン麻疹ワクチンは鶏卵で作られているので卵の成分が微量ですが、含まれています。非常に強い卵アレルギーをもつ場合は注意が必要です。ワクチンをうつ時には小児科の先生に相談しましょう。

タンパクやカルシウム不足に注意しましょう。特に牛乳の除去の場合、カルシウムを他の食品で補うようにして下さい。
牛乳200ml(カルシウム200mg)=ひじき、ごま 15g、わかめ 20g、桜えび 30g、しらす 40g

小麦アレルギーの解除法: 薄力粉(焼き菓子など)→強力粉(うどん)
大豆アレルギーの解除法: しょうゆ、みそ、納豆→豆腐→煮豆→おから→きなこ

牛乳
注意する薬 塩化リゾチーム
(消炎酵素)
カゼイン(制酸剤、緩下剤、経腸栄養剤)
乳酸菌製剤(整腸剤)
タンニン酸アルブミン(止瀉剤)
食品添加物 レシチン
リゾチーム
カゼインNa
ラクトフェリン
強い食物アレルギーの患者さんが気をつける薬、添加物