山形県鶴岡市立朝暘第一小学校
平成15年「読書活動優秀実践校」として文部大臣賞を受賞した学校です。
平成28年2月5日,出張で山形県鶴岡市立朝暘第一小学校に行ってきました。教育委員会が主催する司書教諭研修で『図書館を生かす学校は変わる/紀伊国屋書店』のビデオを見て以来,行ってみたいと思い続けていた学校です。今年度の9月,この学校図書館を作り上げてきた五十嵐絹子さんのフォーラムが3日間長崎で行われたのもきっかけとなり,「出張OK」を出して頂けました。 
     
 鶴岡市にある藩校致道館 にちなみ,学校図書館は致道図書館と名付けられています。「学びの宝庫である学校図書館を核に据える」という考えから,案内表示でも分かるように,建物の中心に図書館があります。カウンターの後ろを除く三方位は,ガラス張りの出入り口引き戸があります。カウンターの右側には廊下を挟んで多目的室が,左側にはコンピューター室があり,多目的室には絵本以外の9類の本が置かれています。この建物は,ビデオ通りの校舎ではなく,平成22年に建て替えられた正方形の学校です。
 棚板は可動式です。床置き書庫は全て子どもの視線を遮らない高さになっていて,配架はNDCに沿っていて,絵本は作家の頭文字50音順でした。3段ラベルで3段目は登録番号です。蔵書は約1万7千冊で,年間予算は市費と児童集金でまかなっているそうです。
情報ファイルがきちんと整備されていることが素晴らしい。郷土資料が一番多いことは,当然ですが,一般件名や,各県のパンフレットやリーフレットが集められていました。副読本『私たちの長崎県』もありました。 
←『朝暘一小おすすめの本』が各学年70冊程度,毎年決められていて,NDCラベルの上に色別に貼られています。子ども達はリストが書かれたカードに学期ごとの目標冊数を書き込んで,読んだらチェックをするようになっています。館内にも大きく掲示されていました。廊下には新しい本の紹介や,子どもが書いた紹介文が学年ごとに掲示されています。→
卒業生である土田義晴さんとずっと交流があり,『土田義晴さんコーナー』が吹き抜けの階段下にあります。タペストリーや人形も素敵です。
朝から本の貸し出しができるので,朝から子どもがたくさん集まってきます。貸出方法は,自分の貸出カードに分類番号と借りた本の題名を書き,借りた日と返えす日を書いたカードと一緒に2枚をカウンターに持って行くしくみです。代本板も使っていました。データベース化されていないので,図書館と多目的室のそれぞれのカウンターで二人の図書委員が貸出作業を行っていました。貸出期間は5日間,平日は1冊で休日前は2冊だそうです。手作業でしか裁けないのでコンピューターは使っていないのでしょう。1人1人が絵本バックと,その中に厚手のビニール袋を持っていました。
 図書ボランティアさんによる朝の読み聞かせの様子です。1〜3年生は週1回,4年生は月2回,5/6年生は月1回,各学年決まった曜日に行われています。 視察に行った日は1年生とサポート学級の日でした。 1クラス週に1回,授業で図書館が使えるように割り振られています。図書館だけでなく司書教諭も,その時間にはTT(チームテイーチング)で入ります。朝暘第一小学校では,図書支援で加配教諭が配置されています。長崎市内の小学校で加配教員がいる学校は算数少人数加配が多く,図書支援はゼロです。
 研究授業ではないので,指導案はありません。多目的室で行われた普段の授業を参観させて頂きました。1時間目は国語『ことわざ・慣用句(教科書は教育出版)』 の授業でした。好きなことわざで,ただ面白いだけではなく,将来の自分に役に立ちそうだなと思うことわざを本で調べて,選んだ理由を書いて,次の時間に友だちに紹介するという授業でした。本は市立図書館からもたくさん借りられていました。導入では担任の先生が,前時の復習と,今日のめあての確認をし,調べ学習のすすめ方を説明したら,1人調べの時間になります。今まで勤務した小学校では調べ学習となると,パラパラ本をめくるだけで,「載っとらん!」と本を取り替えにいったり,すぐに指導者に「これでいいですか?」「〜ってどういうことですか」「何をすればいいんですか?」とまとわりついてくるもの。しかし,低学年のうちにしっかりと文章を読む力がついているからでしょうか,まず用意された本をしっかり読み始め,黙々と指示された通り作業を進め,ペア学習に進んでいます。先生は机間巡視をして,ちょっとアドバイスをするだけです。まとめでは,3人発表があり,先生のことわざに関するエピソードで終わりました。司書教諭は今回はT2で,難しそうにしている子に解釈が簡単な本を紹介して同じことわざを探させたり,担任の先生と同じようなヒントを出したりされていました。
2時間目は4年生の社会科『都道府県クイズを作ろう』という図書館で行われた授業を参観しました。グループで地方をわけ,1人1つ県を決めて,地形や特産品を調べ,クイズを作るという内容です。担任の先生が前時の復習と,今日のめあての確認をし,司書教諭が,奥付の見方と出典の書き方を説明したあと,1人調べの時間になりグループ学習に進みます。やっぱり4年生も,黙々と読み始め,時間内に課題が仕上がりました。
 授業参観の後は,教務副主任である司書教諭から図書館教育研究の概要の説明がありました。大切なのは学校全体・地域全体が一つになる組織作りだということを実感しました。

残念ながら蔵書点検作業中で休館でした。
致道博物館 鶴岡市立図書館移動図書館 大宝館 国宝「羽黒山五重塔」
今回はご縁があって,五十嵐絹子先生と一緒に朝暘第一小学校を作り上げてこられた先生2人と夕食を一緒に頂くことができました。 読まない子,読んだふりをする子にはどういう手立てが必要か,この単元ではどのような仕掛けをするのがいいのかなど,本ではわからないお話や,資料をたくさんいただくことができ大感激です。絹子先生には羽黒山五重塔にも連れて行って頂きました。学ぶことが盛りだくさんな出張でした。