「パソコン奮闘記」 

PartU 「パソコンの活躍(1)」 



パソコンが持ち込まれた理由

会社にパソコンが持ち込まれた理由は、先輩が所属する青年経済団体(私の会社が事務局)が平成6年11月、3000人規模の全国大会を開くこととなり、その事務処理を行うためである。

私の会社では、過去に1度だけ2000人規模の全国大会の経験がある。しかし、その当時はパソコンはもちろん、ワープロもなかったため、参加者のデータチェックなど事務作業が大変だったらしい。

事務作業の流れとしては、(1)案内状の作成と発送、(2)会社に届いた申込書をもとに参加者名簿や名札を作成する。一方、旅行代理店は、その申込書をもとに宿泊先を割り当てる・・・etc。

その事務作業を誰がするのかは別として、その頃の私はと言うと、キーボード入力はできるもののインストールされているアプリケーションソフト(Word、Excel、Access)は全く操作できない。そこは、先輩も解っているはずだ。団体の会員さんがやってくれるのだろうという甘い考えで、私はワープロ専用機を利用しその大会の開催要領、参加案内、申込書を作成する。


●データ変換ソフト

さて、発送資料の完成間近になって、先輩が妙なアプリケーションソフト持って来た。ワープロ専用機で作成した文書を「Word文書」の形式に変換するソフトらしい。そんなソフトがあるのかと感心していたら、私がワープロ専用機で作成した文書を変換すると言う。

「もう出来上がっているのに変更しなくても良いじゃないですか。発送時期も迫っているのに!」と少々ふて腐れて言うと、「ワープロで打った文字は好かんとさね〜」の一言。

大会の開催要項はA4版で5ページある。そのソフトを利用して変換すると、なるほど入力されている文字はほとんど変換できた。その後、1ページ目を先輩が体裁よく変更していく。

会社のワープロ専用機で文字飾りを行う場合、フォントは「明朝(拡張でゴチック、教科書体)」、文字の大きさは「14、12、10ポイント」に限定され、横倍角、4倍角等その機能は限られている。ところが、Wordのソフトには多くの書体があるし、文字の大きさも自由自在、さらに、「範囲を選択して」変更できる。一番感動したのは、「元に戻す」ボタンがあり、万一入力した文字を誤って削除しても、もとに戻ることである。これは便利だと思っていたら、「後はやっといて〜」と言い残し、帰ってしまった。

私も凝り性なので、文字の大きさを変更したり、斜め文字、アンダーライン、網掛け、特殊記号の使用など、マニュアル片手にいろんな機能を試してみる。そういう訳で、残り4ページを体裁よく変更するのに丸2日かかった事を記憶している。(現在は、時間の無駄なので凝った文書は作成しないよう努めているが、当時は出来上がった大会の開催要項を見て、自己満足に浸っていた)


表計算ソフト

開催要項が無事出来上がり満足していた頃、また先輩が訪れる。今度は、参加申込書である。参加申込書に記載する事項は、

(1)団体に関する事項(団体名、代表者名、住所、TEL、事務局の担当者名など)
(2)参加者に関する事項(氏名、年齢、事業所名並びに役職名、団体での役職名など)
(3)各行事(式典、講演会、懇親会、エクスカーション)への出欠確認事項
(4)宿泊に関する事項(宿泊の有無、ホテルのランク)
(5)申込書記入に当っての注意事項(記入例含む)
(6)その他(要望事項)   などが挙げられる。

当然、上記(1)〜(5)までの事項は記入できるよう、ワープロ専用機を利用し、B4版の申込書(10名記載、FAXで返送のためA3版は不可)と記入に当っての注意事項(A4版)のペーパー1枚をすでに完成させていた。

  先輩が言うには、「貴方が作成したこの申込書は、参加者名を記入する枠が小さすぎる。FAXで送付されると、文字が小さかったり良く写っていないなど、再度聞く羽目になる。また、全国から集まる参加者は通常、団体行動をする場合が多い。特に、貸切バスや自家用車の場合は、駐車場の確保等を考える必要があるので、その点を考えるべきだ」と示唆される。

頭が固い私は、再度申込書を作成したくなかったこともあり、「B4サイズでは入りませんよ」と言い訳をする。

そんな理由を許す先輩ではない。「B4版で作れるさ、1枚あたりの参加人数を減らせば・・・」と言いながら、何やらフロッピーをパソコンに入れる。実は、Excelのソフトで申込書(8名記載)を作っていたのである。言葉で上手く表現できないが、完璧と言う他ならない。

さらに、感心したのは、申込書の記入例である。記入例には、参加者枠の一番上に架空の人物のデータ(○○太郎、○○株式会社 社長など)が記載され、別紙に「役職名は団体の役職名を・・・(中略)、宿泊が必要な場合は、○印を付け・・・」など文章で説明がある。しかし、実際記入しようとすると解りにくいのが実状である。

これを解決するために、参加申込書と同じフォームを別に用意して、実際に(1)〜(6)までの項目を埋め、中段から各々の注意事項を記載しようと考えているようだ。確かに、記入例と注意事項が1枚のペーパーにある方が分かりやすい。

先輩の読みの深さに感心しているのもつかの間、「この記入例は貴方に任せるから」と言って帰ってしまった。
さて、再び凝り性の性格が出て、私は申込書の一部変更と申込記入例を作成するのに、またもや丸2日間費やすのである。(最後は、私もワルノリして、事務局氏名の欄に私の実名を記入した)

実際、参加団体から記入に関する問い合わせは数件しかなく、結果的に、この作戦は成功であった