「パソコン奮闘記」 

PartV 「パソコンの活躍(2)」

 


FAX同報通信

こうして、開催要項と参加申込書が完成し、1週間後には全国500ケ所へ開催案内を送付しようとする矢先、大会の実行委員長と先輩から新たな課題を言い渡される。

全国各地から長崎までの交通手段を考えると、近隣地区からは陸路(自動車、バス、JR)、遠方からは飛行機を利用することが予想される。例えば東京からだと、往復航空運賃に2泊の宿泊費だけで約70,000円だ。さらに、エクスカーション(ゴルフ、OPツアー)に参加しようものならば、100,000円は軽く超えてしまう。海外の方が安いかもしれない。

そこで、参加しやすい仕掛けを作ろうと「航空運賃(東京−長崎、大阪−長崎)とホテル」の安いパック料金を設定し(旅行代理店等と協議)、全国各地に事前告知をしようと考えているようだ。それも、開催案内が到着する前に案内するという。

確かに、開催案内が事務局に到着する前に「通常より安価な料金で参加できる」ことがPRできればその効果は大である。

「その作業は誰がするのですか?時間はあと2〜3日しかないのですが?」と反論したいが無駄なことだ。一度やろうと言い出したら必ずやり遂げる先輩達である。時間が迫っているが、やるしかない。

さて、問題は2つある。一つは、案内文書を1日で作成し郵送したとしても、別枠の郵送費の予算はない。二つは、案内先の絞り込みである。近隣地区などに告知しても意味はない。

二つ目の問題については、全国地図を見ながらなんとかクリアできた。一つ目の問題については、FAXを利用することで解決できるのだが、約200ケ所に送付するのも大変だ。相手先のFAX番号を一つ一つ入力していく作業は根気が要るし、会社のFAXを占有することは通常業務に差し支える。

そう思っていたら、さすがに先輩達はその答えをちゃんと用意している。パソコンからのFAX同報通信だ。そう言えば、パソコンの横に妙な機械が設置してあった。モデムである。

なるほど、パソコンからFAX送信が可能なことは理解できたが、全国各地の事務局のFAX番号は登録していない。「今から200ケ所登録するのにも時間がかかる」などと考えていると、先輩がフロッピーをパソコンに入れる。なんと、Excelで作成した全国500ヶ所のデータである。そこには、団体名、郵便番号、住所、電話番号、FAX番号が掲載されている。私が知らない間に、もう一人の女性事務局員に作業をさせていたらしい。

こうして、「STAR FAX」というFAX通信ソフトを利用し、絞り込みをした団体宛に案内を送付することが出来た。(今ならば一瞬のうちにe-mailで送れるのだが)

私の知識不足を反省すると同時に、パソコンの利用価値を再認識するのである。


●データベースソフト

この後、参加案内を郵送し、1週間ほど経過した頃から、申込書が到着する。さて、この参加申込書のデータをどのように処理するのだろう? とりあえず、データベースソフトを利用する筈だ。担当するのはアルバイトらしい。私は、参加申込書が届いていることを先輩に知らせると、後日私の会社を訪れ、いつものようにフロッピーをパソコンに入れる。そのファイルを開くと、Accessで作成したデータ入力フォームがあった。

まず、先輩が参加申込書の内容を入力する。私は側で見ていた。この入力データが今後どのように活用されるのかは皆目分からないが、やっている作業は単純だ。
先輩はパソコンを含めたコンピュータ知識に造詣が深いものの、データ入力の速度はかなり遅い
(今でも遅い)。その点、入力するのは私の方が数段速いし、見ていて簡単にできそうである。痺れを切らした私は、ちょっぴり優越感に浸りながら、「私がやりますよ」と言ってしまった。

その瞬間、「頼んだバイ」と言って、あれこれ指示をする。「とりあえず、申込書の返送が集中する時期までは、ボチボチやっといて〜」と言い残し、先輩は帰ってしまった。

最終的に申込書は約400ケ所から返信されるのだが、データ入力をしていると、申込内容に辻褄が合わない場合が多く見られる。例えば、「1日目は講演会・懇親会に出席するのに、その日は宿泊が不要、翌日は宿泊が必要」とか、「参加者全員が同じ行事に参加するのに、一人だけ宿泊が不要」とか、「3人の相部屋なのに、そこには一人女性が含まれている」などである。早速、疑問点についてその団体に連絡をとると、先方の記入ミスも少なくない。

仮に、アルバイトが入力した場合は、それらの疑問点を見出すことはできなかったかもしれない。事務局の私としては、単純ミスのため参加者に迷惑かけたくないので、結果的にアルバイトは遠慮して、ほとんど私一人でデータ入力を行った。

こうして、各行事への参加人数、宿泊先の手配等に手落ちはなく、ほぼ完璧な事務作業ができたのである。さらに、私にとっても、データベースソフトの操作方法が理解できたことは、今後の業務遂行上有益であった。


パソコンを利用して・・・

これまで「ワープロの代替品」として利用してきたパソコンであったが、この大会の事務処理を通じて、本当の意味での利用価値を理解することができたのは幸いであった。こんなことなら、入社当時に導入されたパソコンをもっと活用すべきであったと反省しきりである。

さて、会社にパソコンが持ち込まれ、大会終了後の経理処理を終えるまで、「Word」「Excel」「Access」という、某社の基本ソフトを利用(活用までは至らないが)した私は、当然社内で一番の理解者であるはずだ。

「よし、先輩が言うように今からはパソコンの時代だ。これからパソコンを導入してもらい、社内の事務作業の効率化など情報化を進めなくては」と一人気合いが入っている。

とりあえず、この大会の事務処理に携わった女性事務局員などとともに、その輪を広げていかなければならない。と思うのだが、世の中そう甘くはない。そこには大きく立ちふさがる壁があるのだった。