忘れ物

 

  先日、知事に行ったプレゼンテーションの中で、1ヶ月以上経った今でも気になっていることがあった。
 それは、プレゼンの時に、知事が「君たちはこのプロジェクトを実行できるのか?」という質問をされ、通常であれば「もちろんできます」と答えるところなのだが、僕の脳裏に「もしかしたら、僕は、来年、元気に働くことができなくなっているかもしれない」という思いがよぎり、何も返事ができなかった、ということだ。

 「何を弱気になっているんだ」という思いばかりが膨らみ、このモヤモヤが晴れることはなかった。

 しかし、先日、僕と同じ病気で症状も僕よりも悪い女性が、37歳で助役に任命され、車いすに乗りながら住民サービスの向上のために頑張られている記事を拝見し、僕は、プレゼンテーションの時に 答えたかったことをどうしても知事に伝えた くなり、今日、症状の悪化ですっかり減ってしまった”勇気”を振り絞り、その内容を知事にメールで送信した。

「我々5人に、僕が知っている”才能溢れる3人の職員”を加えて、今回ご提案いたしました事業を取り組むことにより、我々が目標として掲げている”本県の宿泊客延滞在数を5年後に5%増加させる”ことは達成が可能だと考えております。・・・また、私につきましては、現在、荷物を運ぶなどの労働は困難ですが、そのおかげで”物事を考える時間”が増え、観光振興を行っていくためであれば、四苦八苦しながらも、このメンバーをまとめていくことはできると思っております。」

 プレゼンテーションが終わった後にこのようなメールを送信するのは「良くないこと」であり、ずいぶん悩んだ。
 結果なんてどうでもよかった。
 ただ、「後ろ向きだった当時の自分を前向きにする」という”今年の忘れ物”を取りに行きたかった、ただ、それだけだった。

    戻る