本当の姿

 

  子どもは、保育園よりもおばちゃんに、おばあちゃんよりもお父さんに、お父さんよりもお母さんに甘えるような気がする。

 僕の子ども達も、おばあちゃんに保育園に迎えに行ってもらって喜び、僕が遅れておばあちゃんの家に行くと一目散に出迎えてくれた。
 でも、その後、お母さんが来たら「おかあさ〜ん」て甘えた声で近づいてくる。
 お母さんは、いつも「早くしなさい!」と怒っているのに、子どもは彼女の前で一番”本当の姿”を見せる。

 うらやましいけど、そのような状態が続いている限り、子どもは”切れたり”しないのかもしれない。

 しかし、その子どもはいつから”子ども”ではなくなるのだろうか?

 僕だって、体が余り動かない時や呼吸がきつくなった時は、”本当の姿”を見せたいけど、それができない自分がいる。
 本当は、もっと明るい内容の文章を書きたいけど、だんだん暗い内容の文章を書いている自分がいる。

 ”切れる”のに大人も子どもも関係ない。
 でも、それで他人を傷つけることは絶対にいけない。

 先日、「長く生きられない」と告知を受けた人が入院患者を襲って死亡させたニュースが流れたが、僕はその加害者に腹が立つことができた。

 それはきっと、「僕は長く生きられる」と思っているからに違いない。
 つまり、僕は、今はまだ「本当の姿」を見せなくてもがんばれるのだろう。

 とってもありがたい”状態”だが、その状態のうちに「万が一」のための備えをしておきたいと思う自分がいた。

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