調停の取り下げ

  昨日は、仕事を休み、午前中は外科と歯科に行ってきた。
 そして、お昼からは、1ヶ月前に決められた”2回目の調停”に出席するため、裁判所に出かけた。
 パートナーからは「何もそんな状態で今行かなくても・・・。延期して貰えないの?」と言ったが、もし、1ヶ月延期になった場合、僕の体調が「今よりも良い」という保証はなく、また、「早くこんな問題は解決したい」という気持ちが強かったため、予定通り、裁判所に足を運ぶことにした。

 僕の申し立ては、「公社は、この団地の土地を販売する際に、説明に過失があり、そのため、僕らは多額の損失を被った可能性がある」という内容であった。

 この団地は公社が開発し、その土地を購入する方法には2種類あった。
 1つは「直接購入する方法」で、もう1つは「定期借地権によっていったん公社と土地の賃貸契約をした後に購入する方法」である。
 僕は、どちらの方法であっても「購入する土地の値段は同じである」と思っていたのだが、最近になって、公社が「これらの2つの土地の値段の算出方法は異なる」と言いだして、「一度賃貸契約をした方が安い値段で土地を購入できる」ような内容の営業をし始めたのだ。

 このことについて、当時、公社の強い勧めで”前者”によって土地を購入した僕は、公社側に3度に渡って”説明”を求めたが、「既に売買契約を締結している人に説明する必要がない」という回答文書だけが送られてきため「このままでは事実が明らかにならない」と思い、調停を行うことになった。
 そして、1回目の調停の時に、調停員が「僕も君の立場だったら、同じように、公社に”説明”を求めるよ」と言ったことから、公社側も「申立人(僕のこと)が求める資料を作成する」ことに合意した。

 そして、今日、公社側は「申立人は、公社の土地に建っている民間業者の家を購入し、その時、値引きがされているが、もう一つの方法で購入しようとした場合、民間業者は値引きができない。つまり、この”値引き分”を考慮すると、申立人は損をしていない」という主張をしたため、僕らは面食らってしまった。

 当時、公社は、土地の購入時にしか僕らの前に顔を出さず、公社の物ではない「建物」については、僕らと民間業者の間で何回も話し合いをし、僕らの無理難題に対し”民間業者の営業の人”が汗をかきながら本社と交渉をしてくれた結果、値引き等の条件が整ったため購入したのだ。

 それを、「公社が値引きした」ような説明があったことに驚いた。

 そういえば、当時、民間業者の営業マンから「公務員のあなた達を前にしてちょっと言いにくいのですが、公社ってずるいですよね。自分たちが整備した土地にモデルハウス(建て売り住宅)を作らないといろんな情報をくれないし、もしモデルハウスを建てたとしても、その販売には一切協力しないくせに、家が売れないと土地の賃貸料を徴収し、例え売れたとしても、その額にかかわらず”決められた額”を公社に納めないといけないんですよ」という話を聞いたことがあるが、その意味がやっとわかった。

 公社は、当時、民間業者の営業努力だけでなく、僕らのような一般市民の努力で得た利益も「自分たちの利益」に変える「楽してもうける仕組み」を構築していたのだ。

 僕のパートナーは「そんなのおかしいじゃないですか!」と調停員に文句を言っていたが、僕は、その”仕組み”が事実であれば、調停員に文句を言うのは間違いだし、今更、公社に「当時の経営方針はおかしいのではないか!」と言ったところで、公社という「建前上の民間会社」の経営方針に口を出した議論に勝てる見込みはない。

 結局、いかのやりとりの結果、調停の申し立てを取り下げることにした。

「こんなおかしな経営方針が本当に事実なのか?」
「そう思って、我々も何度も公社に確認したが、”事実だ”と言っていたので間違いない」
「一般の民間企業でもこんな経営があり得るのだろうか?」
「・・・こんな経営方針だったから破産したんじゃないかなあ」
「・・・なるほどね。」

 去年の末、県は、財政破綻した公社に対し、”債権放棄”と”新たな融資”によって「公社の再建」を支援していくことを議会で決めた。
 そして、公社は、再建後は「公社が持っているアパートや県営住宅などの安定した賃貸収入」によって”民間企業”としてやっていくそうだ。

 僕は、この案に同意した”創価学会が支持母体”である公明党の県議に「県営住宅の管理運営こそ、民間企業にさせるべきではないか?」と質問したところ、「”債権問題が解決したらその方向に向かう”ということだったので賛成した」とのことであったが、そんなことは、新聞のどこにも載っていないような気がした。

 「地方住宅供給公社法」の第1条にこんな内容がある。
「地方住宅供給公社は、住宅の不足の著しい地域において、住宅を必要とする勤労者の資金を受け入れ、これをその他の資金とあわせて活用して、これらの者に居住環境の良好な集団住宅及びその用に供する宅地を供給し、もつて住民の生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」

 しかし、ここの公社は、以前は「民間企業や県民の利益」を吸い取り、今、「住宅の供給過剰による大幅な値下げ」を行い、そして、これからは「県営住宅などの安定した賃貸収入」によって経営を軌道に乗せようとしている。

 全国に目をやると、「公社は”売れない”ことを理由に売り出し時の値段から70%値引きをして販売しているが、これは”地方住宅供給公社法”に反する」という理由の訴訟がいろんなところで行われているが、全て敗訴しており、僕もこれ以上争うことはしない。

 しかし、もう、これからは「公社の土地だから安心して買った方がいいよ」と言うことだけは決して言わないだろう。

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