一昨日、総務部長が「知事からの伝言」を伝えるために、僕の職場に来た。
きっかけは、先月、僕が知事に提案した「観光振興策」だった。
この提案は、去年、僕が所属したプロジェクトチームが企画した観光振興策と似た内容のものが「全国的に注目を集めている」ということで、最近、NHKの全国版で取り上げられたことから、「もう一度、検討していただけないか?」というものだった。
それに対し、知事は「導入の可否について検討するように」と指示したようで、それに伴い、各部局長で検討したようだ。
そして、その結果として、以下のことを伝言されて帰られた。
○知事に提案したものが全て実現すると思わないようにしなさい。
○仕事は組織で行うものであることを理解しなさい。
○観光振興は関係部署で行っていくので、君は今担当している税務の改善に尽力しなさい。
僕に苦言を呈するために、知事は総務部長を派遣した?
それとも、部局長達の判断?(だったら、なぜ「知事からの伝言」を頭に付けたのであろうか?
知事は、事あるごとに「横割りで仕事をしなさい」と言っている。
あれはポーズだったのか?
それとも部局長たちによって、それを阻止しようとしているのだろうか?
僕は、提案書の中で「全て実施しないといけない」とは書いていないし、提案内容も「チームという組織を創って実施した方がよい」と書いたし、何よりも、この提案書の作成にかかる労力とは比較にならないほどの力を「今担当している税務の改善」に費やしている。
それなのになぜこのようなことを言われなければならないのか?
色々悩んだが、意を決して、以下のメールを知事に送った。
周りからは「何をそんなに焦っている。職員を敵に回すのは得策ではないぞ」とか「君の今後の公務員生活が心配」と言われてしまったが、ここに知事に送った内容を書き残したい。
賛否両論があることは重々承知しているし、僕自身、今でも「このようなことをしてよかったのか」わからないでいる。
しかし、僕は、体が思うように動かない状態になろうとも、目の前にある課題から目を逸らさずに改善しようとしてきた。
それだけは、誤解無く理解してほしかったのだ。
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知事 様
いつもご迷惑をおかけしております。
本日、総務部長が来られ、以下のことを「知事からの伝言」として、直接、指導していただきました。
○知事に提案したものが全て実現すると思わないようにしなさい。
○仕事は組織で行うものであることを理解しなさい。
○観光振興は関係部署で行っていくので、君は今担当している税務の改善に尽力しなさい。
いずれも、貴重なご指導であり、肝に銘じて、今後も精進してまいりたいと思います。
しかし、恐れながら、知事は、
@「毎日お酒のにおいをさせながらバイクで出勤していた職員」をご存じでしょうか?
Aお客さんを無視して、勤務時間内に課員全員で組合集会をしていた現状をご存じでしょうか?
B「昼休み、来客者がいるにもかかわらず、受付カウンターの前の待合い席でラジオを聞きながら寝ていた職員」をご存じでしょうか?
C勝手に退庁時刻前に帰ることを黙認していた職場があったことをご存じでしょうか?
D「面倒くさい」ことを理由に「法律に反する勝手なルールで課税している現状」をご存じでしょうか?
Eこれらのことが、いろんな地方機関でも起こっている事をご存じでしょうか?
僕の職場のことは、全て、職場の課長に相談したのですが「昔からだから」と言われました。
しかし、「緊急性がある」と思い、僕は改善に向けて取り組み、どうしても解決できなかった@とAについては、人事課に相談したのですが、「それが事実で有れば職務専念義務に反する」というメールが送られてきただけでした。
その一方で、お酒のにおいのする職員からは、「あんたはいろんなことを言っているらしいな」と脅されたり、「あんたは体が弱いらしいな。俺は握力が40もあるんだ」と手を握られた結果、私は手の甲を痛めたこともあります。
これらが起こった原因として、所長・次長・課長を中心に20年以上もそこだけに勤務している職員が多く、その結果「彼らの仲間意識」が強くなったためです。
そのため、これらの騒動を起こした僕の事務改善案は、昨年まで、「忙しい」という理由で協議されることがあまりありませんでした。
それどころか、班員から「なぜ、あなただけ事務量が少ないんですか?」という質問があり、班長から「職員の前で自分で説明するよう」に言われ、「すいませんが、体が思うように動かないので、御配慮をよろしくお願いいたします。」と班員に頭を下げたこともありました。
これらのことは、今年度に赴任された新しい上司のご尽力によって、ほぼ、改善されたのですが、それまでの間、「大きな問題になる前に解決したい」という一心で、一人で闘ってきました。
それにもかかわらず、人事課や税務課を管轄する総務部長から「知事は、担当している税務の改善に尽力するように言っていらっしゃる」と、あたかも僕が税務という職務に専念せずに観光振興のことばかり考えているようなことを、知事の名前を使って言われたことに、大きなショックを受けました。
また、担当課に提案しても検討もされなかった別添の内容につきまして、その部署を所管する総務部長に提案したところ、「内容は見ていないけど、担当課に渡しておく」とだけ言われました。
「提案した内容が実施されるかどうか?」はトップの判断であり、もし全て却下されたとしても仕方がないと思っております。
しかし、僕は、今後とも、知事を信頼し、そして、「より良い県にするために、少しでもお役に立ちたい」という気持だけは持ち続け、その結果、愚案を提案することもあると思いますが、今後とも、ご指導や苦言をいただければ幸いに存じます。
最後になりましたが、知事が僕の体のことを心配しているという話を聞くことがあり、その度に、感謝申し上げております。
本当にありがとうございます。
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<別添の提案書>
【概要】
1:定期的に、課内及び班内の協議を義務づけ、職員に「議論する能力」を身につけさせるとともに職員間のコミュニケーションを促進させる。
2:全職員を対象に「事務改善に関する提案」を募集し、出された提案を元にチェックシートを作成し、全ての職場に「その提案内容の導入の可否」を検討することを義務づけ、県庁全体の事務の効率化(底上げ)を図る。
3:決裁文書の修正回数を制限し、担当職員の「資料作成に係る時間」を削減するとともに、「企画立案や現状分析に対する時間」を増やすことによって、職員の能力を高める。
4:職場の現状を把握する場合に、各職場の管理者だけに聞くのではなく、係員からもその職場の状況を調査し、それを元に外部団体に各職場の適正な人員配置を検討させる。
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【具体的な内容】
○「1の提案」について
<現状>
・班内で活発な議論をしているところは、そうでないところと比較して、知識を共有化し、他の班員の問題にも対応できるなど、職員の能力が向上している。
・一方、班内協議をしていないところは、上司の考えを理解しておらず、その結果、「わからないこともわからない状態」になり、各職員が勝手な判断でばらばらに仕事を遂行し、職員の知識や能力の低下を招いているほか、県民に対して、多大な迷惑を及ぼす可能性さえある。
・「わからないこともわからない状態」では、上司に事務改善を提案することも困難であり、そのことが「前例主義」を促し、逆に上司の能力の低下をもたらすことがある。
・本庁では「通常業務が忙しくて議論ができない」場合がある一方、地方機関では「議論は本庁が行うもの」という雰囲気が強い。
<具体的な取り組み内容>
・少なくとも、週に一度は班内協議を行うことを義務づけ、職員の能力の向上や事務の効率化を図る。
・班内協議の手法は様々だが、班長からの事務連絡のみにならないように、工夫を凝らす必要がある。
(例)班員に「検討課題事項」を作成させ、その内容を協議する。
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○「2の提案」について
<現状>
・プロジェクトの取り組みなど、貴重な勤務時間外を割いて県のために調査研究をし、知事も貴重な時間を費やしていただいたにもかかわらず、やる気のあるメンバーのほとんどが、上司や外の職員から非難を受けた。
(例)僕の場合、「この職場は時間外をしない職場なので君だけ残らないでくれ」とか「知事の”提灯持ち”をしているだけじゃないか」などの非難を受けた。
・また、プロジェクトに参加する職員がいる一方で、酔っぱらったままバイクで通勤してきたり、自分たちで勝手に「今日は昼休みも働いたから1時間早く帰って良い」とか「昼休みを2時間採って良い」というルールを作っている職場もあり、”職員の意識”には大きな開きが生じている。
・このような現状で、人事評価制度だけ導入した場合、「評価を受けることに興味のない大多数の人」はますます能力が低下していき、頑張っている人との摩擦が大きくなり、その効果を減らしてしまう可能性がある。
・去年、実施した「改革チャレンジ」は、このような問題を解決するヒントを与えてくれたが、去年の手法のままでは問題は解決されない。
よって、ここでは、「改革チャレンジ」の取り組みを利用した改善策をご提案いたします。
<具体的な提案内容>
以下の方法により、去年取り組んだ「改革チャレンジ」の手法を応用して、職員全体の能力の底上げを図る。
○去年の手法
@各職場に対し、「改革チャレンジ」により事務改善の取り組みを募集する。(上司の意見を付すことが条件)
A応募した職場の「改革チャレンジ」を一覧表にして職員に広報する。
B優秀な取り組みは知事表彰する。
→ この場合、以下の問題点が生じる。
◆元々、意識改革に前向きではない職員が多い現状では、ほとんど効果がない。
※実際、提案したのは全職員の4%前後であった。
◆提案内容の中には、既に外の部署で数年前から実施されているものや全庁で実施すべきものもあった。
(例)「他の職員に見てもらうため、マーキング等徹底する。」「処理が住んだものはファイルに綴じる。」「各職員が作成した電子ファイルの保存場所についてはルール化する。」
◆しかし、「取り組むかどうかは職場の自由」であったため、やる気のない部署ではほとんど効果がなかった。
○提案内容
これらの問題点を考慮し、以下のような手法に改善する。
@全職員から、上司の意見を付すことなく、自由な発想で改革チャレンジの案を募集する。
A応募のあった提案を一覧表にして、各職場に配布し、各職場では、これらの提案の導入の可否について検討する。
B各職場は、検討結果をその部署を管轄する責任者(本庁の部課長や局長など)に提出する。
※改善案が導入できない場合は、その理由を明確にすることを義務づける。
Cその部署を管轄する責任者は、内容をとりまとめ、意見を付して新行政推進室に提出する。
D年度末に、各職場から「最も有効であった提案」を上げてもらい、表彰などを行う。
E@からDの手順を毎年行う。
○効果
☆全職員が参加でき、「やる気のない部署や職員」も「改革チャレンジ」に取り組む必要があり、その結果、意識・無意識関係なく、職員全体の「能力の底上げ」を行うことができる。
☆特定の職場だけで行っていた「効率的な事務処理」を全職場に取り入れることができる。
☆E-Mailなど、既にあるシステムを活用することにより、人件費以外の費用がかからずに、大きな効果を生み出すことができる。
☆これらのことは、既に取り組んでいる「去年の改革チャレンジ」と「ISO取得」を少しだけ応用したものであり、既に職員は「導入のためのノウハウ」を持っており、知事のGOサインで明日からでも導入することができる。
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○「3の提案」について
<現状>
・本庁を中心に、起案文書を修正する回数が非常に多く、担当職員が、事業の企画立案に十分な時間を費やすことができない。
@担当主事が起案する。
A課長補佐が修正する。
B総括課長補佐が修正する。
C課長が修正する。
D次長が修正する。
E部長が修正する。
・各役職から修正が入るたびに、起案者は起案文書を差し替えるが、次の役職からは、「前の役職の方の修正した箇所を修正する」ように指示があるなど、非常に非効率である。
・このようなことが起こる原因の一つに、各役職の方の「勉強不足による自信の無さ」が上げられ、実際、同じ内容の文章を起案する場合、部長によって、修正に係る時間に、「1つの起案当たり2時間以上も差が出る」ことがある。
<具体的な提案内容>
@起案文書を担当者に戻して、修正させる回数を1回だけに制限する。
A起案文書を修正した場合、その職員が責任を持って、それ以降の決裁権者に説明を行う。
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○「4の提案」について
<現状>
・職場の業務量調査は、主に職場の長と総務係が中心となって行っている。
・事務の廃止に伴う人員削減は行うが、事務の効率化に伴う人員削減は行っていない。
・その結果、余剰人を抱えている職場が発生して「事務の効率化」を行う意欲をなくしているが、その状況を是正し、より忙しい職場への人員配置を行う方法がない。
(例)複数の職員が病気休暇を取ったため、臨時職員を採用したが、「自分の仕事が減る」という理由からその職員に与える業務がほとんど無かった。
幹部職員で、仕事中に新聞を読んだり、親睦会の会費を集めている職員がいる。
<具体的な提案内容>
・本庁の部課長(または課長級の職員)及び地方機関の長を除く全ての職員に対し、日誌を付けることを義務づけ、各職員の業務量を把握する。
・その日誌を元に、各職員に対し、職場の現状及び今後の事務改善案を提案する。
・日誌並びに事務改善案は、各職員から人事課に直接提出する。
・提出資料を元に、外部団体に各職場の適正な人員配置を調査させ、より適正な人員配置を行う。
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