パートナーへの借金

  今日、病院に定期検診にいった。

 若干、進行を遅らせる可能性のある薬をもらうためだ。

 この薬は「肺活量が落ちたら処方して貰えない薬」で、前回、医師から「次に来たときに肺活量の検査をするけど、もし、減っていたら処方できないから」と言われていた。

 結果は問題なし。

 自分のことは自分でわかるもの。
 正直「もうだめかな?」と思っていたが、「処方の中止」はしばらく延期となった。

 何だか疲れて家に帰ると、パートナーのご機嫌がよくない。

 こんなときは出来るだけ優しく話すことにしているが、謂われのない責任をなすりつけられ、できるだけ慎重に説明したつもりだが、「うるさいわね。もう、買い物でも何でも良いから出てって」と言われカチンときた。

 最近、機嫌が悪いときによく「わかってる?私はあなたが本当に嫌いなの。もう、うんざり。出てって。」と言われ、「そんなに嫌だったら子どもの世話は僕がするから、君が出ていきなよ」と反論すると、決まって「何言ってるの?病気のあなたに子どもの世話が出来るわけないでしょ。それに、親権は母親に優先権があるのよ」と言いきられてしまう。

 でも、子どもにとって「良い親」になるために、必ずしも「健康であること」が条件ではないはずだ。

 僕のような病気の親であっても、「がんばっている父親」の姿を見せれば、例え、話すことが出来なくなったとしても、例え、長生きできなかったとしても、子どもにとって「良い親」になることは可能だと思っている。

 しかし、「子どもというものは、父親と母親がいて初めてこの世に”生”をもらうことが出来るのだから、きっと、子育ては両親で行った方がよいのだろう」と思い、1ヶ月ぐらい前から、毎日やっていたマッサージも、パートナーが起きてこないと、「疲れているのだろう」と思って無理に起こさずに中止している。

 何の治療法もない状況での「マッサージの中止」は、心のよりどころの1つを失うことであり、大きな勇気が必要だったのに、・・・。それでもお互いの関係はかわらない。

 そんな中、1通の手紙を頂いた。

「・・・(結婚して20年以上が過ぎて)やっと、パートナーのことを理解できるようになりました。パートナーは本当にまじめで責任感の強い人で、私が中途半端なことをしていたから怒っていただけなのです。それにやっと気付くことができ、今では”心から信頼できる人”だと思っています。だから、あなた達夫婦もきっとそんな時が来ると思っています」

 僕たちのケンカの原因は、間違いなく、僕の病気から起こるストレス。
 そして、僕が元気だった頃に、仕事・テニス・勉強に明け暮れ、余り「家族サービスの貯金」をしてこなかったことにある。

 そのつけが、今、こうして僕を苦しめている。

 僕は、パートナーと「もし子どもが”お父さんなんて要らない”と心から言ったら離婚しても良い」という約束をしている。

 でも、その前に、パートナーへの借金は、その金利も含めて返済したいと思っている。

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