意識と無意識

 僕は、何かあると、すぐに「システム化しよう」とか「組織化しよう」と言ってしまう。

 なぜか?

 それは、毎日、色んな事をしていく場合、「意識的に何かしようとする」と、必ず、「あ、忘れた」とか「あ、間違った」という事態が起こってしまい、「しようとしていたこと」が継続できなくなってしま う傾向があり、それを極力少なくしようとするためだ。

 例えば、車の免許の卒業検定で、「横断歩道で渡ろうとしている人に気付かずに検定が中止になった人」は、免許を取った後も、しばらくは、”意識的”に「横断歩道に人がいないか?」と 注意してしまう。
 しかし、その”意識的”は長くは続かず、いつの間にか、横断歩道で渡ろうとしている人がいても止まらなくなってしまう。

 一方、「赤・青・黄」の信号機というシステムを導入すると、ドライバーは、あまり意識せずに、つまり”無意識”に、「横断歩道の手前で止まる」というルールを守ることが出来る。

 僕は、何かあると、すぐに「システム化しよう」とか「組織化しよう」と言ってしまう。

 なぜか?

 それは、「物事を少しでも楽して効率化したい」と思うからだ。

 僕の職場には、使い方が難しい税務システムを巧みに使いこなしながら、決裁文書はワープロソフトを利用できずに手書きで作成している人がいる。

 そこで、とある上司に「文章作成は全てパソコンで行うようにルール化してはどうか?」という提案をしたことがあるが、その時、「50歳を越えた人に”パソコンの使用”をルール化 しようとした場合、労働組合から反発があるかも知れない」という答えだった。

 しかし、こんな出来事があった。

 「パソコンの技術に長けた人」が「複雑だが規則的な税額の計算」を表計算ソフトを活用して、「基礎データを入力すれば税額が計算できるシステム」を作った。
 彼は、電卓を使用していた「これまでの税額の計算方法」に大きな革命を起こしたのだ。
 僕はすぐにそのシステムを使うようになり、その人は、そのシステムを「バージョン7」まで改良してくれた。
 しかし、これまでの手法に慣れていた年輩職員は、そのシステムにあまり興味を持たなかった。
 だが、1年を経過し、とある事がきっかけとなってそのシステムの便利さを知るや、「使い方を教えてくれ」と言ってくるようになり、その後は「このシステムの○○を△△にしてくれるともっと便利なんだが」という意見さえ出るようになり、今では、そのシステムを使うことが普通になり、 誰も、”意識”して使おういう人はいなくなった。

 また、今までデータを保存するシステムが無かったため、毎年、担当が変わったら同じようなデータを入力し直していた。
 そこで、今年度、事務毎の共有フォルダーを作り、業務に関係のあるファイルを全てその中に保存して「みんなが活用できる」ようにお願いしたところ、パソコンに弱い人も含め、徐々にではあるが、 その方法が浸透しつつある。

 僕は、「パソコンの使用」に年齢は関係ないと確信している。

 年齢が上の方で、「この年になってパソコンを始めるのは嫌だ」と言って抵抗をしようとしている人は、ほとんどが「パソコンの食わず嫌い」だ。

 しかし、どこの社会でも、若手よりもベテランの方の意見が強い。

 だからこそ、きちんとした「やり方(システム)」を構築して、それを「組織的」に導入していくことが、「若手とベテランの差をなくす」ための重要な要素となってくる。

 僕が、先日、知事に提案した内容の1つに、この「システム化」と「組織化」がある。
 公務員が勤務する職場には、「毎日夜中まで働かなければならない職場」もあれば「就業まで時間をもてあそんでいる職場」もある。
 忙しい職場では、毎日が「事務改善の嵐」だが、時間をもてあそんでいる職場では、「これ以上仕事が減ると自分の人員削減につながる」と思っているのか、事務改善を積極的に導入しようとしていない。
 だから、全ての職場で、「とある職場で行っている事務改善」を導入させるには、「システム化」と「組織化」が必要になる。

 このようなことは、別に仕事場だけではない。
 「ボランティア活動」でも、「システム化」と「組織化」がしっかり構築されている団体は、その活動を、毎年、確実に広げている。

 「誰でもできる簡単なこと」でも、それを 行う「システム」と「組織」がしっかりしていないと、次第に「やらなくてもいいのではないか?」と思う人が増えていき、一方、「システム」と「組織」がしっかりしていると、時間とともに、「しなければいけない」と意識せずに「無意識的」に 行う人が増えていく。

 何かを”楽”に、そして”効率的”に行おうとする場合は、多少時間がかかったとしても、「システム化」と「組織化」を活用し、できるだけ、「意識的」を「無意識的」に変えていくことだ、と僕は思っている。

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