動物園

 

 先週末、長男が「動物園に行きたい」と言ってきた。

 体調不良で、金曜日に仕事を休んだ僕は、その日は、お昼前まで布団から出ることができなかったが、長男の「お父さんと行きたいよう」という一言が、僕に布団から出る勇気をくれた。

 自宅から動物園まで、車で1時間半。

 ”午前中の子供の世話”ですっかり疲れ切ったパートナーに車を運転させる訳にもいかない。
 少し長距離ではあったが、がんばって、僕が運転することにした。

 コーナーの度に、「よっこらしょ」と言って腕を持ち上げていたが、こんなこともあろうかと、この前購入した”ETC”がだいぶ僕を助けてくれた。

 途中、何度か、ヒヤ〜っとする場面があったが、僕以外は全て睡眠中だったので、汗をかいたのは僕一人で済んだ。

 動物園に着くと、まぶしいばかりの太陽が僕を待ち受けてくれ、おかげで、入園後、あっという間に疲れてしまった。
 夕方のニュースで解ったことだが、この日は、全国各地で、6月としては、観測史上最高の温度を記録したそうだ。

 僕は、ベビーカーに寄りかかりながら必死にみんなに着いていこうとしたが、どうしようもなくきつくなり、近くにあったベンチで休んでいると、今月2歳になったばかりの娘から、ぎこちない言葉で「お父さん、こっちよ」と手を振ってくる。

 「ここは踏ん張りどころ」と思い、「あ〜らよ」というかけ声を出して、僕は再び歩き出す。

 「うれしさ」が「きつさ」を上回る瞬間だ。

 こうやって、ベビーカーを頼りにがんばって、約2時間、動物園探索を続けた。

 「もう連れて行けないかも知れない。これが最後かも知れない」

 パートナーも、一生懸命ビデオを回していた。

 でも、また、子どもが「一緒に行こうよ」と言ってきたら、僕は、這ってでも一緒に行くような気がする。

 彼らが、僕を父親として頼ってくれているうちは。

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