職員の意識を変えることは、難しいようで結構簡単ではないか?
例えば、「渡ろうとしている人がいれば止まらなければならない横断歩道」だけでは車は止まらないが、そこに信号機ができると、意識、無意識にかかわらず、車が止まるようになる。
職員の意識も、その手法が変われば、意識、無意識にかかわらず、職員の仕事の仕方も変わる。
そんな気持ちの元、意識改革担当課長と以下のような内容のやり取りをした。
そう、今年、新しく赴任された意識改革担当課長に「これまでの人とは違うはず」という”大きな期待”を持って。
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先日の「意識改革メールニュース」、拝見いたしました。
最近、意識改革担当課による「職員の意識改革」はいろんな手法で取り組まれている
様子であり、僕も「それらの取り組みがより効果的になる方法はないか?」と考え、少しだけ、アイデアが浮かびましたので、以下の通り、ご提案いたします。
よけいなお世話とは思いながらも、「職員の意識改革を行うには、意識改革担当課を先頭に、全ての職員が知恵を出していかないといけない」と考えてこのような提案をいたしましたことをご理解いただきますようよろしくお願いいたします。
【提案内容】
◆「意識改革研修」について
僕は10年以上前から意識改革を含むいろんな研修に参加して参りました。
そして、ほとんどの研修において、その研修が終わった直後は、参加者から「良かった」という感想を聞いてきました。
今回の研修に参加された方も例外ではなく、「良かった」という感想が多かったようです。
しかし、意識改革の研修は「映画の試写会」ではないのですから、「良かった」で終わってはその研修の意味は薄れてしまいます。
実際、これまでに参加した研修につきましても、研修後、「よし意識改革をしよう」と言ってなにかを取り組む職員はほとんどいませんし、もし、何かを取り組もうとしても、多忙な仕事や上司の理解がないと、3日も経たない内に、研修の内容が薄れ、”これまでの意識”に戻っています。
今回は、この点も克服しようと「幹部職員の参加」を強く促したようですが、その後、「参加した皆さん、特に管理職の皆さんには、職場で報告会を開き、参加していない方にもお伝えいただきたいと考えています。どうかよろしくお願いいたします。」というメールを1回だけ送ったところで、幹部職員が、これまで何十年にわたって染みついた”意識”を改革することなど、どう考えても不可能です。(実際、僕の職場では、本庁からの動員要請により、多くの幹部が研修に参加しましたが、その内容の報告は回覧さえ回ってきませんでした。)
しかし、その一方で、財政課が予算要求の手法の改革内容をペーパーで配布しただけで、予算要求に関するこれまでの意識をガラッと変えてしまった例もあります。
そこで、以下のような手法を試みてはいかがでしょうか?
@「意識改革研修」に参加した人(特に管理職)を対象に、「意識改革のための今後の取り組み内容」を所属長に提出させる。
A提出された「意識改革のための今後の取り組み内容」を職場の職員に提示する。
B所属長は、提出された「意識改革のための今後の取り組み内容」について、1ヶ月後・3ヶ月後・6ヶ月後・1年後点検を行い、総評を意識改革担当課に提出する。
◆意識改革メールニュース
意識改革担当課が取り組んでいる意識改革の事業を「意識改革メールニュース」として、「メールを活用して職員のみなさんにお知らせする」という手法は非常に良いアイデアだと思います。
しかし、その内容が一過性のものになっているような気もしています。
例えば、僕が去年参加したプロジェクトについて言いますと、これも研究発表までは
メールで広報されましたが、その後の結果について、何も報告がありません。
これでは、このプロジェクトが単なる「ポーズ」と思われてしまいます。
よって、チームの提案が事業化に向けて検討されるようになった場合など、何らかの結果を出したものも、ニュースで流してはいかがでしょうか?
そうすることによって、今年、このプロジェクト参加している職員のやる気を促進し、かつ、その他の職員の中にもこのプロジェクトに興味を持つ人が増えてくると思います。
◆「改革トライアル(”改革チャレンジ”で出された事務改善を3つ以上取り組むことを義務づけた事業)」について
職員の知恵を活用して、職員の能力の底上げをする非常に有効な手法の一つであり、非常に興味を持ちました。
しかし、「有効なアイデア」も、意識改革に興味のない職場も含め、全ての職場で実施されなければ、効果は期待できません。
今年はじめての取り組みであり、「大変である」ことは承知しておりますが、最初の年に曖昧な形にしてしまうと、翌年以降はもっと曖昧になってしまいますので、全ての職場に対して「3つの取り組み」は必ず提出してもらう気持が必要になってくると思います。
また、「各職場で採用された取り組み」と「その効果」を公表し、その結果による「平等な評価」により、優秀なアイデアを提案した職員(職場)を表彰していくことは、「改革チャレンジ(事務改善を自主的に取り組むことを推進する事業)」の効果を促進していくことにつながると思いますので、ぜひ、計画通り、試みられますとともに、以下の手法による表彰も行ってみてはいかがでしょうか?
@「改革チャレンジ」により、自主的に取り組んだ職場は、「1つの取り組み毎に3ポイント」与える。
A「改革トライアル」で外の職場のアイデアを取り組んだ職場は、「1つの取り組み毎に1ポイント」与える。
B1年間に獲得したポイント数を一覧表にして公表する。
C「最も得点の高かった職場」や「順位がもっともジャンプアップした職場」を表彰し、競争意識を高める。
以上です。
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【意識改革担当課長からの返事】
いただいたアイディアは今後積極的に検討させていただきます。
なお、現時点でお示しできる考えは以下のとおりです。
本県財政が厳しい状況にある中、全職員が更に知恵を絞る必要があるのはおっしゃるとおりです。そのような観点から現場職員の意見を直接お聞きする場として、意識改革研修の第2部を実施しているところです。
これからもお気づきの点があればどしどしご提案ください。
あなたの職場に対しては、研修の内容を報告するように改めてお願いしておきますし、
他の所属に対しても再度周知したいと思います。
当初から、単に研修を実施するだけに終わらせることなく、適宜、フォローすることを計画しておりましたが、具体的なご提案内容も参考にさせていただきます。
昨年のプロジェクトチームに関しては、チームの事業について、現在、所管課で予算要求を具体的に検討されていることもお聞きしています。
今後、事業化につながるお話があるもの等については、タイミングを見計らって、積極的にお知らせしていくつもりです。
「改革チャレンジ」については、何らかの表彰は行う予定ですので、あなたの提案内容も含めて、今後、検討いたします。
全職場・全職員を如何に巻き込んでいくかは、毎年の課題であり、かつ、最も頭を悩ましているところです。負担感・やらされ感が強くなれば職員の自主的な取組は期待できず、表面的な帳面あわせに終わってしまいます。
基本的なスタンスは、あくまでも自主性の尊重ですが、一方で、組織的に強くお願いすべき場合があることも承知しており、そのバランスが重要であろうと常々考えております。
先日の研修の先生がおっしゃっていましたが、人の意識というものは簡単に変わるものではありません。研修の中心テーマである県の厳しい財政状況など、職員の意識に影響を及ぼしうる様々な情報を、わかりやすく提供することも一つの手段であり、組織風土を変える試みをこれ以外にも適宜の手段を検討のうえ、続けていきたいと考えております。
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【追伸として送ったメール】
早速、お考えをお示しいただき、ありがとうございました。
以下、余談となってしまいますが、ひとりごとのように書いてみました。
なお、意識改革担当課の内情を知らないものの意見ですので、見当違いのところも多々あることは重々承知しており、一職員としてもアイデアであることを申し添えます。
◆意識改革担当課の職員も、意識改革担当課に配属される前から自主的なグループを
立ち上げて意識改革の取り組みを行っていたのではなく、意識改革担当課に配属された後、「意識改革を促進する手法を考案しなければいけない」という義務の上で、「自由な発想」でいろんな取り組みを行っていたのではないでしょうか?
つまり、意識改革担当課に配属されるような優秀な職員であっても、ある程度の”義務”がないと、課長の目指す「職員の自主的な取組」は期待できないということは、ご指摘の通りだと思います。
◆職員の中には、「県政を良くしよう」と日々努力している職員もいれば、公の場で下半身を露出したりホテルでのぞき見をして逮捕される職員、それに、何十年もお酒を飲みながら職場に出てくる人もおり、ある程度の義務がなければ、全職場・全職員に対し、あなたが望むような意識改革を自主的に取組ませることは不可能です。
◆また、全職場において、「事務を簡略化して仕事を減らそう」という主旨の意識改革は日々行われています。
ただ、その内容が「しなければならない仕事を”きついから省略する”」とか、「そこまですると自分の仕事が無くなる」ということから、真の意味における事務改善を行わない職場が多数あるのが問題なのです。
◆そのような職場において、「先進的な職場が改革チャレンジで提案した内容」を「3つ以上取り組むこと」を義務づけた「改革トライアル」は、毎年、「新しく3つ以上取り組むこと」にすれば、効果的です。
◆また、意識改革に積極的な職場・職員について、その視野を広げてもらうために「意識改革研修」に参加することも効果的です。
◆つまり、意識改革担当課が行っている取り組みは非常に的を得ているように思います。
◆しかし、これまでの「やりっぱなし」の手法では、「2年目以降の職員の士気の低下」は押さえようがありません。そこで、それを防ぐためには、既に検討されているとおり、「最も得点の高かった職場」や「順位がもっともジャンプアップした職場」を表彰したり、彼らの取り組みに対する評価を知事からしてもらう、など、競争意識を高める対策が必要になります。
◆一方、それだけでは、表彰されない「ほとんどの職場・職員」では、あなたが危惧されていらっしゃるように、「改革トライアル」を義務的に行うだけになる可能性が高くなります。
しかし、たとえ意識改革に興味のない職場であっても、各所属長の間でライバル心
が強いことも事実です。
よって、このライバル心を利用することも非常に有効です。
例として、「改革チャレンジ」と「改革トライアル」に「ポイント制」を導入し、1年間に獲得したポイント数を一覧表にして公表することにより、これらのライバルの間の所属長の競争心を高める、ことが上げられます。
◆ただし、組合の反発を避け、かつ、「職員の自主的な取組」を目的としているのであれば、各所属長の合意もなく、強引に「人員削減」や「予算削減」を行わないことが、重要な前提条件となります。
◆プロジェクトについて、参加してみて思ったのですが、現在の方法では、職員の意識改革にはほとんど効果はないと思っています。
<理由>
・プロジェクトの周知がされていないため、上司の理解を得れない。
※これは地方機関において特に深刻な問題となった。
・知事へのプレゼンテーションで「よくできている」と言われ、その後、プレゼンテーションに欠席した部長が資料だけで評価し、プレゼンテーションの内容に反する評価を一方的にされ、それ以来、何ら連絡もなく翌年度になっており、参加者の多くは「やりっ放しの事業」と言っている。 etc
◆それに、なぜ、去年の参加者からの意見を聞くことをせずに今年度も実施しようとされるのか、わかりません。
◆去年の提案が「現在、所管課で予算要求を具体的に検討されている」のであれば、その事実を、全職員に広報することによって、今年、プロジェクトに参加している職員のやる気を促進し、かつ、その他の職員の中にもプロジェクトに興味を持つ人が増えてくるのは明かです。
参加者は、「提案しっぱなし」という状況が「上司へのポーズ」のための事業と映るのであり、きちんとした理由によって事業化されなかったとしても、誰もこの事業を「やりっぱなし」とは思わず、「底まで真剣に検討してくれるんだ」という気持になります。
◆つまり、このプロジェクトを有意義なものにするには、「これまでの手法をうち破る」意識改革担当課の意識改革が必要条件だと思っています。
以上、伝えたかったことは「意識改革担当課が行う事業は内容としては有意義」であり、「実施の方法の課題」を真剣に解決すれば、大きな効果が出る、ということです。
更に余談ですが、「人の意識というものは簡単に変わるものではありません。」ということは、「人の意識というものは一瞬で変わるものであるということは全ての職員が経験している」という事実から見ても、明らかに誤った解釈です。
・財政課の予算査定基準が大きく変わった時点で、予算担当者が去年までの意識を一瞬で切り替えるのはなぜか?
・何十年もお酒を飲みながら職場に出てきていた人が、たった一回の上司の激でそれを改めることができたのはなぜか?
・職場が異動になった時点で次の仕事に意識が切り替わるのはなぜか?
これらは全て、財政課や上司、それに職員一人一人が「本気になった」からです。
言い換えるならば、これまで新行政推進室が「人の意識というものは簡単に変わるものではない」という暗示にかかってしまい、本気で取り組んでいなかった、ということになります。
ですから、意識改革担当課が、甘えることなく危機感を持って「本気になった」ら、職員の意識は一瞬で変わり、その瞬間から、職員は、「事務改善」や「経費節減」に真剣になって取り組むようになることは、明白な事実です。
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