職場避難
今週の月曜日の勤務開始早々、職場の上司が僕に対し、「俺に挨拶をしないやつが偉そうにするな!」と怒鳴ってきたことが原因で、問題が起こった。 僕は最近、のどの筋肉の調子が芳しくなく、できるだけ大きな声を出さないようにしているが、小さい声でも「おはようございます」は言うように心がけている。 だから、「この上司は何か勘違いしているのでは?話せば分かるはず」と思い、別室に来てもらって2人で話し合うことにした。 しかし、彼は僕の話を聞くつもりはなく、これまでのうっぷんを晴らしたかったようで、思わぬ方向に行ってしまった。その時の会話は以下のとおりであった。
「貴様、何様のつもりで、俺のことを告げ口したんだ!」 別室の椅子に座ると、僕の目の前に立ち、上から威圧するように、たばこの火のついた方を僕の顔に向けて怒鳴ってきたが、「僕が熱くなってはいけない」と思い、「良かったですね」を連呼したが効果はなかった。 「俺がお酒を飲んでここに来ることと、貴様と何の関係があるんだ!何が飲まなくなっただ?今も飲んでるよ!俺は、昔、左翼とも関係があり、貴様を始末することなんて、簡単なんだよ。生意気なことを言っていると、本当にやるぞ!お前のせいで、俺は子どもにまでバカにされたんだ。謝れ!」 確かに近くで話しているとお酒のにおいがしてきた。
「酔っぱらいを相手にするな!僕が熱くなってはいけない」と一生懸命言い聞かせ、僕なりに平静を装うように努力した。
彼の怒鳴り声は執務室にも響いていたようで、彼の上司がドアからのぞきに来たが、何も言わずにすぐに出ていった。
彼は、僕がどのよう気持ちで、毎日、病気と向かい合っているのか知っているのか! 僕の中で何かが切れた。 「あなたに僕の何が分かるんですか?これ以上、脅したり、侮辱を続ければ、恐喝と侮辱罪で訴えますからね。」
「バカか。お前は。俺は、これまでに何度も人事課に呼ばれてるけど、大丈夫なんだよ。だから、お前なんか恐くないんだよ!やれるもんならやってみろよ。」 「ふざけやがって!俺は謝れっていってるんだよ!」
こんなやり取りが20分ぐらい続いた後、さっきとは違う彼の上司が来て、「ちょっと来て」と彼を呼びだし、彼は「これで終わったと思うなよ!」と吐き捨てて、その部屋を出ていった。 その後、「彼とは2人で話し合わないように。そして、決して相手にするな」という指示を受け、職場に戻った。 しかし、僕が席に戻るや否や、彼は僕に向かってゴミ箱を蹴りつけた。
「おい。ちょっとこっちに来い!」 僕は、彼の罵声はもちろんのこと、彼を注意しようとしない”彼の上司”にも腹が立った。
「あ〜、くそ!」
「胃が痛くなってきました。これ以上我慢すると胃に穴が開きそうです。ご迷惑をおかけすることになると思いますが、彼と話し合おうと思います。」 こうして、僕は避難することになったが、その間、”彼と何十年も一緒に仕事をしている人”とこんな会話をした。
「彼は気が荒いが悪いやつではない。今回は君が悪いんだから、君が謝ってくれないか?」 この職場の多くの管理職は、彼と何十年も一緒に仕事をしており、「彼は昔からだから」という情けをかけている。 僕は、避難している間、こんなことを考えていた。 「こんなことが起こるのは、病休で休んでいる人の代わりに来た臨時職員の仕事がほとんどないくらい余剰人員がいることや、多くの人が何十年も税務勤務し続け、彼らが”長”の付くポジションを占めてしまったことによって、”県民主体”から”自分たち主体”の考え方になり、彼らに批判的な意見は、それが、たとえ、”県民主体”であったとしても、無視しても問題がない体制ができあがってしまっているのではないか?このような状態では、僕のようなものがどんなに意識改革を訴えても、どうしようもないのではないか?」 避難生活は夕方5時にまで及んだ。
「なぜ僕がこんな目に遭うんだ?」 そして、その翌日となる昨日、出勤早々、「昨日問い合わせをした○○ですが、対応された□□さんいますか?」という電話があった。 ”□□さん”とは、”前日に僕を恐喝しようとした職員”であったが、電話で話をするや否や、僕に向かって「これは貴様が対応した人だろうが。何で俺の名前を使うんだ。ふざけるな!」と言って 、たばこを吸いに行った。
○○さん? そんなやり取りをしているうちに、彼が喫煙室から帰ってきたので経緯を聞こうとすると、「何で俺の名前を使うんだ。ふざけるな!」と言い返してきたので、「何言ってるんですか!昨日、あなたが対応した人でしょうが!」「何を言っているんだ!ふざけるな!」と言い合いをしてしまった。 結局、電話を掛けてきた方を長時間待たせることになり、最終的にその電話を対応した人がその方に何回も謝っていたようだ。
「やってしまった!」 すっかり自己嫌悪に陥り、「もう、どんな場合でも、彼と直接話すのは止めよう」と思い、この2日間の出来事を人事課に報告し、対応を依頼した。 その後、彼は、全く仕事をせずに、寝ては覚め、覚めては僕の悪口を言い続け、上司も黙認し続けた。 そして、11:30を回った時点で、僕は、「彼の勤務態度は、明らかに、地方公務員法に基づく”職務専念義務”に違反する」と見なし、所長に通報し、しばらくして彼は帰っていった。 一方、僕も体調が悪化したため、しばらく別室で休養し、そして、今日、僕はとても仕事に行ける状態ではなく休んでしまった。
僕の家族や知人は口をそろえてこう言う。 ついに、誰も応援してくれる人がいなくなった、と思っていたところへ、僕と同じ病気を患いながら「日本初のALS患者としてのユニバーサルデザイナーになる」と頑張っている人から「ホームページを見た」という、こんなメールが届いた。
あなたのHP、よく拝見してます。
そして、僕はパソコンの前で泣き崩れてしまった。
僕だって本当は職場のことは「良いこと」しか書きたくない。 でも、知識があるからって、経験があるからって、公務員として「やってはいけないこと」もあれば、「やらなければいけないこと」もある。 僕はどんなに病気に蝕まれようが、現役である限りは、最後まで「公務員としての信念」だけは貫きとおそうと決めた。 だから、もし、僕のことを心配してくれる方がいたら、お願いだから、”もうがんばるな”とは言わないでほしい。 |