吐き気
先週の金曜日から喉に違和感を覚えて、吐き気が収まらない。 ちょうど、風邪を引いて病院に行ったときに、喉の腫れぐあいを調べるために棒のようなものを入れられて「ウエ〜!」とする感じに似ている。 「おかしいなあ」と思って口の中を見てみると、舌の筋肉がだいぶ無くなっていて、喉の奥に“棒で押さえられているような空間”があり、それが原因ではないか?と思った。 とても仕事に行ける状態ではなかったが、この日は、所長が選んだメンバーによる「事務改善のためのプロジェクトチーム」の話し合いがある「重要な日」だった。 身内による会議であり、ほとんどの人が開始時間が過ぎてから来る程度の“重要性”で、最初は「こんなことをしたって何も変わらないのでは?」という意見が大半を占めていたが、いざ、議題の話し合いになると、あっという間に2時間が過ぎてしまい、時間が足りなくなる。 そして、毎回、僕の意見はほとんど採用されないが、それは、「何もしない」のではなく、「他の職員のアイデアが良かった」だけだ こうして、会議の時は議論に集中していたため”きつさ”をごまかすことができたが、それが終わると、また、その”きつさ”がぶり返してきた。 実は、この日、大学の友人が8年ぶりに僕に会いに来たため、お昼から休みを取って彼を観光地に連れて行くことになっていた。 僕の体調のことを気にしての再会であり、僕一人では案内がきつかったのでパートナーにも休んでもらう羽目になったが、おかげで、学生時代の会話を8時間以上に渡って楽しんだ。 途中で、何度も「ウエ〜」という感じがして、それを抑えようとして涙目になったが、昔語り合った”お互いの夢”を話しているうちに、気分はすっかり「病気の前の自分」に戻ることができた。 そして、その翌日は「ALS患者支援の会」の役員会。 体調は決して良くなかったが、20名もの方が集まってくれることがうれしくて、「きついから欠席しよう」という気持ちは少しも起こらなかった。 さらに、彼らの中には、「自費でALSに関係のある研修会に行く人」もいるなど、この会議に出席するたびに「ありがとう」という気持ちになる。 また、この週末は3連休であり、息子に「マジレンジャーショー」に連れて行く約束をしていた。 そこで、日曜日、僕の姉の家族と一緒に「片道200km以上ある遊園地」に行った。 パートナーからは「きついんでしょ。無理せずに延期したら?」と再三言われたが、延期しても症状が良くなるわけでもなく、この機会を逃すと、もう2度と連れて行ってあげれないかも知れない。 だから、予定は変更したくなかった。 僕は、自分の車だけはかろうじて運転できるので、この日も「移動時間だけでもパートナーに休んでもらおう」と思ったのだが、出発するとすぐに吐き気がひどくなり、あえなくパートナーに運転を代わってもらい、遊園地に着いた後も、「子ども達が楽しんでいるところをビデオに撮ってきてね」とお願いして、僕だけ車に残ることになった。 それから4時間後、すっかり楽しさを満喫した様子の子ども達と、すっかり疲れ果てた様子のパートナーが車に帰ってきた。 僕も、吐き気がひどくなっていたが、疲れ果てているパートナーを見ていると、申し訳ない気持ちになり、「だいぶ元気になったよ。帰りは僕が運転する」と言ってしまった。 運転席に座った途端、また、吐き気が襲ってきて涙目になったが、すぐに寝てしまったパートナーを起こすわけにはいかない。「せめて20分だけでも寝かしてやりたい」という気持ちが心の底からわき起こり、途中からは無心で運転したようで、気が付くと、家の近くまで来ていた。 翌日も吐き気が収まる気配はなく、唯一、横になっているときがこの苦しさから解放された。 その状況は、その後も続き、職場で「ウエ〜!」っと言い続けるわけにもいかず、昨日、今日と仕事を休んでしまった。 パートナーに、「もしかしたら、もう仕事にいけないのかなあ」と泣き言をいうと、「あなたのことだから、また、解決策を見つけるんでしょ」と軽くあしらわれてしまった。 確かに、これまでは、パートナーから「もう無理して仕事にいかなくても良いんじゃない」と言われ、その度に「自分で”病気だから仕方がない”と思うから”病人”になってしまって、症状も悪化するんだ。だから、”病気だから仕方がない”なんて思うもんか!」と軽くあしらってきた。 でも、今回の解決策は? ただただ、この吐き気に慣れて、「ウエ〜!」としそうになっても声を出さずに我慢できるようになるしかない。 そう思い、ここ何日間か吐き気を理由にパソコンの前に座らなかったが、今、こうしてパソコンの前でホームページの内容をタイピングしている。 涙目の状態は続き、何度も下を向いてしまったが、明日こそは、必ず仕事に行ってみせる。 そして、僕は、病気による「僕を仕事に行かせないようにする”さまざまな陰謀”」に打ち勝ってみせる。
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