自殺の夢

 

 今朝起きたら、また、吐き気がひどくなっていた。

 食事や歯磨きは気力で済ませたが、着替えているときに、食道が出てきそうなぐらいの吐き気が襲ってきて、我慢できずに、布団に横になった。

 字が書けずに腕が上がらなくても、うまく歩けなくても、うまく話せなくても「頑張って仕事に行こう」と思っていたが、今日は気力が続かなくなって、また、仕事を休むことになった。

 そして、職場に電話をした。
 僕は、この電話の瞬間、いつも、「病気に負けた」ように思ってしまい気が重くなる。

 電話の後、横になって休み、ちょうど寝付こうとしていたときに電話が鳴ったが、そのまま寝てしまった。

 そして、夢を見た。

 内容はこんな感じだったと思う。

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 職場から自宅に電話があり、「緊急の問い合わせがあったので至急来てくれ」と言われ,行ってみると、仕事に対応できていない”寝間着姿の自分”がいた。

 ついに、僕は、「もう何の役にも立たない」と思い、自殺を決意して家に帰る。

 家に帰ると、なぜか、家族みんながいて、僕が、今日、自殺をすることを知っていているのに誰も止めようとせずに、グッと我慢している。

 そして、彼らは、なぜか、僕の知らないおばさんが寝ている布団を囲んでじっと座っていた。

 しかし、僕が帰った瞬間、そのおばさんは、自分が寝ていた布団の中から包丁を取りだして、自分のお腹を切って自殺した。

 僕は、しばらく呆然とその場に立ちすくんだが、「次は自分の番」と、誰もいない2階に上がっていった。

 そこには、大量の睡眠薬とガスの元栓があった。

 だが、死ぬ前に、パートナーや子ども達に「ありがとう」と言いたくなり、次の瞬間、片手をパートナーに、もう一つの手を子ども達が握っていた。

 そこで、3人に「ありがとう」と言うことができ、この世に未練が無くなったのだが、両手がふさがっていて、睡眠薬を飲むことができない。

「あれ?僕はいったい何をしたいんだ?」と夢の中で自分に問いかけている。

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 そして、目が覚めた。

 シチュエーションや登場人物は、現実とかけ離れていたが、生まれて初めてみる”自殺の夢”に、しばらく、いろんなことを考えていた。

 「やはり、この病気を患っても前向きに生きていけるのは、パートナーや子ども達のお陰なんだろうな。」
 「だったら、この病気を患っていて、そして、家族もいない人たちはどうなるんだろう?彼らに救いの手を差し伸べてくれる人はいるのだろうか?」

 僕は、多くの仲間達と一緒に「ALS患者支援の会」を立ち上げた。

「もしかしたら、この会は、”ALS患者やその家族の人たち”に対して、手を差し伸べることができるのではないだろうか?」

 少し傲慢かも知れないが、こんなことを考えずにはいられなかった。
 

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