社会の公式

 僕は高校の時、嫌というほど数学の勉強をした。

 数学にはいろんな公式があり、その公式を知っていないと数学の問題は解けない。
 しかし、僕は、この公式がなかなか憶えられずに、その考え方だけを理解し、試験の度に定義から公式を導き出していた。
 だから、たまに「まだ習っていない公式」を導き出すこともあり、「まだ習っていない公式は使わないで問題を解くように。」という注意を受けたこともある。

 社会にもいろんな公式がある。

 しかし、それを教えてくれる先生はいないため、自分で勉強するしかない。

 その一方で、「まだ習っていない公式は使わずに問題を解くように」という注意を受け
ることもない。

 例えば、「データの整理」という定義に対する”社会の公式”の活用について。

 「パソコンを使う公式を一切知らない人」は手書きによる整理しかできない。
 次に「ワープロソフトの公式しか知らない人」は、並び替えをする度に苦労をする。
 しかし、「表計算のソフトの公式を知っている人」は、容易に並び替えをすることができる。
 そして、最もベストなやり方が「データベースソフトを活用すること」だろう。

 つまり、「社会の公式とその使い方を知っている人」は、その分だけ効率的に仕事ができる。

 しかし、パソコンやインターネットの普及に伴い、毎日のように新しい”社会の公式”が生み出されているため、しっかり勉強していかないと、他の人より非効率に仕事をしてしまう場合がある。

 存在や問題集などによって使い方を繰り返し教えてくれる”学校の公式”と、自分で勉強しないとその存在さえ判らない”社会の公式”。

 この”公式”の違いは非常に大きい。

 ただ、公務員だけは、「”社会の公式”を勉強しなくても、知っている”社会の公式”に応じて仕事が割り当てられ、その仕事をやっていれば給料が毎年増えていく職場」で働いているため、その環境の中でうまくやっていくためには、”社会の公式”よりも”公務員の公式”の導き方を覚える必要がある。

 「8時間かかってやっていた仕事を4時間でできる”社会の公式”があるにもかかわらず、本人が”憶えたくない”と言えばそれで済んでしまう」という”公務員の公式”の導き方がどうしても理解できずに、懸命に”社会の公式”を勉強している僕がいる。

 そして、迷惑をかけているにもかかわらず、「”社会の公式”を憶えない人」に感謝できないでいる自分がいる。
 

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