再び転倒


 今日は仕事に行こう。

 そう強く思って布団を出たが、風邪の症状がひどくフラフラしたので、「もう転ぶのはいやだ」と思い、仕事を休むことにした。

 案の定、風邪の症状は悪化していった。

「でも明日は仕事に行くぞ」と張り切ってマッサージをしてもらう部屋に入ったところで、コンセントに躓き、頭から転んだ。

 ズドーン!

 ものすごい音がしたようで、布団で寝かけていた子ども達が駆けつけてきた。

 額から出血。
 肋骨や左腕にも激痛が走っている。

 パートナーは「出血がひどい。病院に行こう」と言い、僕は痛みで顔を歪めながら「10分だけ、いいから10分だけ待ってくれ」と言う。

「お父さん大丈夫?」と心配しながらも、「よしよし」と体をさすってくれる優しい子ども達。

 頭が痛い。とても痛い。
 そして「床がものすごい勢いで僕に近づいてくる恐怖の瞬間」が何度も蘇ってくる。

 恐くて痛くてもがいている姿を子どもに見せまいと「大丈夫だよ」と言ってはみたが、とてもそんな顔ではなかったようだ。

 パートナーを通して、自分に「落ち着け!」と何度も声をかける。

 それから10分後、出血が収まってきて、20分後、パートナーのお母さんが駆けつけてきて、子ども達を布団に連れて行ってくれた。

 そして、やっと起きあがることができた。

 脇腹が痛く、左肩も痛かったが、それよりも、「歩くことへの恐怖感」がまた蘇ってしまったのが何よりもいやだった。

 

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