最後の提案

 


 職員の意識改革や業務改善について、自ら実施してきただけでなく、思いつくままに知事を含む上司にも色々な提案をしてきた。

 そして、これが今年度、最後の提案となった。

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 知事様

 いつもご指導していただき、ありがとうございます。

 さて、先日、ニュースで、僕が働いている自治体に関する調査結果について、「3年前と比べて、職員の意識改革は、”自己評価”では向上しているが、民間から見たら変化はない」という”厳しい評価”を知り 、ショックを受けました。

 しかし、この調査結果は、「ここの職員の意識改革のスピードよりも民間の意識改革のスピードの方が速い」ということが背景にあるのではないか、と思います。

 例えば、意識改革担当課は、職員から事務改善案を募集し、その結果、100件以上の提案があったようですが(以下、「募集事業」と表記)、この提案について、全ての課に対し、「この中から3つ以上取り組む」ように指示しました(以下「実施事業」と表記)。
 これは、「”事務改善に興味がない課”も事務改善に取り組まなければいけない」といった点において、画期的な取り組みであり、この取り組みによって、職員の意識改革の自己評価も向上につながったのだと思います。

 しかし、もし、この取り組みを民間企業が行った場合、「100件以上の事務改善案の中から3つ以上取り組む」という”出し惜しみ”をすることなく、「効果が期待できるものは全て実行する」ように指示すると思います。

 また、しばしば、職員の方々から、以下のようなことをお聞きします。
◆ 職員研修を受けた直後は、ほとんどの職員が「このままではいけない」と思って職場に帰るが、職場の理解を得られないうちにいつものような仕事をしてしまう。

 つまり、これまでの意識改革担当課の取り組みは、多くの職員に対し、「一時的な意識改革」を成し遂げていたのですが、「“意識改革した気持を継続させる職場”を創っていく」という点が十分ではなかったではないでしょうか。

 そこで、これらのことを踏まえ、以下のことをご提案いたします。

(1)「募集事業」・「実施事業」の見直し
<具体的な内容>
○ 募集事業
 これまでは・・・「やる気のある職員のみが提案していた」
 これからは・・・「全ての職員(または職場)が提案する」


○ 実施事業
 これまでは・・・「3つ以上取り組む」
 これからは・・・「取り組むことができないものを除き、全て取り組む」

 これらは、非常にシンプルな提案ではありますが、以下のような効果が期待できます。
<期待される効果>
○ 「全ての職員」が事務改善を考えるようになる。
○ 「毎年、全ての職員に提案させる」ことを繰り返すことにより、徐々に民間レベルに近い内容の提案ができるようになる。
○ それらの「良い提案」を全て、全職場に導入することになるため、職員の意識改革が飛躍的に向上する。
○ これらの取り組みについて、各職員の成果や感想を意識改革担当課や人事担当課が閲覧できる一方でその実行責任を所属長に付託することにより、所属長による「ごまかし」がきかなくなり、その結果、管理職の意識が変わる。
※ これらの取り組みは、既存のシステムを活用することにより、「事務局の負担がほとんど増えない」ことも提案の理由です。

(2)「意識改革担当課が担当している職員研修」の見直し
<具体的な内容>
これまでは
・研修の内容や感想を所属長に報告だけしていた。
これからは
・ 研修に参加した職員は、研修で得た知識を元に、所属長と業務改善策を協議する。
・ 所属長は、協議の中で「職場の業務改善につながる」と思われる内容を職場内で実施する。

<期待される効果>
○ 研修に参加した職員は、常に「自分の職場にはどのように応用すればよいか」を考えなければならず、研修に対する意気込みが違ってくる。
○ 所属長と職員のコミュニケーションが促進される。
○ 「研修による新しい知識」と「所属長の経験」を混ぜ合わせることにより、「これまでになかった新しいアイデア」を創り出すことができる。
※ これらの取り組みも、また、既存のシステムを活用することにより、「事務局の負担がほとんど増えない」ことも提案の理由です。

最後に・・・
 県職員の中にはどん欲なまでに新しい発想を追求する職員もいますが、残念なことに、その職員の数よりもかなり多くの職員が「これまでのやり方」に縛られています。
 これらの人を意識改革していくには、まず、「身近な業務改善」の中で「知恵を出す訓練」を行っていく必要があります。
 また、「現在の意識改革担当の職員だけでは業務量が多く、取り扱うことが困難」でございましたら、提案した責任を、その結果をもって果たしたいと思っておりますので、ご用命下さいますようよろしくお願いいたします。

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 これに対する知事からの返事は以下のとおりは以下のとおりだった。

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 メールをもらいありがとうございました。

 君の体調を心配していましたが、メールを読むと病気と闘いながらも、職員の意識改革はじめ県政の活性化のために日々真剣に考えていることがわかり、嬉しく思いました。

 また、そういった中で、自ら難病であるALS患者や家族を支援する活動にも頑張っていることも聞き感心していました。

  メールで提案してもらった「職員の意識改革」については、出来るものから実行できるようにします。

 今後とも、病気は大変だとは思いますが、決して無理をしないよう、職場での業務や自分自身がやりたいことを、奥様と子どもさんと協力しあいながら、頑張ってくれるようお願いします。

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 僕にできることは、日に日に少なくなってきているが、それでもこのような提案をした意味を、公務員である誇りを持ってがんばってほしいという気持ちを、理解してほしい。


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