僕が所属する係では、1人を除く全ての上司が異動になり、
今日から新しい上司が赴任してきた。
そして、その人達に、何気なく「この職場で使用するパソコンの設定の方法」をメールで送っ
たところ、なんの質問もなく、あっという間にその設定を終えてしまった。
「この人達はできるな」
そう思った瞬間、ずっと前に味わったことのある”ワクワク感”が込み上げてきた。
「この人達と税務に関する議論をしたら、いったいどんな改善策が出てくるのだろ
うか?」
そんな期待感が込み上げてくる。
また、「数年前にここの職場に勤務していた人」が再赴任となり、ここに数年間勤務し
ている人とこんな会話をしていた。
「以前、ここに勤務していたときは”課税に対するクレーム”が頻繁にあっていて、嫌な雰囲気だったなぁ。今もあんな雰囲気なんですか?」
「いや、去年は1件も”怒鳴り込んでくる人”はいなかったなあ。”クレームが
起こりやすい案件”の担当を設けたおかげかな?」
「え?誰がそんな”嫌な担当”のくじを引き当てたんですか?・・・それにしても、”クレー
ムゼロ”はすごいなあ。いったい担当は誰だったんですか?」
「・・・、そこに座っている人」
そう言って、僕を指さした。
思いがけない褒め言葉に驚きつつも、この1年間を振り返ってみた。
”クレームが起こりやすい案件”。
確かに、1年前までは、時々、課内に響き渡るような”怒鳴り声”が聞こえていた。
その
理由の1つは、「課税にならないだろう」と思って、わざわざ「担当職員が指示する関係書類」を提出しに来所したのに、そ
の”提出した書類”を根拠に「あなたは課税対象になる」と言われるためだ。
課税する立場からすると”課税の裏付け資料”が入手できて”審査請求”に備えることができるだろうが、納税者からすれば、わざわざ課税の根拠資料を提出するために呼び出された格
好になるため、「ふざけるな!!」と言いたくなるわけだ。
そこで、僕が担当になってからは、まずは電話をかけてもらい、そこで、課税
対象外になる可能性のある人だけ、関係資料を郵送してもらうようにした。
それでも「来所して説明したい」と言われる方には、「来所されても課税
になるかもしれません」と必ず言う。
このような対応に加え、さらに、関係する税金の法令や最高裁の判例の勉強をする。
しかし、それだけでは納得しない納税者も多く、何よりも、最初の電話の時の
対応が重要になってくる。
僕の場合、何度も「すいません」を連呼したあげく、「法律上は”課税”でも
納税者からみれば”理不尽”と思われる課税」については、「おっしゃるとおり。
僕も逆の立場だったら同じことを言いますよ」と意気投合する。
実際、僕が総理大臣になったら「改正したい税金」がいくつかあることも事実だ。
そんなやりとりをしているうちに、納税者から「やっぱり課税の対象になるん
ですね」とか「課税される理由がよく分かった」と言われ、その結果、「ふざけるな」
という人が1人もいなかった。
よく考えてみると、「当たり前のこと」をめんどくさがらずに、きちんと当たり前のように対応しただけで、何の自慢にもならないような気がしてきた。
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