季節はずれの”異動”

 

今日、仕事に行き、職場までの階段を上ろうとした時に足がすくんだ。

いつものことだが、足を上げようとすると階段に引っかかりそうで恐かったからだ。

「大丈夫。大丈夫。 今までも恐かったが1度も転んだことはないだろ?」と自分に言い聞かせながら、なんとか3階まで上ったが、その途端、なぜか、もう、”階段を 転ばないで上る自信”がなくなった。

そして、僕は 上司の席の前に立った。

「少しお話があるのですが。」
「これ以上は、3階まで上る自信がありません」

そこには、少し緊張している自分がいた。

「わかった」
上司はそう答えると、職場を出ていった。

それからしばらくして、「君は今日、1階の職場に異動することになったので、その準備をしてくれ。」

迅速な対応に優しさを感じながら、こんなことを考えていた。

「こんな状態では新しい仕事を覚えることができないだろうし・・・もう仕事ができなくなるのも時間の問題かな?」

僕は、今の職場を最後の職場と思って異動してきた。

そして、新しい仲間としのぎを削って頑張ろうとも思っていた。

「僕は昇級のために公務員になったわけではない」

異動の発表があった後、こう思うようにしていたので、降格のショックは無くなったはずだから、元々こうなる運命だったのだろう。

それに、人事担当課も「いつかこうなるだろう」と思っていたに違いない。

あいにく、異動した係には余っている席がなかったため、別の係に余っている席に座ることになった。

これも仕方がないこと。

でも、異動のお世話をしてくれる”隣の係の人”を横目に、そして、「気持ちだけは切れるなよ」という元同僚の言葉を耳に残しながら、これまで頑張ってきたことなどを思い出してしまい、なんだか泣きたい気持ちになっていた。

 

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