マスコミの取材

 

 「両足のないお母さん”ローズマリー”」の特集がテレビであった。

 ローズマリーは「同情を買うような内容にしないこと」を条件にいろんな番組の取材に協力しているそうだ。

 そんなある日のこと、ローズマリーがとあるテレビ番組に出演したあと、その番組を見ていた近所の子供達がローズマリーの周りに集まってきた。
 それを見ていた彼女の長男”ルーク”(7歳)は、お母さんのところにみんなが集まっていろんなことを質問してくると、「何で集まってくるんだよ!あっちに行けよ!」と言い、それでもみんなの質問に1つ1つ答えている”お母さん”にも腹を立て、ついに母親をおいて一人で帰ってしまう。
 そして、その日は、お母さんとは一日中口を利かなかったそうだ。

 あとで解ったことだが、彼にとって、ローズマリーはどこにでもいる”普通のお母さん”であり、そんな”普通のお母さん”に対し「足が無くて大変じゃないの?」と聞かれることが嫌だったようだ。

 そんな光景を見て、ふと、自分のことを考えてみた。

「子供達にとって、僕は”普通のお父さん”を演じきれているだろうか?」

 ローズマリーは、世の中の「両足のない人たち」に対し、「くじけちゃだめよ。いっしょに頑張ろう!」というメッセージを送るために、番組の取材に協力しているんだと思う。

 そして、僕も、患者の数が極めて少ないALS患者やその家族に対し「もう僕たちは一人っきりではない。お互いに頑張ろう!」というメッセージを伝えてくれるマスコミの方には、感謝しながら取材を受けている。

 僕の子供達は、まだ、4歳と2歳。

 その子供達がルークと同じ年齢になったとき、いったい、僕のことをどう思うだろうか?

 

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