工作室


2.AKI-H8(H8/3048)によるエレキー(メッセージキーヤ)の製作




 

2.3 ハードウェア

(1) AKI−H80の改造
AKI−H80には約4kBのRAMが搭載されていますが、秋月オリジナルのままではメモリ内容をバックアップする事が出来ません。メッセージキーヤーとして見た時、書き込んだメッセージは電源を切っても保持していて欲しいものです。また、移動運用時等ちょっとした電源断で設定値やメッセージが初期化されても困ります。
そこでH8/3048のハードウェアスタンバイを使ったRAMのメモリバックアップが出来るように改造します。(今回の製作の目玉です!)

AKI−H80を使った例はかなり多くの方のウェブページでも紹介されています。しかし、メモリバックアップする場合は外部にRAMを取り付けてそれをバックアップする方法が多くとられています。
今回のメッセージキーヤーとしては、内蔵された4kBものメモリが有れば十分で、わざわざI/Oポートを減らしてまでRAMを外部増設する必要は有りません。そこで、AKI−H80に改造を施し、単体でメモリバックアップ出来るようにしました。

オリジナルのAKI−H80では、通常動作時に約60mA、ハードウェアスタンバイ時に約17mAの消費電流が有りました。H8/3048のマニュアルによると、ハードウェアスタンバイ時にはCPU単体ではμAオーダの電流値のはずですから、17mAの大部分はRS232Cドライバが消費していることが考えられます。このままでは消費電流が大きく長時間のメモリバックアップは出来ません。
そこで、バックアップ時の電流値を下げるため、RS232CドライバをCPUとは別電源にする必要があります。よって、電源として、ON時(動作時)には5Vを供給しOFF時には電池からメモリ保持用の電圧を供給できるバックアップ電源と、ON時のみにRS232Cドライバ等に供給する非バックアップ電源の2つの系統を用意します。

また、CPUのモード設定端子(MD0,MD1,MD2)は、ハードウェアスタンバイ時にモードを変更してはいけませんのでバックアップ電源に接続し、リセット(RES)及びスタンバイ(STBY)は非バックアップ電源に接続します。
出来るだけ改造箇所が少なくて済むように、いずれの電源も外部に安定化部を設け、 バックアップ電源はオリジナルでは5V出力としている端子から、非バックアップ電源は、A-Vcc(CN2-10) とA-REF(CN2-11) 端子から供給する事としました。( 回路図

基板の改造箇所は3カ所のパターンカットと、2本のジャンパー線です。C5の+端子へ接続するジャンパー線は、C5のランドが小さく半田付けが大変ですので、C5の+リード線を長く残しておき、そこに接続しました。5VレギュレータICは取り外し、別に作成するI/O基板上に5V電源を作ります。5VレギュレータICをはずしたあとにはコンデンサを入れました。

改造後のハードウェアスタンバイ時の電流値はバックアップ用電池3Vを印加した時0.1μA以下でした。手直しや写真撮影のため暫く電池を外しても、コンデンサのチャージ分のみでバックアップされました。メモリバックアップ用の電源として単3乾電池2本を使用していますが、たぶん何年も持つ事でしょう。


部品面改造後(C5は外してあります)
 


部品面改造部説明図


パターン面改造後


パターン面改造部説明図


ジャンパー配線後


 


ハードウェアスタンバイ移行時(電源OFF時)のタイミングは、リセット(RES)の立ち下がりに対してスタンバイ(STBY)がLOWになるまでに10システムクロック以上(16MHz時には625ns以上)時間をおく必要があります。電源OFFにより電圧が約4Vに降下するとRESはリセットICの働きでLOWとなり、STBYは非バックアップ電源回路のコンデンサチャージによりその後数百ミリ秒でLOWとなるため、仕様は十分満足されメモリ内容を保持することが出来ます。ハードウェアスタンバイからの復帰時のタイミングは、仕様上はSTBYがHIGHの後RESがHIGHとなるまでに20ms以上必要ですが、実測では約30msでしたので仕様を満足しています。
 

(一応決まり文句を)
ここに紹介した改造事例は、私が個人的な興味によって行ったもので、動作、性能を保証するものではありません。もし同じ様な改造を行われる場合は「自己責任」において実施されてください。
 



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