工作室


6.アイドリングストップコントローラー




イントロ

スズキのソリオという車に乗っています。
省エネ機能としては、ハイブリッド搭載の最新車種ではなく、アイドリングストップ機能搭載の車種です。

このアイドリングストップは
1)車両停止時(速度0km/h)の時にエンジンを停止する
のみならず
2)減速時13km/h以下になるとエンジンを停止する
仕様となっています。

実際に乗っていて、このアイドリングストップには個人的にはいくつか不満が出てきました。
・徐行など車両を停止させない場合でも減速するとエンジンが停止する。
・信号待ちで停車する際、減速でエンジンが自動停止した後、
 惰性で走行しながら停止位置調整のためにブレーキ踏込量を減少させると再始動する。
・減速時エンジン自動停止後、車両停止直前に、停止時のショックを緩和するためにブレーキを緩めると再始動する。
・エンジン再始動直後に車両が停止するとエンジンが自動停止しない(ことが有る)。
・これらのことから、止めたくないときに止まる、止めたいときに止まらないと感じてしまう。

これらの不満は、専ら2)の機能に起因しています。
この2)の機能は燃費性能向上のためなのでしょうが、これが有るために、アイドリングストップ機能が煩わしく思えてしまします。
世の中には、アイドリングストップ機能を自動的にOFFにするためのパーツが販売されています。
しかしこのパーツでは、車両停止時のアイドリングストップも無効になり、宝の持ち腐れになってしまいます。

そこで、
1)の基本的なアイドリングストップ機能は残したまま、
2)の機能をキャンセルする
ことを目的としました。


機能

減速時自動停止の速度13km/h以下で、アイドリングストップの機能を動作させるようにします。

アイドリングストップの制御信号としては、ENG A-STOP OFF SW(エンジンオートストップOFFスイッチ)を利用します。
ENG A-STOP OFF SW(エンジンオートストップOFFスイッチ)は、押される度にONとOFFが交互に切り替わります。

減速時のアイドリングストップは、25km/hまで昇速したあとに機能するため、
昇速時22km/h以上でアイドリングストップ機能を止め、
減速時11km/h以下でアイドリングストップ機能を動作させます。

従って、昇速時22km/h、減速時11km/h通過時にそれぞれ0.5秒の信号を出力する様にしています。


車速検出

JISによると速度パルスは、60km/hの時637パルス/分あるいはその2倍、4倍、8倍のパルスとなっています。
国産の車は、ほぼ2倍または4倍となっているとのこと。ソリオは4倍でした。
今回の用途では、10〜25km/hの範囲で分解能良く計測する必要が有ります。
一定時間の中で車速パルス数をカウントする方法では、10km/h付近で1km/hの分解能とするためには
2パルス/回転の場合、サンプル時間2.8秒以上
4パルス/回転の場合、サンプル時間1.4秒以上必要になり、応答性が良くありません。

そこで、パルス数ではなく、パルス間隔を計測する方法としました。
この方法であれば、10km/h付近で0.14秒間隔で計測できます。


H/W


回路図



PICの16F628を使用しました。
16ビットカウンタを搭載していて、手持ちが有った為です。

車速パルス入力は、ダイオードとプルアップ抵抗で12V→5Vのレベル変換を行っています。
車速パルスの倍数は4倍固定でも良かったのですが、DIP.SWで設定できるようにしてみました。

出力は、トランジスタによるオープンコレクタのスイッチング回路です。
LEDは動作確認、デバッグ用のインジケータです。




S/W

車速パルスが入る毎に割り込みをかけ、タイマ1のカウント値を読み込みます。
内部発振(4MHz)とした場合、約0.5秒でカウンタがオーバーフローする為、
低速時(4パルス/回転の場合2.7km/h以下)の測定が出来ませんが、
10km/h以上が測定できればよいので問題ありません。
また、高速時例えば200km/hの時、4パルス/回転の場合、車速パルスは7msec間隔となります。
割り込みルーチンは約100ステップとして動作時間は0.1msecであり、十分余裕が有ります。

メインプログラムでは、現在の速度(周期)を監視して出力を制御します。
ノイズ等の影響を抑える為、二回連続して設定値になることを条件としています。

速度(周期)は16ビットで計測していますが、判別は上位バイトのみで簡易的に行っています。
20km/hの時、4倍パルスの場合で分解能0.6km/hですので十分と言えます。

ソースリスト

装着後の感想

希望通り、車両が止まっている時のみエンジンが停止するようになりました。
減速時の自動停止や再起動を煩わしく思うことがなくなり快適です。
起動停止の回数が減って、機器の寿命にはいい影響が有るのではないかと勝手に思っています。
燃費がどうなるのかが気になる点ですが、
走行条件やエアコン使用の有無等の影響の方が大きく、装着前後での変化は判らないレベルです。
燃費の違いは?


重要事項

ここに示した製作例は、車載用では無い部品を使用しております。そのため、振動等により動作不良を起こしたり破損する可能性があります。
更には万が一にも発火等の危険が無いとも言えません。同様の実験を行ってみようと思われる方は、これらのことを認識の上で、自己責任にて実施されてください。
車両への取付には、車の電装系の資料が必要です。車の関する知識も必要です。
車のトラブルは生命の危険に関わる場合があります。安易な作業は行ってはいけません。
本HPの内容を参考に行われた実験であって、その結果いかなる損害・障害等が発生した場合でも私は一切責任を持ちません。行ってみようと思われる方は、自己責任に於いて実施されてください。

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