闇夜の中一つの人影が、森の中を疾走していた。その人影は、腕の中に三人の赤ん坊を抱えていた。赤ん坊たちは、今自分たちが、どこにいるのか分からずぽかんと自分たちを抱えている人影を見上げていた。ふと、その人影が、こちらを見た。人影の目は、赤く大きく、人間ではないことを物語っている。
「もうすぐだ。安心しろ。」
人影は、そう言うと、崖を難なく飛び越えた。とその時、後ろから何かが、飛び掛ってきた。人の形をした、人間台の蜘蛛だった。蜘蛛は、人影に覆いかぶさるように襲い掛かってきた。
「くっ!!」
しかし人影は、それを簡単に少し体勢を崩しながらも蜘蛛の頭部を蹴り飛ばした。気持ち悪い音と共に蜘蛛の首が宙を舞った。人影は、崩した体勢をすぐに立て直すと再び全力疾走を始めた。
それから数分後、人影は、海岸に着いた。海岸には高速クルーザーがあり、一人の男が、手を振っていた。人影は、クルーザーのところに行き、赤ん坊を男に手渡した。
「よし。まずは、一安心だ。」
受け取った男は、そう言うと赤ん坊を見ながら顔をほころばした。
「安心しないでください、葛城さん。ここはまだ、敵地ですよ。」
「分かっているよ、豊星君。でもこうして、目的のものを手にいれたら、ついね。」
「気持ちは、分かりますけれども。」
人影は、そう言うと溜息をついた。
「さて、それじゃあ行こうか。六分儀・・・・・・いや、間違えた・・・碇君。クルーザーを出してくれ。」
男・・・葛城は、そう言いながら、中に入ろうとした。
タ―――――ン
銃声と共に葛城が倒れた。側頭部には、銃痕が、あった。
「葛城さん!!」
中にいた、碇ゲンドウが、外に出ようとした。
「来るな、碇さん!!」
人影は、ゲンドウを止めた。そして、すくっと立ち上がるとクルーザーから飛び降りた。
「豊星君?!何をするつもりなんだ?」
「碇さんは、この子達を連れて今すぐに逃げてください。俺が、奴等のアジトを攻め込んで奴等の気を引きますから。」
「無茶だ!君も一緒に・・・・」
ゲンドウが、そう言って外に出ようとした。
「奴等が、クルーザーを追いかけられる装備を持っている可能性が大きい中で遠距離用の武器をもっていない状態で一緒に帰るのは、愚の骨頂だ。大丈夫だ。俺は死なない。」
「しかし・・・・」
「行け!!碇!!」
人影は、碇のほうを見て一喝した。その目は、今まで見たことない恐ろしいものだった。
「・・・分かった。」
ゲンドウはそう言うと操縦桿を握りクルーザーを発進させた。別に人影の目が怖かった訳ではない。人影の意思の強さに動かされたのである。
クルーザーが、どんどんと離れていくのを見届けた人影は、森の方を向いた。森の中から蜥蜴の形をした人間が、出てきた。
「ココデコロシテヤルヨ、ウラギリモノノじぇのす。」
「悪いが、三下に負けるわけには、いかなくてね。」
この後、ゲンドウは、無事第三東京地下にあるNERVという組織に辿り着くことが出来た。それから、十四年間化け物は、襲ってこず、また、人影の生死も分からなかった
そして時は、2015年。
ピピピピピッ・・・ピピピピピッ
あるマンションの一室で目覚まし時計が、起床の時を告げる。時計の主である碇シンジ14歳、中学二年生を起こすためである。
「・・・・・・・ん・・・」
シンジは、いつもと同じようにベルを止めて、いつものように又、夢の世界へ旅立とうとしていた。もちろんそんな事が許される訳が無かった。
「ほら、シンジ。起きなさい!いつまで寝てるつもり?」
母である碇ユイが起こしにきた。もう三十の半ばを過ぎたのに外見は、二十代前半で止まっている。しかし、シンジは、まったく起きる気配が無く、逆に布団に潜ってしまった。
「もう・・・しょうがない子ね。」
ユイは、ふぅと溜息をつくとシンジの寝ているベットに近づき、布団をひょいっと少しだけめくるとシンジのおでこにチュッと軽くキスをした。
「うわああ!!」
自分にされたことに驚いたシンジは、飛び起きてユイに向かって顔を真っ赤にして怒った。
「かっ母さん!!毎回毎回何をするんだよ!」
「あら?なら、ちゃんと起きなさい。そしたらやめてあげるわよ。」
ユイは、そう言うと、うふふと笑いながら部屋から出て行った。
「・・・・・・ううう。」
シンジは、自分の母親からのキスにあそこで動揺してしまった自分に嫌悪しながらも着替え始めた。
「GOOD MORNING!ママ。」
「おはようアスカちゃん。」
シンジの隣の部屋では惣流アスカ・ラングレー14歳中学二年生が、居間で母親の惣流キョウコ・ツェッペリンに朝の挨拶をしていた。
「そうだった、アスカちゃん。今日もママ、帰りが遅くなるからね。」
「え?また?ここの所多くない?」
「ごめんね。ほら、シンジ君のお父さんと共同研究しているものが、後もう少しで完成するのよ。」
「ふーん。分かった。頑張ってね、ママ。」
アスカは、そう言うと小さくガッツポーズをした。
「ええ。もちろん。」
キョウコも答えるように小さくガッツポーズをした。
「・・・・・・行ってきます。」
玄関で綾波レイ14歳中学二年生が、そう言って学校に行こうとした。
「まちなさい、レイちゃん。お弁当を忘れているわよ。」
今の扉を開けて赤木ナオコが、弁当箱を持って走ってきた。
「あっ・・・・・・」
レイは、それに気付き、少し赤くなりながらもそれを受け取った。
「もう、駄目じゃない。三度の食事は、成長期の子供には、大切なものなのよ。今のうちにちゃんと栄養のとれたものを食べないといい女になれないわよ。」
「・・・はい。ごめんなさい、ナオコさん。」
レイは、ぺこりと頭を下げた。
「別に頭を下げるまでしなくてもいいのよ。それじゃ、いってらっしゃい。」
「はい。行ってきます。」
第三東京第二中学校の2-Aの教室では、ホームルームが、始まる前らしく生徒同士が、楽しく話し合っている。
「いやー、それにしても今日は、すがすがしい朝やな。」
生徒の全員が、夏服を着ている中、一人だけジャージを着ている、鈴原トウジは、顔面笑みを浮かべながら嬉しそうに言った。
「何処がすがすがしいのよ。こんなに曇っているのに。」
「何言うてんねん。阪神が勝った日は、例え台風が来ようとすがすがしい日なんや。惣流は、そんなんもわからへんのか?」
「あんたのことなんて分からなくても生きていけんのよ。だから、そんな無駄なことなんて覚える気なんてこれっぽっちもないわ。」
アスカは、そう言うと、ふんっと鼻を鳴らした。
「ちょっとアスカ。何喧嘩売っているの?やめなさいよ。」
「そうだよ、委員長の言う通りだよ。」
2-Aクラス委員長の洞木ヒカリとシンジが喧嘩になる事を気にして注意した。
「そんな事言っても無駄だよ。それで直るなら、今頃テロリストが、この世からなくなっているよ。」
「・・・同感。」
と、カメラと軍事オタクの相田ケンスケとレイは、すでに諦めたって感じでいた。
「上等やないかい!そんな言うなら、教えたるわ!阪神が、どんだけすばらしい球団かをな!耳の穴血ぃ出るまでかっぽじって心して聞けや!」
「はん!あんたの説教なんて地球が滅びても聞かないわよ。」
「いーや、聞かしたる。最後は、涙を流してもっと聞かせてくださいと頼み込むぐらいの素晴らしいやつをな!」
「あんたの口から出た言葉に誰が感動を覚えたりしますか!ド頭かち割って、中の脳みそごしごし洗って新品にして小学校から勉強しなおしてきなさい!」
「はあーい、お取り込み中悪いけど、ホームルームを始めたいんだけど?」
「「へ?」」
突然のシンジでもレイでもヒカリでもケンスケでもない声にアスカとトウジは、情けない声を同時にあげて、その声のしたほうを向いた。そこには、2-A担任の葛城ミサトが、にっこりと彼女お手製のハリセンを持って立っていた。
「あ・・・あははは。GOOD MORNINGミサト先生。」
「お・・・おはようさん、ミサト先生。」
アスカとトウジは、冷や汗をだらだらと流しながら挨拶をした。
「おはよう、アスカに鈴原君。みんな席についているのに、あなた達だけよ。いつまでも仲良くお喋りしていたのは。」
「えっ?だってシンジやヒカリが・・・」
そう言ってアスカは、シンジ達のいた方を見た。しかしそこには誰もおらず、皆席に戻っていた。
「この裏切り者!薄情者!」
「何言ってるの、アスカ。私が、何度も先生が来るって言ったのに、それを無視して鈴原と喧嘩していたんだから、自業自得よ。」
「そんなあ。冷たい事言わないでよ、ヒカリ。」
アスカは、情けない声をあげた。
「はーい、おしゃべりは、そこまで。今から、二人にはあの往年のハリセンギャグ、チャンバラトリオの再現をしてもらうわよ!」
そんな中、ミサトだけは、楽しそうに言った。
「あ〜あ。本当に朝から最悪だったわ。」
学校の帰り道、シンジにアスカ、レイは、トウジやケンスケ、ヒカリ達と別れて帰っていた。この三人は、同じアパートに住んでいるのである。
「あれは、アスカのミス。今後から、更生することね。」
「うるさいわね、レイ!あれは、鈴原が、悪いのよ!そのとばっちりを受けたのよ!あ〜、今思い出してもムシャクシャする!」
アスカは、そう言いながら、道端の空き缶を蹴り上げた。空き缶は、回転しながら宙を舞い、そして何かに撃ち落された。地面に落ちた缶には、5cm程の穴が空いていた。
「「「え?」」」
驚いたシンジ達は、キョロキョロと辺りを見回した。
「ドコヲミテイルノデスカ、イミゴタルえヴぁしりーず?ワタシハ、ココデスヨ?」
上のほうからの声にシンジ達は、一斉に見上げた。そこには、電柱の上に人型の何かがいた。それは、全身黒く、首というか、頭自体がなく、胸の所にお面のようなものがあった。身長は、二mぐらいである。
「な・・・何者よ、あんた!」
その者の異形な姿に怯えながらも、アスカは、怒鳴った。
「ナルホド。ジブンガ、ナニモノナノカモシラナイノカ。ダガ、ソンナモノカンケイナイナ。ココデシヌノダカラ。ジブンガ、ナニモノカモシラズニナ。」
異形の者は、そう言うと電柱を飛び降りながら、シンジに襲い掛かっていった。当然なのだが、シンジは、武芸の一つも知らない。当然何も出来ず顔を覆うぐらいしか出来ない。
「ぼさっとしてるんじゃないわよ!」
そんなシンジをアスカが、ドンと押し倒し異形の者の攻撃をよけた。しかし、異形の者は、すぐに、追撃を仕掛けてきた。今度は、逃げられない。その時、シンジは、自分の死を予感した。
(僕は、こんなところで死ぬのか?こんな訳の分かんない状態で、訳のわかんないのに。・・・そんなの嫌だ!僕は、まだ死にたくない!!)
シンジは、そう心の中で強く思った。
ドクン
シンジの心臓が、強く波打った。それと同時にシンジの体に異変が起きた。体が、発光し衣服が、すべて破れ散った。そして、皮膚の色が、紫を主とした物になっていき、肩から四角いでっぱりが、出できて、顔も鬼を思わせる物へと変わり、体も鎧のような物に包まれた。その姿は、敵を威圧するものだった。
「メザメタカ。」
異形の者は、そう苦々しく言った。一方のシンジは、自分の身に何が起きたのか分からないでいた。
「う・・・・・・うそでしょ、シンジ・・・・・・」
「碇・・・・・くん・・・・・・・」
アスカとレイは、その姿に恐怖を感じていた。
ドクン、ドクン
今度は、アスカとレイの心臓が、シンジの変身に反応したかのように強く波打った。そして二人もその姿を変えていった。アスカは、赤い四つ目の、レイは、青い一つ目の異形な姿に。
「そ・・・・・そんな。こんなの、うそだろ?」
「なんでよ・・・・・・・なんで私も・・・・・」
「・・・・・・・嫌・・・・・・」
三人は、動揺した。自分とお互いに。
そして戦いが、始まったのである。
「目覚めたのね。」
暗闇の中、一人の女性が、そう呟いた。その女性は、全身を黒衣に包み、透けるようなきれいな肌、黄金の輝きを持つ髪、深く澄んだ青い瞳をしており、とてもうつくしい。その女性の前には、シンジ達の姿が、ホログラムで映し出されていた。
「見せて頂戴、あなた達の力。そして、私の計画どうりに動いて。」
女性は、そう言うと愛おしそうに、シンジ達を見つめた。
黒い稲妻さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
冒頭から怪しげな雰囲気、謎の敵が登場してきました。
それから年月が経ち、シンジ君達の普通の生活ですね。みんな楽しい日常です。学校ではアスカちゃんが大爆発ですね(笑)シンジ君達も呆れています(^^;)
そして普通の日常が激変、シンジ君達の身に何が起こったのでしょうか、続きが気になりますね。
三人は変身して戦うのでしょうか?と感想を送りましょうね。
とっても素敵なSSをくださった黒い稲妻さんへの感想は掲示板かjun16に送ってくださいね。黒い稲妻さんに送っておきます。
皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!
投稿:改造人間エヴァンゲリオン 第一話 「日常に・・・・・・」