改造人間エヴァンゲリオン
第二話
「裁きを下す者」
僕の身に何が起きたのか、分からなかった。ただ、一つ分かった事は、自分が人間じゃない事。たったそれだけだった。
「ナンダ?ドウシタンダ?えヴぁしりーず?タタカワナイノカ?」
異形の者は、間を空けない素早い動きでシンジ達に攻撃を与え続けた。シンジ達は、その攻撃に対処できずに唯、顔を腕で守るだけである。しかし、シンジ達の装甲が厚いからかのか、ダメージは、ほとんどない。
「な・・・なんなんだよ、この状況は?僕は、一体何者なんだよ!」
「ナンダ、ソンナコトニナヤンデイルノカ?オマエタチハ、ウラギリモノダヨ!ワレラガ、シトノナ!」
異形の者は、そう言うと、シンジの頭部に強烈な突きを放った。シンジはそれをまともに喰らい、後ろに吹っ飛んだ。
「シンジ!!」
「碇君!!」
驚いたアスカとレイは、シンジに呼びかけた。シンジは、フラフラしながらもなんとか立ち上がった。
「ヤハリガンジョウダナ。シカシ、タタカエナイノナラナンノモンダイモナイ。オマエヲコロスダケダ。」
異形の者は、一息溜めを入れた後、シンジに向かって突進していった。
「うっうわあああああ!!」
シンジは、その突進に脅え、目を瞑ったまま思わず腕を突き出した。
グシャッ
肉を貫く嫌な音がした。シンジは、恐る恐る目を開けた。するとそこには、自分の腕に体を貫かれた異形の者の姿があった。腕には、異形の者の青い血がべったりとついていた。
「・・・・へ?」
シンジは、自分の目が、信じられなかった。
「うっ・・・・うわあああ!!!」
シンジは、自分の右腕を呆然と見つめた。そしてそれが、自分の腕であることが、信じられなかった。
「グフゥ。・・・ヤリヤガッタナ。ウラギリモノガ!」
シンジの一撃は、殺すまでのものではなかったが、異形の者に重傷を与えた。異形の者は、苦しみながらも、目から光線を撃ち放った。シンジは、それをモロに喰らい後ろに吹っ飛んだ。
「シンジ!!・・・この化け物!!調子に乗るんじゃないわよ!!あんたのそのふざけた格好にも、自分にも慣れたんだから!!」
シンジへの一撃に怒ったアスカが、この頃イケメン俳優の登場率の高い、この頃キックよりも他の攻撃で敵を倒すようになったマスクバイク乗り並みのとび蹴りを異形の者に決めた。
突然の奇襲に異形の者は、何の対処も出来ずにまともに受け、吹っ飛んだ。
「まだまだああああ!!」
アスカは叫びながら吹っ飛んだ異形の者に詰め寄りさらに顔面(?)に連打を与えた。
そして、異形の者の面にひびが入るとそこ目掛けて回転して勢いをつけたエルボーを叩き込んだ。すると面は、バキッと音を立てて割れた。その下からは、同じ様な面が出てきた。
「何よアンタ?マトリューシュカ?だとしたら、物凄く気持ち悪いマトリューシュカね!」
アスカは、そう言うと回し蹴りを腹部にクリーンヒットさせた。異形の者は、無様にごろごろと地面を転がった。
「グフゥ。サスガニマトモニタタカウノハムボウカ。」
「分かったんなら、さっさと私の前から失せなさいよ!」
「ソウダナ。サラバ・・・」
異形の者は、言い終わらないうちにスッと大跳躍で電信柱の上を走って逃げていった。アスカは、しばらくの間睨みつけていたが、思い出しかのようにシンジの元に行こうとして、固まってしまった。そこには、レイに膝枕をされているシンジがいた。
「あ・・・ありがとう、綾波。」
「いいわ・・・・・・別に。それよりも、体、大丈夫?」
「う、うん。ちょっと痛いけど、大丈夫だよ。」
「そう・・・・・・」
しかも、何だかいい雰囲気である。アスカの脳内では、第一種警戒態勢を知らせるサイレンが鳴り響いている。アスカは、急いで二人のところに行き噛み付きそうな勢いで喋りだした。
「ちょ、ちょっとそこの二人!この私が、あの訳分かんない奴を相手に孤軍奮闘を繰り広げて、しかも圧倒的有利な状況だったのにそんな私を無視してイチャイチャしていた訳?もう信じられない!アンタ達どういう精神構造している訳?ふざけんじゃないわよ!!」
「え?!・・・ア・・・アスカ?その、僕は別にそんなつもりは・・・・・・」
「アナタが、アレと戦っていたのだから・・・これ以外やる事がなかったから。問題は、ないわ。」
そんなアスカにシンジは、少しおびえながら、レイは、平然と答えた。
「なんですって?やる事がなかった?よくもまぁ、そんな事抜け抜けと言えたわね。その根性叩き直してあげようか?」
「アナタに叩き直されないといけないような根性なんて持っていないわ。それより問題は、私達のこの姿が、どうやったら戻るかという事だわ。」
「・・・じゃあ、どうすんのよ?とりあえず隠れる場所を見つけないとやばいわよ。他の人間に見つかったら、大騒ぎになるわよ。」
と、その時三人の目の前に一台の車が、ドリフトをしながら止まった。その車から、焦った表情のミサトが表れた。
「シンジ君!アスカ!レイ!私の車に乗って!!早く!!」
ミサトは、何の躊躇もなく三人を呼んだ。そこにいる三人に何の違和感を抱かせない、いつもどおりの感じで。
「え・・・ミサト先生?」
「ミサト?どうして私達が、分かるの?」
「・・・何故?」
一方の三人は、ミサトが自分達の事を分かった事に驚いた。面影など全くない、こんな姿の自分達を。
「それは、後で答えるわ。今は、ECSフィールドが、消える前にここから移動しなければいけないから。早く乗って!」
ミサトに言うがままに三人は、車に乗り込んだ。
「ところで、ミサト先生。どこに行くのですか?」
シンジの質問にミサトは、目を合わさずに答えた。
「NERVよ。」
訳が分かんないわよ、もう!いきなり変な奴は出てくるし、体が何かよく分かんない装甲に包まれちゃうし、終いにはミサトがいきなり現れてNERVに連れてかれるし、やんなっちゃうわよ!・・・でも、今確実に分かるのは、もう、元の生活に戻れないんだろうなということ・・・
「・・・リツコ先生?」
シンジ、アスカ、レイの三人は、NERVに着くと同時にある部屋に連れてかれた。そこには、保健医の赤木リツコ、レイの保護者、赤木ナオコの娘がいた。
「来たわね。それじゃあ早速プラグインを解除するわよ。まずは、ここに座って。」
リツコは、シンジの問いかけを無視して淡々と言った。
「ちょ、ちょっと待ってよ!なんでここにリツコがいるのよ!?」
「早く座りなさい。それともその姿が、気に入ったのかしら?」
これ以上質問しても答えが返ってこなさそうなので、三人は、律子の指示した椅子に座った。リツコは、片手に何やら液体の入ったビンを持ち、その液体を注射器を使って吸い上げた。
ちなみにリツコの手に持っている注射器は、インフルエンザ等の予防接種に使われる物の二倍はありそうなものだった。三人の、特にアスカから血の気がス―――ッと引いていった。
「・・・リツコさん。それ・・・使うの?」
「何を言っているの、レイ?使わないものを持つわけないでしょう。さあ、腕を出して。」
リツコは、そう言うと安心させる為かニコッと笑った。しかしその笑顔は、確実に三人に恐怖を与えた。
「リツコ・・・そのサイズしかないの?もっと小さいやつないの?」
「あるわよ。でも、それを使うと二回に分けてやらないといけないけど、それでもいいの?」
「・・・針の大きさだけでも・・・」
「ダダをこねてないで、腕を出しなさい。いつまでたっても終われないわよ。」
もう、覚悟を決めるしかない。そう決心した三人は、腕を前に出した。リツコは、頷くと三人に向かって地獄に突き落とすような一言を言った。
「血管の位置が分かんないから、2,3回刺し間違えるかもしれないけど、我慢しなさいよ。」
「うぐっ・・・・・・ひくっ・・・・・・・。」
「泣かないでよ、アスカ。・・・ね?」
シンジ、アスカ、レイは、注射を打たれて20秒後ぐらいに、また苦しみながらも全員無事に元の姿に戻った。
戻ったのは良かったのだが、問題は刺し直しの回数だった。レイは、運良く一回目でうまく刺さり、シンジも一回失敗したが、それだけで済んだ。問題は、アスカだった。アスカは、血管が細いという医者泣かせの体で、予防接種も二分の一の確率で失敗する。
しかも今回は、まず腕で六回失敗し、次は、首で二回失敗し、足の膝の裏で四回失敗し、最終的には、アキレス腱のところで三回の失敗の後、成功した。
成功したリツコは、清々しい顔をしたが、アスカは、プライドなど燃えるゴミの日にまとめて5袋殴り捨てて、泣いた。その姿は、5歳児と違わないものだった。しばらくの間シンジは、一生懸命アスカを慰めた。その隣でレイが、ボソリと言った。
「・・・・・・15回連続失敗。刺さる確率が50%の場合、16回目までかかる確率は、32768分の1。・・・・・・ギネスものね。」
「綾波、わざわざそんな事を言わなくても・・・もしかして、楽しんでる?」
「・・・・・・そこまで悪趣味じゃないわ。」
レイは、そう言うと本を読み始めた、逆さまで。余りにも分かりやすいので、シンジは、突っ込むことをやめた。
注射をした後、三人はリツコにここで待っていて欲しいと言われ、かれこれ5分ぐらい待っている。とその時、部屋の扉が開いてゲンドウとユイ、キョウコにナオコが、入ってきた。しかし、その表情は、どことなく不安を感じさせるものだった。
「父さん。あの・・・」
「大変だったな。」
ゲンドウ達の表情にたまらず口をあけたシンジにゲンドウは、口を挟む形で制した。
「今日の事は、悪夢だ・・・といいたい所だが、そういう訳にはいかない。今から、きちんと説明しようと思うが、その前に言っておくことがある。シンジ、レイ、アスカ。お前達は、私達の子供ではない。さらに言うと、今回襲ってきた奴らの兄弟だ。」
・・・・・・予想していた、それ位の事。・・・・・・分かっていた、それ位の事。体が、あのように変化した時に。・・・・・・でも、・・・・・・悲しい・・・・・・。
「なっ何言ってるんだよ、父さん。」
「冗談ではない。お前達は、14年前に今日お前達を襲ってきた奴らのアジトから、奪取してきた、奴らの仲間だ。」
「そっそんな・・・・・・」
シンジは、愕然としてそれ以上何も言えなくなった。すると今度は、レイが口を開いた。
「・・・・・・それじゃあ、私達を騙していたって事?」
「いいえ、そんなつもりはないわ。それに私達は、あなた達を我が子同然のように愛情を持って育てたわ。」
レイの言葉にユイは、すぐに言い返した。
「でもそれは、敵の抑止力としてでしょう?私達を奪ってきたという事は、それを目的としてでしょう?」
「そんなつもりは、ないわ!!証拠にあなた達に彼等の事を教えなかったでしょう?彼等と係わり合いを持たせない為に!」
「そんなの分からないわ。だって、話そうとしようとしていた時期よりも早く襲ってきた可能性もある。それに、本当に係わり合いを持たせないようにする為なら、14年前に殺している筈だもの。だって、下手したら、敵側に付く可能性のある物を生かしている筈がないわ。」
ユイは、言い返す事が出来なくなった。実際にそうだったから。黙ってしまったユイに対してレイは、冷たい視線を向けた。そして、その目線を周りの大人にも向けていった。そして、それに続くようにアスカが、ボソッと呟いた。
「そうなんだ・・・・・・そんな目で私達を見ていたんだ。」
「違う!!そんな事は、ないわアスカちゃん!!」
「アスカちゃんなんて呼ばないで!!あんたは、私の親じゃないんだから!!・・・・・・どうせ、他の呼び方があるんでしょう?sample−01とか、RX−78とか?そして、互いに報告しあっていたんでしょう?どれだけ成長したのか、モルモットのように!!」
「そんな事ないわ!!」
キョウコは、思いっきり否定した。しかし、アスカは、疑いの目を向けたままだった。
「・・・・・・最低だ・・・・・・最低だよ、こんなの。」
黙っていたシンジが、ようやく口を開いた。
「結局僕達は、そういう存在だったんだ。戦闘専用兵器。」
「・・・・・・御免なさい。でも、聞いて。どうしても私達にはあなた達の力が、必要なのよ。だから・・・」
ナオコは、すまなそうな表情をしながら弁明しようとした。しかし、逆にそれが、シンジをキレさせた。
「そんなの関係ない!!結局僕達を兵器として見ているんだから!!敵から奪ってきた、兵器として!!」
と、その時部屋のドアが開き、ミサトが入ってきた。ミサトは、シンジ達のそばに行くと、何も言わずに三人の頬をビンタした。ビンタされた三人は、一瞬何をされたか分からなかったが、5秒ぐらいしてようやく理解し、ミサトに文句を言おうとして止まってしまった。
叩いた本人であるミサトが、ボロボロと涙を流しながら、三人を睨んでいた。
「・・・・・・御免・・・・・・私が、悪いわね。」
ミサトは、そう言うと、頭を切り替えるように頭を振り、震えている右手を左手で押さえた。
「・・・・・・でも・・・・・・今のあなた達の言葉聞いてると悔しくて・・・・・・悔しくて・・・・・・」
「ミサトちゃん・・・・・・」
そんなミサトの肩にナオコは、ポンッと手を置き、ミサトの体をぐいっと自分のほうに引き寄せた。するとミサトは、我慢していたのを吐き出すように声を上げて泣き出した。一方シンジ達は、何がなんだか分からず、困ってしまい黙り込んでしまった。
「・・・・・・さて、シンジ、レイ、アスカ、昔話を聞いてもらおう。何故、私達が、敵の事を知り、どうやってお前達を連れてきたのかを。」
さっきまで黙っていた、ゲンドウが、口を開いた。それに対し、シンジ達は、何の反論もしなかった。
「グフウ・・・・・・モウスグ、モウスグダ。・・・・・・モウスグデ・・・・・・ツク。」
先程の異形の者は、暗い通路を歩いていた。出血が、思っていたよりも多かったらしく、もう、息絶え絶えである。
「どうしたんだい、サキエル?随分とやられたみたいだね?」
「!?たぶりすカ?!」
不意にかれられた言葉に異形の者・・・・・・サキエルの体が、強張った。そして、辺りをキョロキョロ見回すと頭上に一人の美少年が空中に立っていた。身長は、シンジより高いぐらい。スラッとした体で、髪は銀色、赤い瞳に大きめの口、ジャニー○に入っていてもおかしくない風貌である。
「駄目じゃないか。ちゃんと倒してこないと、あれだけ豪語したんだから。・・・・・・嘘は、いけないね?」
「ウルサイ!!ツギコソハ、コロシテクル!!」
サキエルは、そう言うと去ろうとした。しかし、美少年・・・・・・タブリスは、微笑みながら、サキエルの明日を奪った。
「悪いけど、我等が女王イヴ様は、失敗する奴は、いらないってさ。」
「ナニ!!」
サキエルは、タブリスの言葉に愕然とした。
タブリスは、そんなサキエル目掛けて手を振った。すると、サキエルの体が、オレンジ色の八画形のバリアみたいなものにより真っ二つに切られた。
「・・・・・・嘘だけどね・・・・・・邪魔だったんだ、僕の計画に君は。だから、上には、エヴァシリーズに殺されたと報告しとくよ。」
タブリスは、にっこりと笑いながら言った。・・・・・・そう、にっこりと。
黒い稲妻さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
冒頭から怪しげな雰囲気、謎の敵が登場してきました。
突如現れた異形の者がシンジ君達に襲い掛かりますが、不思議な事に撃退する力があり驚きます。
注射を打たれて泣くアスカちゃん、十六回も打たれれば泣いてしまいますね(^^;)
そしてゲンドウから衝撃の発言が、実の親子ではなく、異形の者が兄弟である事・・・これはシンジ君達はショックですね。
微笑んでいるタブリス、シンジ君達とは仲良くなれそうにはない雰囲気ですね。
タブリスの目的が気になりますと感想を送りましょうね。
とっても素敵なSSをくださった黒い稲妻さんへの感想は掲示板かjun16に送ってくださいね。黒い稲妻さんに送っておきます。
皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!
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