改造人間エヴァンゲリオン

第四話

「決意」


Made by 黒い稲妻



翌日の体育の時間、シンジ達のクラスは、バトミントンだった。体育教諭の加持リョウジは、生徒達にスマッシュの打ち方を教えていた。

「・・・とまあ、こんな感じだ。じゃあ、各自に練習を始め。」

リョウジの号令に生徒は、バラバラに散らばった。

シンジ、トウジ、ケンスケの三人は、黙々とただ練習していた。シンジは、その日の朝、トウジとケンスケに自分が人間じゃない事、昨日ゲンドウから教えてもらった事を話した。それを聞いたトウジとケンスケは、何もしゃべらずいた。そんな、暗い雰囲気を打ち破るようにトウジが、口を開いた。

「・・・・・・ああ、やめやめ!なんか、アホらしゅうなってきたわ。」

「な、何を突然言い出すんだよ、トウジ?」

驚いたシンジは、スマッシュをミスし、羽根がシンジの頭を直撃した。

「ん?さっきまでシンジの言った事考えてどう励まそうと考えとったけど、ムリや。ワイそんな気の利いた事出来へん。そんなこと出来るんだったら、もっといい成績取れとる。やっぱ、今までどおりの付き合い方しか出来へん。センセもそれでええやろ?変に気い使われるよりも楽やろ?」

「・・・・・・トウジ・・・・・・」

トウジなりのやさしさにシンジの胸は、熱くなった。

「それにセンセが、丸っきり違う人になった訳でもないし。なあ、ケンスケもそう思ってるやろ?」

「・・・やっぱりトウジは、単純だな。でも、俺も同じ考えだよ。今までどおりにやっていこう・・・ていうか、その変身した姿をいつでもいいから撮らせて!変な雑誌とかに送ったりしないから!」

ケンスケは、そう言うと何処から取り出したのか、手にはデジカメがあった。

「それにいざとなったらこのワイが、センセの事守ってやるから、安心せい。」

トウジは、そう言うと自分の胸をドンと叩いた。そんな、いつもと変わらない二人を見たシンジは、うれしくなった。シンジは、二人にお礼を言おうとしたら、後ろからリョウジの声が飛んできた。

「おーい、そこの三人!サボっているのなら、トラック10周させるぞ!」

「あかん!はよ練習に戻らなあかん。ほな、センセ。いくで!」

「え?!ちょっと待ってよ、トウジ!」

「もたもたしていたら、先生に怒られるよ。」

三人は、慌てて練習を再開した。




授業が、終わった後次の時間授業がないリョウジは、屋上で柵に腕を付いてタバコを吸っていた。その表情は、今の空模様と同じように晴れ渡っていた。

「機嫌が良いようですね、アダム。」

「・・・・・・だとよ、アダムさんよ。」

後ろからの声にリョウジは、振り返らずに答えた。

「分かりましたよ。加持リョウジさん、こう呼べばいいんですね。」

リョウジの後ろ立っていたタブリスは、肩をすくめながら言った。

「加持でかまわないよ。・・・んで、タブリスは、なんて名乗ることにしたんだ?」

「渚カヲルです。・・・この中学に来週転校してくる渚カヲルといいます。よろしくお願いします、加持先生。」

タブリスは、そう言うとリョウジに向かって頭を下げた。リョウジは、タバコを消すと振り返った。

「おう、よろしく頼むよ、渚カヲル君。・・・・・・そして真実をきちんと見てくれることを祈っているよ。」

「そのつもりです。それでは、今日はこのへんで。」

タブリスは、そう言うと出入り口に向かって歩き出した。そしてドアノブに手をかけたとき首だけ振り返らした。

「そういえば、今日シャムシエルが、エヴァシリーズを襲いますよ。どうしますか?」

「・・・・・・どうもしないよ。」

リョウジは、素っ気無くそれでいて自身ありげに答えた。それを聞いたタブリスは、満足そうに頷いた。






「ふーん。鈴原とケンスケにも話したんだ。」

学校の帰り道、シンジ、アスカ、レイは、一緒に帰っていた。この後NERVに行くから三人で行こうというシンジからの提案に二人が了承したからである。

「うん。なんか黙っておいて、後でばれるよりか気持ち的に楽だと思って。それにケンスケやトウジには、本当のことを知っておいて欲しいなと思ったから。」

「あっそ。まあ、せいぜいあの二人が、他の人にばらさないように注意してなさいよ。」

「大丈夫だよ。トウジ達は、そんな簡単にばらしたりしないよ。それで、綾波やアスカは、誰かに言ったの?」

「私は、ヒカリだけよ。」

「・・・・・・誰にも。」

「誰にもってあんた、ほんっっっっとに友達いないのね。」

アスカは、そういうと少し馬鹿にしたような目でレイを見ながら言った。

「・・・・・・あなたには、関係ないわ。・・・私、人と付き合うの苦手だから。」

「・・・将来苦労するわよ、それじゃあ。人付き合いは社会の基本よ。」

「大丈夫・・・・・・なんとかなるわ。」

「・・・あんた、結構楽天家なのね。」

と、三人は、話ながら、歩いていた。

♪FLY ME TO THE MOON・・・♪

突然着ウタが鳴り出し、アスカは、鞄から携帯を取り出すと通話ボタンを押した。

「もしもし、ミサト?・・・・・・え?・・・・・・うん分かった。大丈夫よ。何とか出来るって。・・・・・・任せなさいよ。・・・・・・じゃあね。」

アスカは、そう言うと携帯を切った。すると、シンジが、少し緊張した面持ちでアスカに尋ねてきた。

「ミサト先生から?」

「そう、ECSフィールドを観測したんだって。もうすぐここに使徒の戦闘員が来るわ。・・・これは、チャンスよ。」

「チャンスって・・・何が?」

するとアスカは、目をキラキラ輝かせながら、答えた。

「この、無敵にして可憐で美しい、アスカ様が、敵を華麗にやっつける事が、出来るって事よ。昔から、憧れていたのよね。セイラームーンとかキューティーハニーとか、タックルとか。」

「・・・ねえ、アスカ。・・・その、タックルって何?セイラームーンとかは、なんとか分かるんだけど。」

「はあ?アンタバカ?タックルも知らないの?タックルっていうのは、仮面ライダーストロンガーに出てくるヒロインの岬ユリ子の変身後の名前よ。」

「仮面ライダーストロンガーって・・・アスカ、本当は今何歳?」


シンジは、アスカに少し呆れながらツッコミをいれた。すると何を考えたのか、レイが、シンジのツッコミの返事をした。

「仮面ライダーストロンガーが放映していたのが、1975年4月5日から同年の12月27日で、テレビの内容を理解していたと考えると、最低でも42,3歳になるわ。つまり、オバサンね。」

「なんでアンタがそんな詳しい数字を知ってんのよ!しかも、私は、オバサンじゃないわ!まだまだ、オバサンとは程遠い花も恥らう14歳の乙女よ。オバサンは、どちらかって言うとミサトやリツコの事をいうのよ!」

アスカは、レイを指差しながら大きな声で言った。すると、またレイが、ボソッと言った。

「花も恥らう?どちらかといえば、花がしおれたのほうがしっくりくるわ。」

「誰がしおれたですって?!喧嘩売ってるの!?」

レイの言葉にイラついたアスカは、レイにガンツケしながら詰め寄った。シンジは、慌ててアスカを止めに入った。

「アスカ!今は、そんな事をしている時じゃないって。いまのうちにエヴァンゲリオンに変身しないと!」

「何言ってるのよ!ヒーローは、敵が姿を現してから変身するのよ。だから、このまま待つのよ。」

「そんな悠長なこと言ってる場合じゃ・・・」

「ソノトオリ。ソンナカンガエヲモッテイルヤツゴトキニセッシャハマケヌ。」

突然上空から声が聞こえてきたのでシンジ達は、上の方を見上げた。そこには、しゃもじのような形をしたワインレッドの物体が宙に浮かんでいた。

「出たわね、使徒の戦闘員!!このアスカ様が、見事に葬ってあげるから覚悟しなさい!」

アスカは、そう言うとビシッと指を突き出した。

「セッシャノナハ、しゃむしえる。さきえるノカタキヲウツ!」

「サキエル?誰よ、それ?」

「ワスレタトハイワセヌ!キノウキサマラニコロサレタワレワレノドウシダ!」

「・・・・・・あれ?あいつあれぐらいで死んだ訳?・・・ショボ!!」

アスカは、驚いて思わずそう口走ってしまった。その一言に使徒の戦闘員・・・シャムシエルは、激昂した。

「キサマラニワガドウシノコトヲブジョクサレルスジアイナシ!ココデセイバイイタス!!」

シャムシエルは、そういうと両腕から鞭のような光っている腕を出した。

「はん!鞭を使うなんてますますヒーローものの敵役っぽくなってきたわね。いくわよ、シンジ!綾波!プラグインよ!!」

アスカは、そう叫ぶと鞄から卵を半分に切ったようなものが両端に付いたカチューシャのようなものを取り出した。

「うっうん。分かったよ。」

「言われるまでもないわ。」

シンジとレイも鞄の中から同じようなものを取り出した。唯一の違いと言えば、シンジとレイのは白いのに対してアスカのは、赤い事だ。これは、唯単にアスカが赤いのがいいと赤く塗ったから出来た違いである。

「レッツ、プラグイン!!」

「・・・・・・プラグイン。」

「・・・・・・」

アスカは、大きな声で叫びながら、シンジは恥ずかしそうに小声で、レイは、無言でカチューシャを頭につけた。すると三人の身体が輝きだし、しばらくして輝くのが収まるとそこには、エヴァンゲリオンに変身した三人が立っていた。先ほどのカチューシャは、シンジ達が、変身するのに必要なものだったである。この前変身できたのは、自分の身に危険が起きた時に自己防衛としてプログラム的に変身したのであった。

変身したアスカは、突然シャムシエルを指差すと大声で次の台詞を言った。

「体を飾るは、正義に燃える灼熱の真紅!悪を貫く一筋の閃光!努力根性のエヴァンゲリオン弐号機、正義の名の下に只今見参!」

アスカは、そう言い放った後、自分のかっこよさにじーんと痺れていた。一方シンジとレイは、そんなアスカの姿を腫れ物を見るような感じで見つめた。そんな目線に気付いたアスカが、不機嫌になって言った。

「・・・何よ?何か文句あるわけ?」

「・・・うーん、文句って言うか・・・」

「そのアホみたいなセリフを私達にも言わせるつもり?」

シンジが、アスカの質問に答え憎そうにしているとレイが、隣からレイが、何のためらいもなく言い放った。


「当たり前でしょ。正義の味方のヒーローなんだから、それぐらい言えなくちゃヒーローとして失格よ。」

「・・・私達ヒーローじゃない筈・・・」

「何言ってんの。悪の組織に改造された人間が、その組織に歯向かうんだから、十分ヒーローと名乗って問題ないはずよ。」

と、アスカは、仮面ライダーは正義の味方理論(この頃のライダーには当てはまらない)を堂々と語った。

「でも例え百歩譲って私達が正義の味方のヒーローだとしても、あんなセリフをいう必要は、ない筈よ。仮面ライダーでもあんなセリフをはくのは、ストロンガーぐらいだし、その他のヒーローを見ても、同じようにあんな長ゼリフを言うのは少ないはず。」

「あんたバカァ?それは、他のやつらが単なる熱血バカであんな粋で素晴しいセリフを言えるほどの知能を持っていないだけの話よ・・・・・・もういいわ。さきにあいつを倒してからゆっくり話しましょう。」

アスカは、そう言うとシャムシエルを指差した。

「ヤレヤレ、ヤットタタカウキニナッタカ。イツマデチャバンゲキガツヅクノカトオモッタゾ。サテ・・・サッサトオワラシテヤル!!」

シャムシエルは、急降下してきてシンジに体当たりをしてきた。シンジは、それを間一髪でかわした。シャムシエルは、地面に激突し土煙が舞った。

「はん。いきなり地面に濃厚なキスをするなんて、よっぽど地球が大好きなのね。」

アスカは、そう言うと鼻で笑った。しかし、次の瞬間土の中から光る鞭のようなものが、アスカに襲い掛かってきた。アスカは、それを何とかギリギリかわした。

「なかなかやるじゃない。なら、こっちも。パレットライフル!!」

アスカは、そう叫ぶと天に向かって手を突き出した。

するとアスカの手目掛けて銃が、飛んできた。もちろんこの銃は、何にもないところから取り出せるような便利な銃ではない。

実は、ECSフィールドが確認されたと同時にミサトが、発進させていた無人ヘリから射出されたものである。

このヘリは、シンジ達の上空に待機し、さっきアスカがしたように武器名を叫びながら手を天に突き上げると、その手目指して武器を射出するのである。

しかもこのヘリは、あらゆるセンサーに引っ掛からず、また視認が不可能なように光学迷彩が、施されている。

銃を受け取ったアスカは、襲ってきた触手に向けて引き金を引いた。ライフルの弾は、触手に当たったものの弾かれてしまい損傷自体は、なかった。

「チッ。やっぱり威嚇ぐらいにしかならないのね・・・」

アスカは、そう言いながらもライフルを撃ち続けた。

「銃器が効かないなら、至近距離からの刃物による攻撃をするべき。」

レイは、そう言うと肩からプログレッシブナイフを取り出し構えるとシャムシエルに向かって突っ込んでいった。

シャムシエルは、向かってくるレイに向かって触手を伸ばしてきた。レイは、それを難なくかわし、そしてシャムシエルを斬りつけた。シャムシエルの表面に一筋の切り傷をつけた。

「ムゥ。セッシャニキズヲツケルトハ、ナカナカヤルナ。」

「いいえ、傷なんかじゃ終わらせない。倒してみせる。」

レイは、さらにプログレッシブナイフを両手で持つとシャムシエルのコアを突き刺そうとした。

しかし、シャムシエルは、それをなんとか後ろに下がってよけた。レイからの一撃を避けた事により、シャムシエルの心の中に若干の余裕が生まれた。しかし、それが命取りとなった。

「そこだあ!」

気付かれないようにシャムシエルの後ろにまわりこんだシンジが、プログレッシブナイフをシャムシエルの背中に向かって突き出した。

シャムシエルは、シンジの事を忘れかけていた事も手伝ってシンジの攻撃を避けきれず、背中にプログレッシブナイフが、突き刺さった。

「クッ・・・ウシリカラトハ、ヒキョウナリ。」

「はん!勝てば官軍、負ければ賊軍!つまり、勝っちゃえば、多少の卑怯も許されんのよ!」

アスカは、そう言いながら、プログレッシブナイフのせいで気が後ろに向いていたシャムシエルにスッと近づくと自分のプログレッシブナイフをシャムシエルのコアに突き刺した。シャムシエルは、ビクンと痙攣したあと、爆発した。




こうしてシンジ達の初戦は、勝利に終わった。





「・・・で、これ何?」

シャムシエルとの戦闘から2時間後のミサトの事務室。机の上に積み立てられた書類を指差しながらミサトは、リツコに言った。リツコは、涼しい顔でサラって言った。

「始末書。」

「私、何にもやってないわよ。」

「レイ達が、使徒の戦闘員と戦った時にいろいろと壊しちゃったでしょ。その始末書。」

実は、最後の爆発の時にその爆風でいろいろな物が、壊れてしまったのである。その他にも跳弾したパレットライフルの弾が、いろいろな物を傷付けてしまったのである。

「で、何で私の机の上に?」

「あなた、あの三人の責任者でしょ。だからあるのよ。」

「・・・・・・あの子達に手伝わせちゃダメ?」

「倍になって返ってくるわよ。」

「・・・・・・」

ミサトは、ため息をつくと、椅子に座り始末書を泣きながら処理し始めた。






 黒い稲妻さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜

 物語は十五年前の事件から始まりました。

 邪悪な雰囲気が漂うタブリスことカヲル君、こんな性格ではシンジ君に嫌われそうですね(^^;)

 アスカちゃんは変身でノリノリ、ヒーローの素質十分です。三人による息の合った攻撃で使徒を撃退、初勝利ですね。

 かわいそうなのはミサトさん、お疲れ様です(^^;)

 ミサトさん、始末書処理頑張ってと感想を送りましょうね。

 とっても素敵なSSをくださった黒い稲妻さんへの感想は掲示板かjun16に送ってくださいね。黒い稲妻さんに送っておきます。

 皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!


SSroom_6 第三話

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