改造人間エヴァンゲリオン
第三話
「エヴァ、奪取」
15年前、その男は、現れた。人類を救うために。
2000年の六月。その日は、雨が降っていた。ユイとゲンドウは、勤め先のゲヒルンからの帰りだった。結婚してまだ一年も経たない新婚だった。時間は、9時過ぎで、辺りには、人が少なかった。
二人は、その雨の中を駅から歩いていた。車で通うよりも電車のほうが、何かと便利だったからである。
「今日もまた遅くなってしまったわね、あなた。」
「ああ。」
二人は、それぞれ傘をさしていた。ゲンドウは、黒のユイは、薄いピンクの花柄の。
と、その時二人の目の前に二人の男が現れた。二人とも屈強な体の全身黒ずくめで黒いマスクをかぶっていた。そのうちの一人がズボンのポケットからバタフライナイフを取り出した。そしてそれをゲンドウ達に突きつけた。
「おい、そこの!金出せや。」
「自分の身がかわいかったら、言うこと聞けや。」
しかし、ゲンドウは、臆することなく言った。
「断る。お前らに払う金は、持ち合わせていない。」
すると、黒ずくめの男の片方が、青筋を浮かべた。
「なんやとおいコラ!!」
驚いたユイは、慌てて二人の間に入った。
「ま、待ってください。お金なら払いますから。」
「ユイ!」
「黙って、あなた。こういう人達とは、お金を払ってしまえばいいんですから。」
ユイは、そういうと財布を取り出した。それを見た二人組みは、ニヤニヤと笑い出した。一方のゲンドウは、納得がいかなそうな顔をしていた。そして、ユイは、有り金を全部二人組みに差し出した。二人組は、それを受け取ろうとして後ろに10mぐらい吹っ飛ばされた。
一瞬何が起きたのかそこにいた四人は、分からなかった。しかし、よく見るとさっき二人組の立っていたところの少し後ろぐらいのところに一人の青年がずぶ濡れで立っていた。身長は180より上ぐらい、六月なのに黒いロングコートを羽織っており、黒の手袋に黒い靴、黒の学ラン風の服を着ている。
顔は、少し釣り目がかった目が、少しきつい印象をあたえている。髪は、黒く生徒手帳に載っていそうな標準的な髪型である。その青年の瞳は、夜だからなのか本当に黒く、生気が感じられない。
「な・・・・・・なんだよ貴様は!!」
二人組の片方が、現実に戻ってきて青年を怒鳴った。すると青年は、二人組に対して手を突き出した。その手は何やら緑色の液体が、びったりと付いていた。
「さっき・・・・・・殺してきたばかりだ。ついでに・・・殺されるか?」
青年の言葉には抑揚がなく、不気味で手についている液体が、それをいっそう際立たせた。恐ろしくなった二人組は、ひいいっと情けない声をあげて逃げた。二人組が、逃げるのを確認すると青年は、どさっと崩れ落ちた。
「大丈夫?!」
驚いたユイは、青年に近づいて体を揺すった。青年は、気を失っているらしく反応しない。
「あなた、この子を担いで!」
「何故だ?そんなどこの誰だか分からん奴を。」
「さっき助けてもらったでしょう。さあ、早く!」
ゲンドウは、納得いかないらしいが、ユイに反対できずに渋々背負った。
そして、約五分後家に着いたユイは、ゲンドウに青年を洗面所に移動させた。そして青年の服を脱がした。青年の体は、筋肉質でまるでプロボクサーなどの格闘技をやっている人の体だった。ユイは、そんな青年の体をごしごしとバスタオルで拭いた。拭き終わると青年をソファーに移してタオルケットをかけた。
「う・・・・・・ん?・・・」
かけたと同時ぐらいに青年が、目を覚ました。
「あっ、目が覚めた?」
「・・・・・・ここは?・・・・・・あなたは、誰だ・・・・・・?」
「私は、碇ユイでここは、私の家。ありがとう、さっき助けてくれて。でもびっくりしちゃったわ。いきなり倒れるのだから。」
「・・・・・・迷惑を掛けたのか・・・すまない事をした。」
青年は、そう言いながら体を起こした。
「それで、あなたの名前は?」
「俺の名前・・・・・・GENOCIDE・・・GENOCIDEと豊星ユウスケ、二つの名前がある。好きなほうで呼んでもらって構わない。」
「GENOCIDE?ふざけた事を言うな。GENOCIDEとは、民族大虐殺という意味だぞ!」
青年の言葉にゲンドウは、明らかな不信感を示した。しかし、青年は、こくりと肯いた。
「そうだ。『人類』という『民族』を虐殺する為の存在。また、裏切り者の仲間を狩る存在。豊星ユウスケは、潜伏する時に使う予定の名だった。」
「『人類』という『民族』を虐殺する?潜伏するときの名?一体何を言い出す。」
「俺は、人を救う為に世界征服を目論む組織・・・『使徒』から抜けてきたんだ。」
青年・・・ユウスケは、真面目な顔で言った。しかし、その内容は、信じられるような内容ではなかった。思わずゲンドウは、鼻で笑ってしまった。
「人類を救う為に世界征服を目論む組織から抜けてきた?荒唐無稽だ。お前は、仮面ライダ○の真似をしているのか?馬鹿馬鹿しい。」
「それで済むなら、良かっただろうな。だが、現実には起きているんだ。その証拠が、この俺だ。なら、さっきの事が、普通の人間に出来るか?あの男達を後ろに投げ捨てる事が?」
そう言われて、ゲンドウは、はっと気付いた。そうである。ユウスケは、あの男達を投げ捨てたのである。男達の体重は、軽く見積もっても一人100kgは、あった筈だ。つまり二人で200kg。それを後ろに10mも放り投げたのである。どう考えても・・・
「常人なら出来る筈がない。どう考えても
バケモノ
しか出来ない。違うか?」
ユウスケは、バケモノを誇張しながら言った。そして、その瞳が、黒から猛禽類のような鮮やかで猛々しい金色に変化した。その瞳にゲンドウは、固まった。まるで十頭の狼に囲まれた子羊のような感覚にゲンドウは、襲われた。そして、その瞳は、ユイにも向けられた。
しかし、ユイは、ニコッと笑いながら言った。
「でも、あなたは、私達の敵じゃないんでしょ?」
ユウスケは、その言葉に面食らったが、少しして笑い始めた。
「アハハハ、面白い人だ。『使徒』にいた時でも、俺に睨まれてそのようにいられた奴は、いなかったのに。」
「よく言われるわ。特にこの人と結婚した時なんて友人から『ここまできたら神の領域に行って頂戴。』と言われたわ。」
「・・・それで、俺の話を信じてもらえましたか?」
ユウスケは、瞳を元に戻しながら言った。
「信じるしかあるまい。・・・・・・俺としては、信じたくはないが、お前という証拠があるのなら、そうするしかあるまい。・・・・・・それで、これからどうするつもりだ?」
「協力者を探します、そこそこの組織力のある所へ。ただしアメリカやロシア、北朝鮮などの『国』には、行きません。『協力』は、してもらえませんから。後、国連には、直接的には、接触はしません。・・・世界メディアに配信された時、混乱に乗じて組織、もしくは『国』が動く可能性がありますから。」
「難しいわね。組織力のある国などに影響されていない所なんて・・・・・・」
ユイは、人差し指を頬に当てながら首をかしげた。ゲンドウも腕を組んで考え込んでしまった。それから、1分が経ち二人の頭の中に共通の組織名が浮かんだ。
「「ゲヒルン!!」」
ゲヒルン・・・・・・
それは、国連の組織の一つで、エネルギー不足に対応する為に各国に作られたものである。しかし、それは、建前であり実際のところは、国によっては効率の良いエネルギーシステムを兵器に応用していたりと存在理由が、曖昧になりかれている。
そして、ゲンドウとユイの勤めているゲヒルン日本支部は、そんなゲヒルンの中では、珍しく正しく創設目的をこなしている。
翌日、ゲンドウとユイは、ユウスケを連れてゲヒルンに行き、仲の良い重役の職員に昨日ユウスケが話した事を説明しユウスケが、それを証明した。証明の仕方は簡単で、職員の前で戦闘形態に変身したのである。その姿は、黒い甲冑に身を包んだ鬼神といった感じで、禍々しく畏怖の対象だった。職員たちは、初めは半信半疑だった。
その中で葛城博士と赤木ナオコは、その話を興味深そうに聞いていた。そして、ユウスケが、証明を行った時、職員のほとんどが驚き恐怖したのにその二人は、興味深そうにユウスケを観察した。
「おもしろいな。君のいた組織は、我々よりも進んだ科学力を持っているようだ。」
「見たところ、貴方の体は闘う為に体を変化させるという、生物としては、全く新しいものだわ。生物学的に興味深いものね。」
しかし、そんな二人の反応にユウスケは、眉をしかめた。
「・・・・・・葛城博士と赤木博士・・・でしたっけ?・・・ふざけないで戴きたい。」
「「え?」」
「今、人類の機器が迫っている危機的状況だ。それなのに『おもしろい』?『生物学的に興味深い』?」
「あ・・・・・・いや、すまない。学者としての習性のようなものでね。」
「別にこの事を楽観視しているわけでは、ないのよ。でも、一つ聞かしてもらっていい?あなたは、人類を虐殺される為に作られたのよね?なのに何故、人類の味方をするの?」
ユウスケは、座っていた椅子から立ち上がると演説をするかのごとく答えた。
「俺は、確かに『使徒』で遺伝子操作によって作られた生物兵器だ。そして他の生物兵器達は、何の疑いもなく組織に忠誠を誓った。・・・いや、そうプログラミングされていたからそれに従がっていたにすぎない。しかし、何故か俺には、組織に忠誠を誓うことに疑問を覚えた。何故、世界征服をしなければならないのかをね。その事をなんどか首領に尋ねた。しかし、首領からは明確な答えは貰えず、逆に俺は異端児として組織のはみ出し者になってきた。そして、俺は、決心した。意味も分からずに人類を虐殺するのは、耐えられない。ならば、組織を抜けて、逆に組織の生物兵器を狩る反逆者になろうと。『使徒』と名乗る殺戮の神の使いを狩る悪魔になろうと!」
ユウスケは、そう言い終ると拳を天高く突き上げた。しばらくの間職員の誰もが、黙ったままユウスケを見つめた。そして、誰かが、手を叩いた。それにつられる様に次々と職員達は手を叩いていき、辺りに拍手の波が満ち溢れた。一方のユウスケは、職員達のこの反応に少し戸惑ってしまった。
すると、何故かユウスケの演説に感極まった葛城が、ユウスケの手をガシッと掴んだ。
「感動したよ、豊星君。君のその心にひどく感銘したよ。是非とも協力させて欲しい。」
「・・・はあ、・・・あ、ありがとうございます。」
ユウスケが、呆気にとられているとナオコが、近づいてきていきなりユウスケを抱擁した。
「あ・・・・・・あの?」
「つらかったでしょうね、周りが全部敵だったなんて。でも、安心してね。私達は、貴方の味方だから。」
ユウスケが、更に困惑していると他の職員たちも協力を申し出てきた。そしてゲヒルンは、対使徒組織となった。この後、ユイは、ユウスケから『学者というものは、ああもノリのいいものなのか?』質問された。ユイは、それに対して『あなたの目にそう映ったのならそれが真実よ。』と答えた。
それから11ヶ月が経ち、ゲヒルンは、名前をNERVと変えて活動していた。そしてNERVは、ゼーレと言うスポンサーを手に入れていた。ゼーレとは、国連とは全くの無関係の所でその正体は、不明であるが、その資金力は凄まじく、ゲンドウが、交渉に行ったのだが、ものの5分で契約してきた。
そしてある日の事、ユウスケが、ゲンドウ、ユイ、ナオコ、葛城、そしてヘッドハンティングでNERVに就職したユイの大学の恩師である冬月コウゾウ、ユイの同級生である惣流・キョウコ・ツェッペリン、タカトシ、綾波コウジ、ムツミを集めて、とある計画を打ち明けた。
「「「「「「「「「エヴァシリーズ強奪計画?」」」」」」」」」
「そうです。実は、『使徒』では、俺と同じような目的で作っていた生物兵器部隊があるのです。それが、『エヴァシリーズ』。実は、この『エヴァシリーズ』、人の赤ん坊を拉致して遺伝子操作をして作った生物兵器なんです。」
「赤ん坊を拉致して?えらく手間のかかるやり方だな。何か理由でもあるのか?」
冬月は、顎を擦りながら言った。
「理由はただ一つ。その赤ん坊は、なにやら特別な感覚を持つ『チルドレン(適任者)』で、その赤ん坊を使うことにより『A.T.フィールド』という特殊な盾を使うことが出来るのです。」
「ふむ・・・拉致をしてまで得ようとする盾、よほど強力なんだろうな。」
「はい。・・・・・・それでこの作戦は、その『エヴァシリーズ』を研究室から強奪してくるものです。強奪してくるのは、俺が、やりますので、後、移動とかの為のアシスタントをお願いしたいのです。」
「でも、その研究室がどこにあるのか分かるの?」
ユイが、心配そうに聞いてきた。
「大丈夫です。実は、『エヴァシリーズ』については、組織にいた時、人の目を盗んで手に入れた情報なんです。だから、組織が俺がこの事を知っている事を知っている可能性は、低いです。そして計画どおりに進んでいたら、今ちょうど何人か『エヴァシリーズ』が出来たばかりなので、強奪するのは簡単です。」
「まあ、元々は、拉致された赤ん坊だから、奪ってきたところで何の問題もないな。」
葛城は、腕を組んで答えた。
「それで問題は、その後なんですが、・・・・・・その赤ん坊をこの中の誰かに普通の子と同じように愛情を持って育てて欲しいのです。」
「それは、一体どうして?元の親のところに返してあげたほうがいいんじゃないの?」
キョウコは、不思議そうに言った。するとユウスケは、首を横に振った。
「そうした場合、本当にその親が、赤ん坊を可愛がってくれるか心配です。赤ん坊は、すでに人外な訳ですから、幾らわが子と分かっていても何処となく冷たい態度を取ってしまう可能性があります。もしそうなった場合、赤ん坊が、人間不信に陥り最悪の場合、こちらに牙をむく可能性があります。それに引き換え、ここに集まっている人達は、そんな事をしないと確信していますので。」
「成る程。責任重大ね。」
「はい。それで、この作戦のアシスタントを二名お願いしたいのですが。」
「・・・俺が行こう。」
「私も立候補しよう!」
ゲンドウと葛城が、即座に立候補した。
それから、一ヵ月後、三人は、計画を実行した。
「・・・・・・これが、全容だ。何か聞きたいことがあるか?」
ゲンドウは、そう言いながら、シンジ、アスカ、レイの顔を見た。三人とも、下を向いて黙ってしまった。
「・・・・・・何もないのか?」
「仕方ないわよ。いきなりこんなにたくさんの真実を聞かされたんだもの。今日は、ゆっくり休ませましょう。」
ユイは、そう言いながらキョウコとナオコの方を見た。するとキョウコとナオコは、頷き三人は、シンジ達に近づいた。
「シンジ、うちに帰りましょう。」
「アスカちゃん、一緒に帰りましょう。」
「帰りましょう、レイ。」
すると、シンジ、アスカ、レイは、それぞれユイ、キョウコ、ナオコに尋ねた。
「・・・母さん、・・・・・・僕は、一体誰の子なの?」
「ママ・・・ママは、私の事を愛している?」
「ナオコさん・・・私は、あそこに帰っていいの?」
すると、ユイ達はシンジ達を抱きしめるとやさしく答える。
「シンジは、他の誰が違うと否定しても私の子供よ。確かに血の繋がりはないかもしれないけど、それ以上に一緒にすごしてきた家族の絆があるじゃない。それじゃあ、だめだっていうの?」
「もちろんじゃない。何で愛してないと思うの?私の可愛い一人娘なんだもの、愛してない訳ないじゃない。大好きよ、アスカちゃん。」
「じゃあ、あなたは、何処に帰るって言うの?・・・私は、綾波夫妻から貴方を頼まれたのよ。だから私は、愛情を持って育てたし、これからもそのつもりよ。だから、貴方が、帰ってきても構わないのよ。」
すると、三人とも肩を震わせて泣きはじめた。
「♪〜〜〜」
第二中学の2−Aの教室。タブリスは、鼻歌を歌いながら教室を眺めていた。歌っている曲は、ベートーベンの『第九』。
「ここでエヴァシリーズが、人類と共に勉学を勤しんでいるわけか。・・・え?」
ダブリスは、教室の出入り口に立っている人影に気付き驚いた。
「・・・・・・あははは、本当にこの世は不思議に満ちている。・・・・・・もうこの世から消え去っていたと思っていたのに。お久しぶりです、アダム。」
「いや、俺は、アダムじゃねえ。確かに昔は、アダムだったが、今は加持リョウジっていう教師でもあり、NERVの職員だ。」
人影・・・・・・リョウジは、きっぱりとそう言い放った。
「何故ジェノスの意志を受け継いでこんな事をやっているのですか?」
「あいつの意志なんて、俺は受け継いでなんていないぜ。・・・・・・人類っていうのは、おもしろいもんだぜ。お前も暮らしてみろよ。世界征服なんてつまらないもんだと感じるぜ。」
リョウジは、そう言うと二ッと笑った。するとタブリスは、肩をすくめた。
「これは、偶然です。偵察の為にここの中学に転校するんですよ。・・・だから、その時見極めさせてもらいます。」
タブリスは、そう言うとさわやかに微笑んだ。
黒い稲妻さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
物語は十五年前の事件から始まりました。
ユイさん達によるエヴァシリーズの強奪計画、その赤ん坊こそがシンジ君達なんですね。
人間でなくても愛情をもって育ててくれているユイさん達によって普通の生活が送れるとは幸せです。
なんと加持さんの正体がアダムとは驚きですね。
加持さんはやっぱりスイカを栽培しているの?と感想を送りましょうね。
とっても素敵なSSをくださった黒い稲妻さんへの感想は掲示板かjun16に送ってくださいね。黒い稲妻さんに送っておきます。
皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!
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