ここは天国か?
楽園?
視力が低下したのか?
最近徹夜続きで疲れているからなあ。
幻を見てもおかしくないか。
ここに居るはずがない山岸が俺の目の前にいる、最近のバーチャルは進化したな。
「相田君、久しぶりね」
声まで聞える、音声まで合成とは凄い。
「固まってどうしたの?」
動いた、滑らかな3Dだ。
「相田君?」
「あ、ああ・・・」
「元気にしていましたか?」
「ああ・・・一つ質問していいかな?」
「質問?」
「ここにいる山岸って幻?」
だって山岸は半年前に転校してアメリカに居るんだぜ、それなのにここに居るなんてきっと幻に違いない、俺の脳内のシナプスが暴走しているに違いない。
「うふふ、幻かどうか確かめてみて」
俺の前にいる幻かどうかわからない山岸が右手を差し出してきた、俺は恐る恐る彼女の手を触ってみた。
「幻でしたか?」
「あ・・いや」
彼女の手の温もりが感じられた、この質感はバーチャルでは再現できない。
「じゃあどうしてここに?」
「ただいま、相田君」
「えええっ!?」
jun16 Factory presents
EVA小説掲載1100本記念小説
First Stage
「山岸マユミです、またよろしくお願いします」
朝、黒板に書かれた山岸マユミの文字。挨拶する山岸、歓声があがる男子の声、五月蝿いなあ、朝から耳が痛いぜ。
昨日彼女から聞いたのは、親父さんの仕事でまた戻ってきたようだ。今度はずっとこっちに居られるようだ、転校が多かった彼女には嬉しい出来事だ、俺にも嬉しいけどな。
それにしてもアメリカに居たせいか、彼女の雰囲気が明るくなったよう気がする。以前居た時は空気のような存在だった、俺の女子生徒データにも入っていなかったし知っていたとしても写真を撮ることはなかったな。
でも今は違う、惣流や霧島、綾波とは違った美しさがある、俺のカメラマン魂が燃え上がるぜ。
山岸の席は俺の席よりかなり離れていたが、俺と眼が合った時に微笑んでくれた。その微笑を他の男子は『俺に向かって微笑んでくれた』と絶叫していた、バカかお前等は。
休み時間になった。予想通りにクラスの連中は山岸に群がり質問攻めだ、女子はアメリカ生活の事、男子は今付き合っている奴はいるのかとか、彼氏候補になるとか、何寝言いっているんだ。
「ケンスケー、良かったの」
「良かったね」
「あ、ああ」
トウジとシンジが再会を祝ってくれた、ありがとな。
「恋をするのは素敵だね」
何を言っているんだ渚は。
「彼女の瞳は光り輝いている、その輝きが彼女をより一層美しくしているよ、これがリリンの素晴らしさなんだね」
そうなのか。
「その瞳は一人の男性に向けられているよ、素敵だね相田君」
「あ、ああ」
俺を見てニヤリと笑った、渚には全て見透かされている気がするな。
「シンジ君、彼女の瞳は素敵だと思わないかい?」
「うん、綺麗だね」
「ふふ、僕の瞳はどうかな?」
また漫才が始まるのか。
「カヲル君の瞳も綺麗だよ」
「シンジ君の瞳も綺麗だ、ほら近づくと君の瞳に僕が映っているよ」
「あっ、カヲル君」
渚の手がシンジの頬をゆっくり撫でるように触った。シンジは女性のように頬を染めて、目をつぶって・・・そろそろくるな。
「ふふふ、何を子猫のように怯えているんだい?」
「だってカヲル君の手が僕の頬に・・・」
「ふふふ、可愛いねシンジ君は」
「カヲル君・・・キュン」
2人の唇がゆっくり近づいて・・・
ドゴ〜〜〜〜〜!!
「はう〜〜〜ん!!」
「は〜〜〜い、そこまでよ。まったく油断も隙もあったもんじゃないわね」
惣流の殺人的な拳に渚が空まで飛ばされていった。
「シンジ〜大丈夫だった?何もされてない?」
霧島が心配そうにシンジに抱きついた。
「だ、大丈夫だよ。ってカヲル君が」
「彼なら平気、今頃宇宙から私達を見守ってくれているわ」
綾波が手を合わせて拝んでいる、死亡確定か?まあ昼休みまでには戻ってくるだろうから心配しなくていいか。
キ〜〜ンコ〜〜ンカ〜〜ンコ〜〜ン
慌しい午前中だった、休み時間毎にクラスの連中は山岸に質問攻め、お陰で俺は喋る事ができなかった、まあ授業中にメールをしたけどな。
「メシ食いに行くで〜」
「うん、カヲル君も行こう」
いつの間にか渚が帰ってきていた、俺達の昼食場所は屋上だ。
「ふふ、シンジ君と一緒に昼食を食べる為に帰ってきたよ、これはお土産だよシンジ君」
「カヲル君、これは何なの?」
「月の石だよ」
「うわ〜〜凄いなあ」
「日本には古来から愛する人に月の石を贈ると聞いたんだよ、それで持ってきたわけさ」
そんな由来はないぜ。
「カヲル君・・・キュン」
シンジのトキメキ度がアップだな。
「ふふふ、チュッ!」
「はああ、カヲルく〜〜ん」
渚の投げキッスにシンジの腰が抜けた、お前等の漫才はいつ見ても飽きないぜ。
「ふん!何が月の石よ」
シュッ!ブーーン!ボッ!
ああ、その石を惣流が奪い取って空に投げたら摩擦で燃え尽きた。
「なっ! 何をするだァーッ ゆるさんッ!アスカ!」
「バカシンジ!誤植してんじゃないわよ、月の石ですって?バッカじゃないの、偽モンにきまっているでしょうが、燃えたじゃないのよ」
いや、普通の石でも投げただけでは燃えないぜ。
「シンジ〜〜ご飯食べに行こう」
霧島がシンジの腕を引っ張って急かせる。
「山岸さんも誘ったわ」
何だって!?綾波の後ろから恥ずかしそうに山岸の姿が現れた。手には弁当箱を持っている。
「おっケンスケ〜良かったの〜〜」
あ、ああ。
「ふふふ、感謝しなさい。このアスカ様が誘ったのよ、クラスの連中の魔の手から助けたのよ」
「相田君、私も手伝ったのよ」
「私も、野蛮な男子の魔の手から山岸さんを守り通したわ」
そうだったな、チャイムが鳴ると同時に、男子の連中が山岸を誘っていたけど、その数秒後に連中の死体の山が築かれた、惣流達の殺人的な拳によって・・・お前等成仏しろよ。
「あ、ああ、サンキュー」
「さあ行きましょう」
委員長の合図で俺達は屋上に向かった。山岸は俺の後ろを歩いている、ちょっと恥ずかしい、自分でも耳が熱くなっているのがわかる。
「う〜〜ん、良い天気ね。シンジッ、シート敷いてちょうだい」
「うん」
惣流とシンジがいつも持ってきているピクニックシートに座って食べるのが習慣だ。
「す、鈴原はい」
「きょ、今日もすまんの〜〜」
トウジは今日も委員長の作った弁当だ。毎日照れながら渡す委員長と照れながら貰うトウジ、いい加減慣れろよ。最初の頃は冷やかしていたが、それも飽きてしまったんだよな。見慣れた光景だぜ。
「シンジッ!お弁当!!」
「はいはい」
惣流が仁王立ちになってシンジから弁当を渡してもらう。・・・作ってもらっているんだから偉そうにするなよ。見慣れた光景だぜ。
「今日のご飯は!!ジャッジャ〜〜ン!」
霧島が弁当の蓋を開けた、一人暮らしをしているだけあってか料理の腕は委員長やシンジに引けを取らない。委員長が料理の説明を聞いている。見慣れた光景だぜ。
「ご飯・・・」
小食な綾波、弁当箱は小さく、肉類は入っていない。野菜中心のおかずだ、食べ方が兎のように可愛いから食べている姿の綾波は男子に人気なんだよな。見慣れた光景だぜ。
「ふっ今日の昼食はなにかな?」
高そうな弁当箱は渚のだ、誰に作ってもらっているのかは知らんが三ツ星レストランででるようなおかずだ、それってキャビアじゃないのか?見慣れた光景だぜ。
そして・・・見慣れていない光景が俺の横に・・・
「つ、疲れてないのか?」
「うん、ちょっとね」
休む暇がなかったからな。山岸の弁当はごくありふれたおかずだった、まあこれが普通だよな。みんなが異常なだけだぜ、そして俺はコンビニで買ったパンだ。
食べている時はいつもと同じ光景だ、トウジは涙を流しながら美味い弁当を頬張り、シンジと渚は仲良く食べ・・・いつもならここで惣流達の邪魔が入るんだが、女性陣は山岸のアメリカでの生活を聞いていた。俺もパンを食べながらそれを聞いていた。
「凄いわね〜英語が喋れるなんて」
委員長が驚いた。惣流と英語で話していたが互角だった、頭が良いんだな。
「ええ、最初はわからなかったけど現地の人に教えてもらって覚えていったの」
「このアタシと互角とはなかなかやるわね、山岸マユミ!覚えておくわ」
「これからはアスカじゃなくてマユタンに教えてもらおうっと」
霧島、フレンドリーすぎるぜ。まあこれが霧島の良い所だな。
「英語話せる人・・・赤木博士も話せる・・・凄い・・・ハ・・・ハロウ」
綾波もあまり英語の成績はよく無いからな、2人の会話を首を傾げて聞いていた。
「ワシは日本人じゃ、日本語だけで十分じゃ」
トウジの成績は・・・わかっているぜ。
「カヲル君、山岸さん凄かったね」
「ふふ、シンジ君も英語を話せるようになりたいのかい?僕が朝から晩まで、ベッドの中まで使える英語を教えてあげるよ」
「カヲル君、そんな・・・キュン」
2人ともそんな話していたら、この地球から消されるぜ。
ブ〜〜〜ン!!
「アンタ等いっぺん頭冷やしてこ〜〜〜い!!」
「「オーマイガッーー!!」」
やっぱりな、2人は今日も星になったぜ。
「そ、惣流さん凄いわね」
「ああ、いつもの事だよ」
山岸が初めて見る光景かな、まあ初めて見るなら驚くよな。
「あ〜〜今日も美味しかった、ごちそうさま」
その弁当を作った本人は星になったけどな。
「さあ、これから撮影タイムよ。眼鏡、美しくアタシを撮りなさい」
「はあ?何言ってんだ」
「せっかくマユミが戻ってきたのよ。美少女戦士、アスカwithスーパーモン○ーズよ」
お前が一番のモン○ーじゃないか、おっとこれを口に出したら殺られるな。
「そうそう、相田君撮って〜〜それにアスカ名前が間違っているわ、美少女戦士マナちゃんと愉快な名も無き仲間達よ」
それも違うと思うが。
「・・・美少女戦士綾波レイ・・・いいかも」
綾波も妄想に入っているなあ。
「アンタ達、何言ってんのよ!アタシの考えたグループ名が一番良いじゃないのよ!」
「そんな古臭い名前じゃ売れないわよ、美少女戦士マナちゃんが活躍するのが売れるんだからね。もしくは超時空シンデレラ、マナちゃん決めポーズはキラッ!」
「くーるびゅーてぃー、無口が売れるの」
ぎゃあぎゃあ五月蝿いなあ、これじゃあ収拾がつかないよ。時間も無くなるからさっさと終わらすか、本当は山岸だけを撮りたいんだけどな。
「撮ってやるから並べよ」
デジカメを取り出し、撮影位置を指示した。屋上のステージ、バックがフェンスなのは仕方ないか。
「マユタンも早く早く」
「あっ、私は」
「みんなで写った方が楽しいんだよ」
恥ずかしがる山岸を霧島が強引に立たせた、いいぞ霧島。
「イインチョさんも早く」
「私はいいわよ」
「問題ないわ」
綾波は委員長を立たせた、撮った写真はトウジにもやるか。
「さあ〜美しいアタシに驚いてカメラが壊れないように写すのよ」
「どうかしら〜?アスカの部分だけピンボケじゃないのかな〜」
「なんですって〜〜!?こんの鋼鉄が〜〜!!」
「んっふっふ〜〜相田君、今の顔を撮って〜」
「あ、ああ」
カシャ!
思わず撮ってしまった、画像確認したが、これは凄い。
「ちょ、ちょっと今の消してよね!」
「わ、わかったよ」
惣流に詰め寄られて消してしまった、まあその前にコピーしたから画像は残っているぜ、シンジにやろうかな?それとも葛城さんがいいかな。
「ざ〜〜んねん、折角ネットでばら撒こうと思ったのに」
本当にやりそうで怖いな。
「アンタねえ〜〜そのうち友達を無くすわよ」
「だ〜〜いじょうぶ、だいじょうぶ、アスカが帰らぬ人になっても皆がいるもん」
「勝手に殺すな〜〜!」
この2人も毎日飽きずに漫才をするなあ、まあそれだけ仲が良いって事かな。
「漫才はその位にして、時間が無くなるから撮るぞ」
カシャ!
惣流と霧島はカメラ慣れしているせいかファッション雑誌のモデルのポーズをとっている。
カシャ!
綾波はいつものように突っ立ったまま、まあ元が良いから絵になるな。
カシャ!
委員長は惣流にポーズを指示を受けて照れくさそうにポーズを取っている。
カシャ!
山岸は・・・
カシャ!
キ〜〜ンコ〜〜ンカ〜〜ンコ〜〜ン
「早っもう昼休みがおわってしもうた」
撮影に夢中ですっかり忘れていた、俺達は昼食の後片付けをすると急いで教室へ走った。
午後からの授業は眠い、惣流と霧島、トウジはすでに夢の中だ。おっシンジと渚も生還している。俺は授業そっちのけで、さっき撮った画像を見ていた。
うんうん、今日もばっちり撮れたぜ、後でプリントしてみんなに渡すか。
ピッ
おっメールが着た、山岸からか、なになに・・・
相田君、お昼休みお疲れさま。
写真撮ってくれてありがとう、授業が終わったら見せてね。
はは、ほとんど惣流や霧島がでしゃばって山岸の姿はあまり写ってないんだけどな。返信返信っと。
惣流や霧島がでしゃばっていて、山岸の姿はあまり写ってないんだよ、撮る努力はしたんだけどな。
帰国後の初撮りをガッカリさせてゴメンな。
また今度、撮らせてもらっていいかな?
今度は屋上のステージではなく、もっと山岸の姿が生えるステージで撮りたいんだ。
うん、また撮ってくれるんだね、楽しみにしているね。
よしっ!今度はみんなから邪魔されずに俺の腕を生かす事ができるぜ!
俺のカメラマンへの道がまた一歩近づいた気がしたよ。
このSS(リレー小説&投稿SS&CGに付けたSSを除く)で1100本目です(^▽^)
今回はreunionの続きです。
ケンスケの前に現れた山岸マユミ、その姿は夢か幻か?
再び戻ってきたマユミちゃんにケンスケのカメラマン魂が燃え上がります。
でも、回りの騒がしい連中に振り回されてゆっくりと撮る事ができないですね(^^;)
これからも「jun16 Factory」をよろしくお願いします(^^)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION First Stage