CHILDREN LIFE
ACT.27
制限速度を守る女
「さあ帰りましょう〜」
帰るのは良いんだけど・・・ミサトの車なのよね。
「アスカちゃんどうしたの?眉間にしわを寄せて。可愛い顔が台無しよ」
やだっアタシったらしわを作っちゃっているの?恥ずかしいわ。ってミサトの車で運転するのは当然ミサト・・・
「アスカどうしたの?乗らないの?」
ん?後部座席にはすでにレイが座っていたわ。シンジはミサトの運転が怖くないのかしら?いいえ怖いはずよね、もんの凄い運転はジェットコースターよりひどいわ。
「ねえシンジ」
「ん?なに」
「アンタ怖くないの?ミサトの運転なのよ」
「まあ二人ともコソコソ話し、何話しているの?」
「な、何でもないわよ。ちょっとね」
「ふふふ、二人だけの内緒なのね」
シンジとの会話、当然ミサトには聞こえないように耳元でささやいているのよね、あっシンジの耳の温もりが・・・
「別に怖くないよ、エヴァより平気だよ」
そうなの?アタシはミサトの運転よりエヴァが良いんだけどね。
「乗らないの?」
レイは・・・怖いはずないわよね。しょうがない死を覚悟して乗りましょう。
ええと、アタシは後ろに座れば良いのかしら・・・って!
「レイ、アンタは前に乗りなさい」
「え?どうして」
後ろはアタシとシンジが座るんだからアンタは当然前、って言えないけどね。
「良いから、アンタが前に乗らなきゃいけないって100年前から決まっていた事なのよ」
「そうなの?」
「そうよ」
「・・・わかったわ」
ふふふ、単純ね。これでアタシとシンジは後ろの席で・・・
「きゃっ」
カーブで姿勢を崩すアタシ
「アスカ大丈夫?」
それを支えるシンジ
「ええ、大丈夫よ」
微笑むアタシ
「良かった、アスカが怪我したら大変だよ」
心配するシンジ
「ふふ、そこまでドジじゃないわよ」
シンジのおでこを指で弾くアタシ
「あ、痛った〜」
痛がるシンジ、だけど顔は笑っている
「ふふ、シ〜ンジ」
完璧な計画だわ、ミサトの運転がこれほど役に立ったかしら?いいえなかったわ、これからアタシとシンジの為に役に立つのよ。
「アスカちゃん、いやんいやんしてないで早く乗りなさい、出発するわよ」
「え?あ、の、乗るわよ」
いけないいけない、別の世界に旅立っていたわ。シンジの隣に座って楽しいドライブへGO〜よ。
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ミサトさんが迎えに来てくれるなんて嬉しいなあ。スーパーに寄ってもらおう。
「ミサトさん、晩御飯を買いたいのですみませんがスーパーに寄ってください」
「シンジ君、おかあさんって呼んで〜他人行儀でしょ」
「あ、はいミ、ミサトさんおかあさん」
う〜〜ん、ミサトさんをおかあさんってちょっと呼びにくいなあ。
「シンジ君、ミサトおかあさんでしょ」
「あ、はいミサトおかあさん、スーパーに寄ってください」
「それなら買い物を済ませておいたから大丈夫よ」
「本当ですか?」
「ええ、本当よ」
うわ〜〜嬉しいなあ、買い物しないで帰れるなんて夢みたいだ。
「じゃあ帰りましょう」
颯爽とエンジンをかけるミサトさん、ギアを一速に入れて急加速してシートに押し付けられるGがたまらない・・・って、あれ?
グオオオオオ
いつもの迫力がないぞ、どうしたんだろう?車の調子が悪いのかな。
「ミサトさん、車の調子が悪いんですか?」
「どうして?どこも異常はないわよ」
「だっていつもみたいに飛ばさないから」
そう学校から道に出る時も一時停止して左右を確認、普段ならスピンターンで道にでるんだけどなあ。
「もうシンジ君ったらそれじゃあいつも私が飛ばしているように聞こえるじゃないの、私はちゃんとスピードは守っていますよ」
「「えっ?」」
おっアスカとユニゾンだ。そりゃあアスカも驚くよね。
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な、なんですって?すぴいどを守ってる?聞き間違えかしら?アタシの耳にはそう聞こえたわ。
「ミ、ミサト今何て言ったの?」
「もうアスカちゃん、おかあさんって呼んで」
げっミサトが悲しい顔をしてるわ、おかあさんて呼ばないといけないのかしら。呼ばないと泣いちゃいそうだから呼んでおきましょう。
「ミサトおかあさん」
「なあにアスカちゃん」
「ど、どうしてスピードださないの?」
時速50キロの所を50、いいえ45で走っているわ。普通なら倍の速度で走っているのに。
「ださないのって、ここは50キロよ。50で走らないといけないでしょ」
「そ、そりゃそうだけど・・・」
スピードを出してくれないとアタシの計画が台無しになっちゃうじゃないのよ。ほらレイなんて運転がトロいもんだから寝ちゃっているわ。
「安全運転で帰らないとね」
バックミラー越しにウインクするミサト・・・はあ〜〜〜アタシの計画は水の泡に消えたわ。
制限速度を守るミサトさんはミサトさんにあらず(笑)これなら誰が乗っても気絶しませんね。
でもアスカちゃんの計画『後部座席、急カーブで体勢を崩しシンジ君に抱きつく』はできませんでした。
買い物も済ませておいたミサトさん、シンジ君大助かりですね。
こんな連載短編小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
CHILDREN LIFE:ACT.27 制限速度を守る女