おかしな二人

「ふあああっ・・・・・」

 日曜日の昼下がり、マナは部屋で一人TVを見ながら背伸びをしてアクビをした。

「つまんないわね〜」

 チャンネルを次々に変えるが、日曜日の昼は面白い番組なんて放送していない。見るのもバカらしいので消した。

「あ〜あ、な〜〜〜んにもする事が無いのよね〜〜〜」

 クッションに顔を埋めため息、

「シンジはネルフだしなあ〜〜」

 日曜日の晴れた日はシンジとデートと行きたいところだが、あいにく今日はテストである。仮に休みであっても『アスカ』という邪魔者がいて、二人っきりになる事は不可能であった。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・ぶらついてくるか」

 ガバっと起きあがると着替え始める。TシャツにGパンというラフな格好で、財布の中身を確認すると家を出た。

 

 

 街を一人歩くマナ、だがその顔は不機嫌であった。

な、何よ!これは!

 日曜日ともあって人出が多い。そんな事は気にしないのだが、否応無しに目に飛び込んでくるのがカップル。一人身のマナには腹立たしい。

(たくっ!こんなところでイチャイチャして〜!他に行くお金も無いのかってんのよ!)

 カップル達はベンチに座っていたり、公園で話しに花を咲かせている。その姿がマナを怒らせる。時折ナンパをしてくる者がいたが、怒っている時、間が悪い。マナは無言で『あっちに行け!』と目で殺す。

(・・・・・はあ〜日曜に来たのが間違いだったわ。帰ろう)

 街に来てから五分、帰る為に振り返ろうとした。が前方に見覚えのある少女が歩いているのに気がついた。

(あら?あれは・・・・綾波さんだったかしら?)

 そうレイは数十メートル先の十字路を右から左に歩いていた。

(日曜日に制服なんて・・・変わっているわね。暇だし声かけちゃお)

 マナはカップルの脇をすり抜けるように素早く走ると、見えなくなる前のレイに追いついた。

「綾波さん、こんにちは〜どうしたの一人で?」

 マナはニッコリと笑い挨拶をしたがレイは頭に?マークがついていた。

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

 レイの無言にマナも無言になった。

「・・・・・・・思い出した。アナタ鋼鉄さんね」

 ガクッ!

 マナはこけた。

「あっあのねえ・・・綾波さん。私の名前は霧島なんだけど」

「そう霧島鋼鉄さんね」

 ガクッ!

 マナはこけた。

「ち、違うわよ。鋼鉄は付かないの。私の名前は霧島マナなの、わかった?」

「・・・・・命令ならそうするわ」

「は?命令って」

「アスカが言っていたの、アナタは鋼鉄だって」

「そ、そうアスカが・・・・・」

 何食わぬ顔をしているが心の中では『アスカとは決着をつけないとね』と誓った。

「私の名前は霧島マナだからね。憶えた?」

「霧島さんね」

「ええ!マナでいいわよ。私もレイって呼ぶから」

 フレンドリーなマナ、相変わらず活発な性格である。

「わかったわマナさん」

「・・・さん付けは・・・呼び捨てでいいわよ」

「ええマナさん」

「・・・・・は、ははは、さん付けでいいわ」

 『憶えが悪いのだろうか?』と思いつつ頭をかいた。

「レイさんは何をしていたの?」

 マナもさん付けで呼ぶ事にした。

「お散歩」

「へ?」

「お散歩」

「そうお散歩なの・・・・」

 『制服を着てお散歩とは変なの』と思いつつ頭をかいた。

「じゃあ、行くから」

 レイはスタスタと歩き出そうとした。

「あっちょっと待って」

「何?」

「レイさん、暇?」

「暇じゃないわ。お散歩の途中」

「・・・そ、そうね。ならお散歩しながら、ウインドーショッピングしない?」

「ういんど〜しょっぴんぐ?」

 レイは聞いた事が無い言葉に首を傾げる。

「そうウインドーショッピング、店を見て回るのよ。買わないけどね」

「・・・・・・・様は冷やかしね」

「・・・・そ、そうとも言うわね」

 『ヘンな言葉は知っているのね』と思いつつ頭をかいた。

「良いわ」

「そう、それじゃあ出発!」

 ようやくまとまった、マナは元気良く拳を天に突き出すと歩き始めた。そして二人は興味がある店を見つけると冷やかしに入った。全てはマナの選んだ店である。レイはただ後を付いていくだけであった。

 

 

 

 二時間ウインドーショッピングをした処で休憩、オープンテラスでお茶にケーキと注文して、話しに花を咲かせるといっても、喋るのはマナだけレイは聞いて頷くだけである。

 ・・・・・女の子のお喋りは長い、くだらない事でも一時間、二時間は喋る。お茶にケーキと飲み放題、食べ放題なので体力が尽きる事はない。

「でレイさんってどうして制服なの?」

「これしか持っていないから」

 マナは驚いた。14歳ならオシャレをするのにレイは制服しかもっていない。

「えっ?どうして」

「必要ないもの、学校とネルフに行きだけだから」

「ダメよ!レイさんは可愛いんだから、もっとオシャレをしないと」

 興奮して立ちあがるとレイの顔間近にきて、喋る。

「レイさん、服を買わないと」

「服?必要ないわ」

「ダメよダメ!ああっこうしちゃいられないわ。さっそく行くわよ」

 レイの手を取るとさっさとオープンテラスを後にする。マナはちょっとお節介焼きだった。

 

 

 先ほどのウインドーショッピングでマナは気に入った店を、見つけたのでそこに行った。

「レイさんは、どんなのがいいの?」

 一応、本人の希望を聞く。だがレイは。

「わからないわ」

「えっ?これだけあるのよ。気に入った服は無いの?」

「ごめんなさい、私はこんな時どんな顔をしたらいいのかわからない」

「へっ?」

 レイのお気に入りの言葉、当然マナにはわからない。

「そ、そうねえ〜、どんな顔が良いかしら〜〜。わからないなら私が選んで良い?」

「・・・・・いいわ」

 マナは早速服を選び始めた。その後でレイは少し悲しかった。

(どんな顔がいいのかしら?)

 

 

「これなんてどお?」

 選んだのは水色をもっと薄くした白系のシャツ、そしてGパン。

「・・・・・わからないわ」

「これとこれを組み合わせたら良いと思うわよ。試着してみて」

「ええ」

 レイはその場で制服のボタンに手をかける。

「ちょ、チョット待った〜〜」

「どうしたの?」

「ここで着替えないの、向こうの試着室で着替えるのよ」

「そう」

 マナは汗をかきながらレイを試着室に連れて行く。

 『今のってギャグかしら?』と思いつつ頭をかいた。

 

 そしてカーテンが開く。

「どう?」

「可愛い!似合っているわよ」

 服を着ただけでいつもと雰囲気が違うレイにマナは驚いた。

「そうなの」

「そうよ。でどうする?」

「何が?」

 ガクッ!

 マナはこけた。

「何がって、買うの?」

「・・・・・買ったほうが良いのかしら?」

(・・・・・・決められないのかしら?それともわからないのかな?)

 当然レイはわからない。

「買ったほうが良いわよ。カッコいいわよ」

「そう、じゃあ買うわ」

 こうしてレイはシャツとGパンを購入した。

 

 

 日は暮れて夕方、二人は歩いていた。

「レイさん、休日は制服じゃなく。私服でいいのよ」

「そう」

「ええ、私の趣味で選んじゃったけど似合うから良かったわ」

「そう」

「白系の服って私のお気に入りなんだ」

「そう」

 マナが一方的に喋り、レイは頷くだけ。

「白って何だか楽しくなるのよね。そう思わない?」

「・・・・思うわ」

 マナはサッとレイの正面に立って笑う。

「そうでしょう〜、私達って合うのかしら?それじゃあ私はこっちだから、レイさんは向こうでしょ。バイバイ〜〜」

 夕焼けをバックにマナは手を振り、歩き出そうとした。

「マナさん・・・・」

「んっ何?」

「次も・・・ういんど〜しょっぴんぐ、良いかしら?」

 その言葉にマナはニッコリと笑った。

「ええ、良いわよ!」


 久しぶりのレイ&マナいかがでしたか?

 一方的に喋り捲るマナに頷きだけのレイ、案外こういう性格って合うんですよね。

 レイの常識にちょっとビックリしたマナですが、これからは大丈夫でしょうね?

 レイと仲良くなったら、敵はアスカだけですね(^^)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


気が合う二人

NEON GENESIS: EVANGELION おかしな二人