ピ〜ンポ〜ン!

 何気ない昼下がり、葛城家のチャイムが鳴った。

「は〜〜〜い」

 チャイムが鳴り終わらないうちにシンジは返事をして玄関に向かう、来客対応はシンジの役目である。と言うかミサトもアスカも対応しないので必然的にこうなった。

「碇クンこんにちは」

「いらっしゃい」

 玄関先にはレイが立っていた、珍しい来客だが昨日も来て遊んで行ったので驚かない。

「今日はこれを持ってきたの」

 猫の刺繍がついたポシェットから取り出したのは。

「折り紙、懐かしいね小さい頃よく折ったよ」

「お母さんに色々教えてもらったの、碇クンに折ってあげる」

 『お母さん』とは無論リツコの事である、色々と知っておりそれをレイに教える姿はまさに『母』である。しかしリツコは頑なまでに『お姉さん』と呼ぶように強調する。

「そうかい、嬉しいなあ。あがってよ」

「うん」

 ぽっ!

 ニッコリ微笑むシンジに頬を桜色に染めリビングに向かうのであった。

 

 

 

「何〜?ファーストまた来たの〜」

 寝転んで雑誌を見ていたアスカ、指にはおサルさんの可愛い絵が入ったバンソウコウを貼っている。

「碇クンこの折り紙、和紙でできているの」

「へえ〜珍しいね」

くぉら!人の話しを聞け〜〜〜!」

 アスカを無視してシンジと話すレイ、当然無視されたアスカは明王の如く怒りだした。

「誰?」

むっき〜〜!アンタわざと言っているでしょう」

 記憶が無いのか首を傾げる。アスカは怒りで興奮して耳まで真っ赤になり今にもSALになりそうな雰囲気である。

「うん、冗談」

「アンタその性格直さないと夜道で後ろから刺されるわよ」

 アスカなら本気でやりそうな発言である。

「まあまあ2人ともその辺でやめて、ジュースがあるから飲もうよ」

 放っておけばリビングでサードインパクトが起きる可能性が高い、シンジは保父パワーを全開にして仲裁に入る。

「ほんと〜〜?お菓子も食べたい〜〜」

「うん、お菓子もあるよ」

「ありがとう・・・・ぽっ」

「ちょっと待ってってね、用意してくるから」

 急いで台所に向かうとコップを三つとお菓子を用意する。これだけでサードインパクトが起こらないなら安いものである。

 

 

「お待たせ〜〜」

「やったあ〜お菓子お菓子〜♪」

「ジュース冷たくて美味しい」

 お菓子を頬張り喜ぶアスカ、冷たいジュースで喉を潤すレイ。2人を見てホッと胸を撫で下ろすシンジであった。

「じゃあ鶴を折ってあげる」

「へえ〜鶴を折れるんだ」

 水色の折り紙を取り出すとユックリとした動作で折っていく、多少折り間違いがあり時間が掛かったが完成にこぎつけた。

「はい完成」

「上手だね、ありがとう」

 鶴を受け取るシンジ、レイは頭を持っていく。

「碇クン、なでなで」

「え?あ、ああなでなでね。はいなでなで」

 別に驚かない、昨日もしたのだから。微笑むと優しくレイの頭をなでなで撫でる。

 ぽっ!

 目をつぶり頬を赤らめ頭の感触に浸るが、その光景を良く思わない人物が目の前いる。

「ハンッ!鶴ぐらい折ったぐらいで何がなでなでよ、まったく低次元ね」

「じゃあアスカは何折れるの?」

「アタシに折れないものなんて無いわよ、アスカ様に相応しい白鳥を折ってやるわよ」

 白鳥を折るのに真っ赤な折り紙を選び折っていく。が

「アスカ白鳥の折り方知っているの?」

「知らないわよ、気合でなんとかなるわよ」

「そ、そう・・・・」

 言葉が出ないシンジ、気合ではなんとものならないだろう。

「ここをこうしてこうしてああやって・・・・・」

 折っては戻し折っては戻しの繰り返し。

「・・・こうして・・・あっ!」

 ビリッ!

 何度も折っていると丈夫な和紙でも耐えきれない破れてしまった。

「う、ううううえ〜ん、破れちゃった〜〜〜

「わああ、アスカ泣かないでまだ沢山折り紙はあるから」

 シンジは急いで折り紙を出すが・・・

「赤じゃないとイヤ〜〜〜」

 アスカのトレードマークの赤の折り紙はもう無かった。

「ピ、ピンクじゃ駄目かな?」

「イヤ〜〜赤じゃないと、折角できかけていたのに〜〜うえ〜〜ん!」

「・・・・・・・」

 『できていないよ』とツッコミたいシンジであったが、喉もとまで出かかってやめた。

「赤〜〜!赤〜〜!」

 バタバタと手足をばたつかせ駄々をこねる、もはや幼稚園児である。

(しょうがないなあ〜)

 なでなで

 シンジは溜息をつくと保父シンジ奥義『なでなで』とした、当然レイと同じ回数である。

「今日買い物に行ったら買ってくるからそれまで我慢我慢」

「うん・・・我慢する」

 おとなしくなり、静かなリビングが戻った。碇シンジ、エヴァンゲリオンパイロットと保父をこなす中学生。


 「林檎」の次の日のお話しです。またまたレイちゃんとアスカちゃんちょっとへっぽこ(アスカちゃんは大いにへっぽこですが)

 シンジ君、奥義『なでなで』を繰り出せば泣く子を静かにできます(笑)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 鶴