幸せの価値観






「お嬢さんを僕に下さい!」

 天道家居間。見慣れない若い男が早雲に頭を下げていた。

「あかねに一目ぼれしたから、結婚したい〜!?」
「あらあら、あかね、もてもてね。」
「自分でいうのもなんですが、僕の家は代々伝わるお金持ちです。
 僕は将来、父の跡を継ぎ、社長になる男です。決してあかねさんに苦労はさせません。」

 男はあかねと同じ年。大会社の御曹司だというこの若い男は身なりも整っていて、どこか気品を感じさせる。

「ふ〜ん、なかなかいい男じゃない?」

なびきの瞳が妖しく輝く。一瞬だけ。


「う〜ん、でもねぇ、あかねには・・・。」




「ただいまー。」

 玄関のほうから声がした。乱馬とあかねが帰って来たのだ。

 かすみが2人を出迎える。

「おかえりなさい、2人とも。」
「あんたたち、なんか大変なことになっているわよ。」

 後からやってきたなびきの楽しげな顔に乱馬とあかねは首をかしげる。

「なあに、おねえちゃん、なんか楽しそう。」
「いいから、早くこっちに来なさいよ。」
「???」

 ぞろぞろと4人は居間へと向かう。
若い男はあかねの姿を見るやいなや、すっと立ち上がりあかねの元へとやって来た。

「はじめまして、あかねさんvv」

 あかねと握手しようと差し出した男の手を、乱馬は素早くはねのけて、自分の背中の方へと隠す。

「触んな。」

 乱馬の低い声が男を威圧した。
乱馬は何だか嫌な胸騒ぎがして、この男をあかねに近づけてはならないと、そう感じたのだった。

 いつもと違う乱馬の態度。広い背中。あかねは後ろで胸が熱くなる。

守られてるの?私。

「・・・ありがと。」

 あかねは後ろから、そっと呟いた。

「おめーはよ、ごにょごにょ・・・」

 あかねは乱馬が何を言っているのか聞こえなかったが、乱馬の想いを感じずにはいられなかった。
だけど、この若い男はそんな2人の様子に気づことなく、話をすすめた。

「あかねさん、僕はあなたに一目ぼれしてしまいました。僕はあなたを愛しています。僕と結婚してください。」
「な゛っ!!」
「はぁ!?」

 乱馬の顔がみるみるひきつる。
平静を装う乱馬ではあるが、こうも真っ直ぐ直球を投げられては・・・。
自分でさえもまだいえぬその言葉。
見ず知らずの男があかねに伝えるその言葉。
ドラマのようなシチュエーション。
女なら心をときめかせるはず。
自分のような口下手で無骨な男より、素直に言えるこんな男の方が・・・。

 乱馬はあかねの顔をちらっと横目で覗き見る。

「この人、ここ、大丈夫なの?」

 あかねは自分の頭を指でさし、首を傾げていた。

 乱馬はほっとした。
あかねが鈍くてよかったと、いつもはその鈍さに腹のたつ乱馬であったが、
この時ばかりは心底あかねの性格に感謝した。

 だけども、男は相変わらず、なおも言葉を続けた。

「僕と結婚すれば、安定した生活・・・いや、それ以上。望むものすべて手に入り、
 何不自由することなく楽しく暮らしていけるのです。なぜなら、僕はお金持ち。
 父の会社を受け継ぎ、次期社長になる男。地位も名誉も思いのまま。」

「そういわれても、わたしには、」

 あかねはさすがに困惑し口をはさんだ。

「あかねさんの身辺は調べさせていただいてます。
 あなたに許婚がいることも、もちろん知っています。」
「だったら。」
「しかし、その許婚の方はこちらに居候の身というではないですか。
 そのような方があかねさんを幸せにできるとは思いません。」

 男は明らかに乱馬を見てそう言い放つ。

「あかねさんの幸せを望むのでしたら、あかねさんの幸せを考えるのでしたら、ご家族の皆さん、この僕と、」

 なおも話しを続けようとする男を、乱馬は強い口調でさえぎった。

「親の財産ひけらかして、人生語ってんじゃねーよ!!」

 男の顔がみるみるこわばる。

 乱馬が本気で怒った時の威圧感が、乱馬の強さを知らぬこの男にさえも伝わっているのだ。
多少のひがみも確かにあった、だけど乱馬はこの男がどうしても許せなかった。
本当は2、3発ぶん殴ってやりたかったが、自分を抑えるように、ゆっくりと話しだした。
一言一言、かみしめるように。

「あかねの幸せは、あかね自身が決めることだ。おれでも、周りでも、てめーでもねぇ。
 あかねなんだ。」

「乱馬・・・・・・。」

 あかねは嬉しかった。
心の奥が暖かいもので満たさせていくのを感じた。

乱馬を好きになって、よかった。
私のことをこんなにも考えていてくれてたなんて。

 あかねは心に決めた。乱馬と一緒に生きていこうと。

「わたし、乱馬といると幸せなの。」

 その言葉は自然だった。早雲と玄馬がつっこみを忘れるほど。

「そりゃあね、お金とかってあるに越したことはないと思う。でもね、そういうものを
 わたしは好きな人とわかちあいたい。」



 男があきらめて帰った後、あかねは鏡を見ながら乱馬と話す。

「わたしって、一目ぼれとかされちゃうんだねーvv てへへー」

 その様子を見て乱馬は少し不安になった。

やっぱりちょっと惜しかったとか思ってんのかも・・・いらぬ想いをめぐらせる。

「う、嬉しいのか?そういうのって?」

 聞きたくはないけど、聞いてしまう。

「え? ううん、ただね、」
「ただ?」
「うん、ただ、わたしも人並みにかわいいのかもって。ちょっと自信が持てたの。」
そう言って、恥ずかしそうに微笑むあかねの笑顔は、人並みどころか・・・
「・・・・・・(めちゃめちゃかわいい)。」
「ん?どうかした、乱馬?」
「いや、んー・・・・・・お、おれの・・・惚れる女だもん、そりゃかわいいさ。」
「え!? そうかな? えへへ。」
「そう。」


 乱馬といると幸せ それがあかねの幸せ
 あかねといると幸せ それが乱馬の幸せ

 それがふたりの幸せの価値観






                                        =おしまい=




呟 言
きゃ〜〜〜〜〜っ(爆) 初めて作った乱あ小説。
私の妄想の楽しみ方はこれまで漫画絵だったんです。
それを文章化して作ってます。なにぶん文章力・表現力・描写力すべてが欠落していますが、
軽い気持ちで見てもらえたら・・・喜びます(笑)
この話、実は他のサイトさまに送ってみようかとか考えながら作ったモノなんです。
結局できなくって。自分のサイトならいいかと思い・・・載せました。
これから、ちょこっとずつでもいいから向上していけたらと思っています。
読んでくださった方ありがとうです。おそまつさまでした。                ひょう


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