わたしの





 つながれた手。何とはなしに握ってくれた、大きな手。

嬉しかったの。
このまま、このままいられたらいいなって・・・。



 目の前に女の人がいた。
横断歩道を渡ろうとしてたら、車に轢かれそうになって、
あっ!て思ったら 隣に乱馬がいなくて、
その女の人の腕をつかんで、自分の胸に抱き寄せてた。

ほんの一瞬のこと。


「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう。」

 離れる2人。

「怪我とか、してません?」
「はい、大丈夫です・・・本当にありがとうございました。」

女の人は深々とお辞儀をする。

「いえ。」

 乱馬は軽く会釈をすると、わたしの方へ戻ってきた。
助けられた女の人の乱馬を見る、輝くその目が気にかかる。


乱馬をそんな目で見ないで。
乱馬を好きにならないで。

「びっくりしたな。」

 乱馬が話し掛けてくる。
だけどわたしは乱馬の瞳を見れないまま。

「綺麗な女の人だったね。」

そんなこと言いたいんじゃないのに。

「んー、そーだったか? 夢中だったからわかんねーよ。」
「綺麗だったわよ、乱馬って女の人に優しいもんね。」

だからもてるんだよって、
わたしは不安なんだからって、そう言いたかった。


 乱馬の顔が険しく変わる。

「・・・違うだろ、あの人は危ない目に遭いそうだったから助けたんだろーが。
 あかねが、んなこと言うなんて、ちょっと幻滅だな。」

 ショックだった。

 わたしは、せっかくつなげた手を離されて、見知らぬ女の人を、わたしとつないでた手でふれて
その上その胸に抱き寄せて・・・・・・。

嫌だったの。
目の前でそんなことされて。

わたしのやきもちっておかしいのかな?
醜い・・・?

重たい?


 押し黙ったわたしに気がついたのか、その少し後に手、差し出されたけど、
わたしはその手をさわれなかった。
他の人をさわったその手にふれられなかった。


その手にふれるのはわたしなの。
わたしだけ・・・じゃなきゃいや。
わたししか見て欲しくない。
その瞳に映るのはわたしだけ。

わかってほしい。



 乱馬と言葉を交わさぬまま、家に帰って・・・結局そのまま・・・。


晩御飯が何だったか、全く記憶はなく、
テレビを見てても頭には、

乱馬とあの女の人の・・・

だけど、隣にいる乱馬はいつもどおりで
ただわたしには話し掛けてはくれなくて、

嫌われちゃったかな?
変なやきもち、やいたから。
うざったいって思われたよね。

もう、手つないでくれないのかな・・・?

わたしはこんなに想ってるのに

軋む胸。息苦しい。

 隣でテレビを見て無邪気に笑う乱馬が、わたしをこんなに苦しめる乱馬が、
憎たらしいはずなのに。


好き。

大好き。




 お風呂をすませて廊下を歩く。
居間に人影。

 しんと静まり返ったその場所に、壁に背をもたれ眠っていた、乱馬。

 傍らに寄り添う。

 周りには誰もいない。


ちょっとくらいならいいよね?
目、覚まさないでね。

 祈るような気持ちで、そうっと乱馬の身体に腕を回し、胸に耳をくっつけた。

穏やかな鼓動。
わたしの好きな波長。
お母さんのおなかの中で聞いていた、懐かしい音。

こうしていると落ち着くの。

乱馬がここにいるって、わかるから。
わたしがここにいるって、感じるから。

だから、今は少しこのままで。
今だけはわたしのもの。
ここはわたしの。

わたしだけの。






                                 =おしまい=

nonさまへ差し上げます、きり番リクエスト小説です。
『あかねちゃんの独占欲』・・・ということで、そんな感じで作ってみました。
乱馬くんの独占欲は・・・というと裏側だったりで(汗)
あかねちゃんの乱馬くんに対する気持ちみたいなものが伝わるといいんですけど・・・
これ、表で大丈夫ですよね? ある意味ちょっと隠し?
なんだかあかねちゃんファンに怒られないかなぁ・・・とちょっと心配したりして。
という私もあかねちゃんファンなんですけど。一応に。
この続きなんて・・・(汗)
あかねちゃんの、乱馬くんに対するやきもちというか愛情というか・・・
そういうのが伝わってるといいんですけど。怖い?             ひょう

          何気に続き、見てみる? >>>ずっと、わたしの
          やっぱり・・・ >>>やめとく