あかね免許を取りに行く 「わたしがあてたんだもの、わたしが免許、取るわ。」 いつになくやる気のあかね。 「おめー、不器用なくせにできんのかよ?」 「できるもん、こういうのは運動神経がよかったら取れるっていってたし。」 「ふーん、ま、せいぜい頑張んな。」 「乱馬にいわれなくったって、頑張るもん。」 こうしてあかねが教習所に通うことになった。 乱馬はやっぱりあかねが気になっていて、 友達が通っているのを理由にして、教習所にやってきた。 「あかね、あかねっと。」 あかねを探す。 お、いた。 あいつがあかねの先生か? あかねの先生らしき、そいつは若い男。 しかもなんか格好つけで、やらしい目つき・・・な感じがした。 「なんだ、天道も通ってんのか・・・ふーん、どうりで早乙女が俺についてくるはずだ。」 「な、なんだよ。」 「気になるんだろ?そりゃなるよなぁ、密室に2人っきりだもんなぁ。」 「な・・・。」 そうか、密室に2人っきりか・・・いやだな。 「ち、違ぇーよ、あいつ不器用だから見定めて無理そうならおれが・・・。」 「どうでもいいけど、あの先生は気つけたほうがいいな。」 「どういう意味だよ。」 んなこといわれると不安になるぞ。 「他のやつから聞いたんだけど・・・どうやら次々に生徒に手、つけてるらしい。」 「な゛。」 「密室だしな、手とか触ったりされるし。」 「あかねはそんな尻軽女じゃねーよ。」 「お、やけに褒めるねぇ?」 「ち、違う! かわいくねーからっ!」 「はいはい・・・。」 やっぱり おれが習いにくりゃーよかった。 あかね、あいつと2人っきりかよ・・・ 無理にでも、止めさせなきゃ。 そう思いながら友達の運転する車の後部座席に座る。 発進。 教習所内のコースをぐるぐる運転してまわるらしい。 あかねの運転する車も例にもれず。 おれはやっぱり落ち着かず、あかねを探す・・・。 いた。 すぐにわかった。 よみどおりのひどい運転。 信号は無視・・・ありゃー、アクセルとブレーキ間違ってるな。 方向指示器と逆・・・右も左もわからねーのかよ・・・っとに不器用だな。 あんなのに乗せられるこっちの身にもなれっつーんだ。 あかねの隣・・・いや、悪くはないけど、 やっぱりおれが運転して、あかねに隣にいてもらいたいな・・・って考えてたら、 あかねの運転する車がふいに止まる。 今度はエンストかよ・・・。 でも、窓から見えたのは、両手で顔を覆ったあかねの姿だった。 泣いて・・・る? 心の底が ズキン とした。 お、おい、泣いてんのか? 今すぐ あかねのところにいって確かめたくなる。 隣にいるあのヤローが、あかねの肩に手を置いていて、 もう片方の手であかねの頭を撫でていた。 胸が痛む。 あかね、泣くなよ。 おまえの涙、他の男に見られたくねぇ・・・。 だいたい、てめー・・・そんなに気安くあかねに触んな! 友達の運転する車があかねの車の方へ近づく。 開いた窓越しに声が聞こえた。 「わたし、・・・不器用で・・・。」 「大丈夫、大丈夫、僕がちゃんと責任もって教えてあげるから。」 「・・・・・でも・・・。」 「心配しなくっていいから、ね、だから泣かなくていいんだよ?」 「・・・先生。」 車は通り過ぎて声は聞こえなくなる。 あかねの方を振り返って見れなかった。 そのままただ、悔しくて・・・ 気がつくと休み時間になっていた。足はあかねの元へ向かっていた。 あかねは・・・瞳が赤かった・・・。 やっぱりあいつの前で泣いたんだな・・・。 胸が苦しい。 「乱馬・・・きてたの?」 「わりーかよ。」 「・・・誰も そんなこと言ってないじゃない。」 「やめろ。」 「え?」 「むいてねぇ。」 「・・・・・」 「おれがかわりに取る。」 「・・・頑張るもん。」 「頑張ってどうにかなるもんじゃねぇだろ。」 「ひどい・・・。」 「最初からいってっだろ?おめーは世界一不器用な女なんだから、出来るはずがねぇって。」 「出来るもん!!先生は教えてくれるっていったもん!」 また、ヤローかよ。 「んなの嘘に決まってっだろーが!教わったってできねーもんは出来ねーんだよ!」 声が荒くなる・・・。 「・・・そんな風にしか、わたしのこと・・・見ててくれないんだね?」 ・・・・・涙? 「わたしが頑張るの、そんなに・・・おかしいの?」 やっぱり泣いてる・・・。 「い、いや、そんなつもりじゃ・・・。」 形成逆転。 「もう、いいよ、乱馬にわかってもらえなくったって・・・。」 「だ、だから、な?」 「・・・もうすぐ休み時間終わるから・・・行くね。」 あかねはヤローのいる車の元へ走ろうとする。 「ま、待て、おれも乗る。」 慌ててあかねの車の後部座席に乗り込んだ。 「見定めてやっから。」 「・・・いいのに。」 ヤローと2人きりは心配だし、涙、他のやつに見られたくねーからな。 おれが後ろで踏ん反り返って座っていると、ヤローはあからさまに怪訝な顔をした。 そりゃそうだよな。 こんなにかわいい子とせっかく2人きりになる機会なのに、 おれがそれを邪魔してんだから。 ま、おれの方に言わせると、てめーの方が邪魔なんだけど・・・。 「君、何なの?」 「は?」 なんなのってなんだよ。 「だから、あかね君とはどういう・・・。」 「こいつは許婚ですけど?」 「・・・・・は?」 聞こえねーのかよ・・・ったく。 仕方なくもう一度、大きな声で言ってやる。 「あかねはおれの、いいなずけ・・・フィアンセです!」 英語まで使ってやったんだ、このくらいの半端もんにも通用するだろ。 あかねを見ると、顔が赤い? おれを見つめるその瞳が・・・なんだろ。いい気持ち。 どうかしたかな? 「本当かい?あかね君。」 「乱馬って言うんです・・・わたしの、いいなずけ・・・なんです。」 どきっとした。 おれ、あかねの許婚か。言葉にされると胸に響く。 それであかねは顔が赤かったのか・・・。 相変わらずにぶいなおれも。 「ふ〜〜〜〜ん。」 むっ、なんだよ、その馬鹿にしたような態度は! 妙に張り詰めた空気の中、とりあえず発進。 ヤローの手があかねの肩や手に触る。 やたらめったら触ってるようにおれには見える。 触んなよ!! 本気できれそうな心と手を押える。 おれの理性に感謝しな。 震える手を押さえつつ、あかねを見つめる。 真剣な顔。 一生懸命なあかねも・・・いいな。 だけど、あかねはやっぱり、 相当に不器用で、前に進まなきゃいけねーのにバックするし、 ライトつけるのにワイパー動かすし・・・不安定な車の動き。 ヤローは悠長にあかねにセクハラしている場合ではなくなる。 とはいえおれ自身も、相当に揺れる車に身体を固定させるのは大変だった。 車は止まる。 「やっぱり・・・無理。」 あかねはうつむく。 だからやめとけって言ったのに・・・。 「大丈夫、大丈夫、僕が教えたらちゃんとできるようになるから、ね?」 なにが ね? だ。 無理だよ、おれが習う。 「ううん、もういいです。」 あかねの手に滴。 あぁ、もう・・・。 おれは後部座席から身を乗り出すと、あかねの手を握りしめた。 ヤローは自分のポジションを取られたからか、 不機嫌そうな顔でおれたちを見ている・・・が、気にしない。 「あかね。」 出来るだけ優しい声を出す。 「・・・乱・・馬。」 顔をあげたあかねは、涙で頬が濡れていて・・・かわいいな、やっぱり。 濡れた顔を胸に引き寄せて、そのまま抱きしめる。 「いいよ、おめーは無理すんな。おれが、おれが代わりに取るから、な?」 「・・・・・・。」 「こんなに悲しい想いまでして、やんなくていい。 ・・・おめーがこれ以上傷つくのを、おれは見れない。」 おれも もうこれ以上、傷つきたくない。 「・・・おれの隣・・・助手席におめーに座っててほしいからさ。」 「・・・本当?」 「あぁ、あかねだけの・・・指定席ってやつだから。」 「うん。」 「それにな。」 「うん?」 「おめーが心配で運転なんかさせられねーよ。 あかねにもしものことがあったらおれは・・・ これを最初に言っとけばよかったのにな・・・。」 「乱馬。」 「ごめんな。」 「ううん・・・ありがと。」 そうして乱馬は運転免許を取りに行く。 指定席にあかねを座らせるために・・・ =おしまい= 呟 言 あかねちゃん免許取れず編 何となくの乱馬くん心の中。果たしてちゃんと伝わっているかなぁ・・・ この後に乱馬くん免許を取りにいくを読まれるとよいかとは思うのですが、 まぁ、結局ここのあかねちゃんが受けたようなことを乱馬くんが受けるというような内容でして、 何となくのあかねちゃん心の中って感じです。 そんでも読んでいいなって方はここから >>>乱馬免許を取りに行く もういい、または実は乱馬くん免許を取りにいくから読んでしまったかたはここから >>>もどる ここまで読んでくれてありがとさんです。 ひょう