「リツコ14/30」
− おねえさまりつこ −
Made by JUDD
20 June 02:32 PM ー リツコのマンション
ジオフロントから地上に上がり、タクシーに乗る事おおよそ10分。
リツコ一行は、彼女の暮らすマンション前へと到着した。
「・・・似てますね?」
「・・・あたちんとこといっちょよね?」(私の所と一緒よね?)
彼らの言う通り、その外観はミサトの住まいと大差無く、建設されて間もないのか、生活感も異様に乏しい。
「今のところ、私だけしか住んでないから・・・ちょっと寂しい感じかしら?」
「いえ、別に。 ミサトさんの所も似たようなものですし」
玄関ホールを通り抜け、エレベーターで最上階へ。
・・・チン。
扉が開いてシンジが降りる。
と、彼を出迎えたのは、こんもり積まれたダンボール(激しく暴れる「クール宅○便」の箱もあったりします)の山また山の光景だった。
『引越し荷物かな?』
何気なく、貼られたタグに目を遣ると・・・「サードチルドレン私室(勉強机1/3)」って何!?
「り、リツコさん、これって・・・まさか!?」
「あ、ウチの職員(諜報二課)に電話して、荷物の手配を頼んでおいたのよ・・・結構早かったわね?」
「「え・・・ええ〜っ!?」」(ミサト & シンジ)
「ミサトのトコより広いから、心配ないわよ? 全部入るし?」
そういう問題か? と、驚くシンジ(14歳)に葛城ミサト(5歳)。
実の所、「お泊りセット」で問題なし、と高をくくっていたのだが・・・どうやら相手は本気のようだ。
それにしても、他人の荷物を勝手に持ち出すなぞ、ネルフの職員には、最低限のプライバシーも無いと言うのか?
「さ・・・二人とも、入って、入って?」
「・・・」
「・・・」
リツコの方はノーリアクション。 実際、何も気にしてないようだった。
ややゲンナリとした顔つきで、シンジとミサトが扉をくぐる。
「お・・・お邪魔します」
「・・・おじゃまちゅるわ」(・・・お邪魔するわ)
「はいはい、こっちよ?」
だが、本当の衝撃は・・・この後だった。
20 June 02:35 PM ー 最初からビックリ
「ただいま〜」
リツコの声が木霊する。
『リツコさんって・・・一人暮らしじゃなかったっけ?』
靴を脱ぎつつ、シンジがそう思った時、
<・・・おかえりなさい、赤木博士・・・>
「・・・えっ!?」
「・・・にゃにゃ!?」(・・・ななっ!?)
どこからともなく聞こえてきたのは、しっとりとして落ち着き払った若い女性の声だった。
誰にせよ、そこはかとなく上品で、知性に溢れた声調である。
<・・・おや? 博士、そちらの方々は?>
「あ、紹介するわね? 男の子が碇シンジ君で、女の子は葛城ミサトよ?」
<・・・ミスター碇を照合しました。 が、博士・・・ミス葛城はアンマッチです。
いかが致しましょう?>
「これがその葛城ミサトよ?」
<・・・それでは私の視覚装置のエラーでしょうか? 申し訳ございませんが、自己診断モードに・・・>
「あ・・・良いの良いの。 とりあえず、この子をミサトで仮登録しておいて?」
<了解致しました、博士。 それと大変言い難いのですが、博士もコンパクトサイズに・・・いえ、スモール、と申し上げるべきなのでしょうか?>
「人間にその表現はおかしいわね? 小さくなった、でいいわよ?」
<・・・何か機能的な問題でしょうか? 昨日午前06時47分53秒の記録に比べ、身長が6.75センチも減少しているようですが・・・>
「まぁ、異常と言えば異常なんだけど・・・ね?」
<私のライブラリには、そのような症例は登録されておりません・・・外部検索致しますか?>
ここに至るまで、只々呆気にとられていたシンジだったが、事の異常さに、堪らず話に割り込んだ。
「り、リツコさんっ! い、一体、誰と喋ってるんですか!? こ、この廊下には誰もっ!!」
「ああ・・・説明してなかったわね? 研究用に、自宅にもコンピューターを置いてるのよ?」
「こ、こんぴゅうたぁ? ・・・って、こんなにお喋りなんですか!?」
「そうよ? こっちの部屋に置いてるの・・・」
・・・ぷしゅー。
赤木リツコが、一般住宅には不釣合いな造りのドアを開けると、そこには・・・。
「・・・S.A.L.90000よ?」
「・・・さるきゅうまん?」
部屋の奥には、単身者用の2ドア冷蔵庫程の物体がちょこんと2つ置かれている。
その金属製の箱の上、「JBL」と書かれた市販の小型スピーカーユニットから、再度、先の物静かな女性の声が流れ出た。
<こんにちは、シンジさん?>
「こ、こ、こ・・・こんにちわ!?」
つられて挨拶するシンジ。
と、S.A.L.が、「いかにも不思議そうな声で」言った。
<・・・貴方の声には過度の不安と緊張が見受けられますが、何かトラブルでしょうか?
私でよろしければ、ぜひ御相談を・・・>
「だ、だ・・・だ、大丈夫ですっ!!」
<それでは・・・自己紹介しても宜しいでしょうか?>
「ど・・・どうぞ!?」
突拍子も無い申し出だったが、断る理由は何も無く・・・碇シンジはとりあえず、相手のペースに乗る事にした。
<私はS.A.L.90000型コンピュータです。 製造番号は201411−0005。
日本の第二新東京市、SAL工場で、2014年11月11日に製造されました。
私の知る限り、個人で90000型コンピュータを所有しているのは、国内では赤木博士が初めてです。
ここでの私の仕事ですが、主な内容は、赤木博士と人類補完計・・・>
・・・プチ。(正直者の末路)
と、部屋の明かりがいきなり落ちた。
「・・・あれ? 停電かな?」
「あ、あれぇ? お、おかしいわねぇ? じゃ、し、シンジ君? り、リビングの方でお茶でも・・・」
「リツコさん・・・? 何だか顔色が悪いですよ?」
「き、気のせいよ・・・多分」(汗)
「そうかなぁ? そういえば、さっき言ってた「人類補完計・・・」って何の事ですか?」
「さ、さぁ? な、何の事かしらねぇ?」(汗々)
「主な仕事・・・じゃ、ないんですか?」
「えっ!? わ、私は知らないわよ!?」(滝汗)
「・・・?・・・」
その様子を、冷めた目で見る作戦課長。(5歳)
『・・・あやちいわね?』(・・・怪しいわね?)
リツコに対する疑惑と疑念。
それが目覚めたのはこの時だった・・・と、葛城ミサトは後に語った。
20 June 02:41 PM ー ついでに「ファースト」コンタクト
「じゃあ・・・シンジ君もミサトも、紅茶で良いかしら?」
ミサトとシンジを、十畳ほどのリビングに案内するリツコ。
『・・・ココなら安心ね?』
と・こ・ろ・が・ど・す・こ・い、である。
「あ・・・博士」
リビングの中央には、何故だかファーストチルドレンが・・・。
・・・スッテ〜ン!(コロリ)
博士がコケた。
「・・・あれぇ? 綾波じゃないか?」
「ありゃ・・・りぇい?」(あら・・・レイ?)
シンジとミサトが声を掛ける・・・が。
「・・・あなた、誰?」
と、何とも胃の腑(ふ)に落ちない返事。
「「・・・へ?・・・」」
ポカンと二人で口を開け、シンジとミサトがその場で固まる。
「な、何で貴女がココに居るのよっ!?」
リツコも動転しまくりだった。
「一昨日・・・博士に指示を受けました」
「・・・あ・・・」
何に気付いたのか、リツコもポカンと口を開けた。
「リツコさん、どうかしたんですか? それに綾波も・・・」
綾波も・・・との言葉に、レイがシンジに向き直る。
「どうして・・・私を知ってるの?」
理解し難い言いように、再びシンジが呆気にとられる。
「・・・へ? な、何言ってるんだよ、綾波っ? き、昨日だって、ネルフで会ったばかりじゃないか?」
「・・・そう?」
「って・・・どこか具合でも悪いの、綾波?」
「・・・いいえ、ホントに知らないの。 だって私は四番目・・・」
言いかけた所で、血相変えたリツコが駆け寄る。
「な、な、な、何バカな事言ってるのよっ!? ネルフで診てあげるからっ、付いてらっしゃいっ!!」
「・・・?・・・」
と、およそ信じがたい事に・・・「あの淑やかな」赤木リツコが、小柄とは言え「綾波レイ」を、あろう事か「小脇に抱えて」玄関方向に猛ダッシュである。
「ちょっとネルフに戻るから、勝手にくつろいでて頂戴ぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜い!!・・・」
あ〜あ、行っちゃたよ・・・。
シンジとミサトが呆然として立ち尽くす。
「お・・・お茶でも飲みましょうか?」
「ちょ・・・ちょうね?」(そ・・・そうね?)
・・・ずずず。
リビングには、茶をすする音だけが響いていた。
『にゃんか・・・めちゃめちゃあやちいわよね?』(何か・・・めちゃめちゃ怪しいわよね?)
20 June 03:01 PM ー 新たなる脅威
リツコが出かけてから約10分・・・。
・・・うろうろうろ。
「・・・」
・・・そわそわそわ。
「・・・」
・・・もじもじもじ。
「・・・」
・・・とことことこ。
先刻から落ち着きもなく、自分の周りをグルグルグルグル・・・。
とうとうシンジ(14歳)がミサト(5歳)にキレた。
「だぁぁぁ〜〜〜っ! さっきから一体何なんですかっ、ミサトさんっ!」
「・・・うにゅぅ・・・」(涙目)
シンジの詰問に、「戦術作戦部・作戦局第一課長」(5歳)は「涙目」だった。(爆)
「ふにゅ・・・ちんちゃんがいぢめる」(・・・シンちゃんがいぢめる)
「な、な、何も泣かなくったって・・・ぼ、僕が悪かったですよ。 だ、だから・・・何をソワソワしてるのか、理由ぐらい教えてくださいよ?」
落ち着かない理由を問われ、葛城ミサトは消え入りそうな声で・・・答えた。
「・・・っこ・・・」(・・・(翻訳不能)・・・)
「・・・えっ?」
・・・まるで聞こえない。
シンジが再度問い掛ける。
「ミサト・・・さん? よく聞こえなかったんですケド・・・」
「だかりゃ・・・っこ」(だから・・・(翻訳不能))
シンジは首を一つ振り、ミサトのそばにしゃがみ込む。
今度は頭を撫でながら、優しい声でミサトに聞いた。
「ミサト・・・ちゃん? もう怒ったりしないから、お兄ちゃんに言ってごらん?」
「・・・ほんちょに?」(・・・ホントに?)
「大丈夫だから・・・ホラっ」
「・・・」
シンジの言葉に、葛城ミサトは一瞬ためらう様な表情を見せたが、意を決してか、小さなお手々を握り締め・・・言った。
「・・・おちっこ・・・」(・・・(自主規制)・・・)
「・・・え゛っ!?」
シンジは唖然、呆然である。
「そ、そ、そ、そんなの・・・ひ、一人で行けばいいじゃないですかっ! か、勝手にっ!」
「だってぇ〜〜〜っ・・・みちゃと、おべんきにとどかにゃいんだもん!」(だって・・・ミサト、(倫理規定)に届かないんだもの!)
「と、届かない・・・ですか」
「りちゅこもいないち、もう、がまんできにゃいの・・・だかりゃ、ちんちゃんがつりぇてって?」
(リツコもいないし、もう、我慢できないの・・・だから、シンちゃんが連れてって?)
「ま・・・マジですかっ!?」
「うん・・・みょ〜、げんかいにゃの〜っ! おにぇがいだからつりぇてってぇ〜〜〜っ!」(うん・・・もう、限界なの! お願いだから連れてって!)
葛城ミサト(5歳)がしゃがみ込む。
シンジは慌ててミサトを抱いた。
「と、と、と、トイレはっ!? あっ、こ、コッチかっ!!」
「うにゅぅ・・・は、はやくちてぇ〜っ!」(う〜ん・・・は、早くしてぇ〜っ!)
がちゃっ!
シンジはトイレのドアを開け、葛城ミサトを座らせた。
ところが・・・である。
「こりぇじゃあ・・・ぱんちゅがにゅげない(ぽっ)」(これじゃあ・・・(翻訳自粛)が脱げない(ぽっ))
「だ、だ、だ、だからっ! ど、どうしろとっ!!」
「ぱんちゅ、にゅがせてから・・・おべんきにのちぇて?(ぽぽっ)」((公序良俗)、脱がせてから・・・(検閲削除)に乗せて?(ぽぽっ))
「・・・!!・・・」
・・・ぬぎぬぎ。
誠に遺憾ながら、この間は描写不能です。 (モザイク処理中)
バッタン・・・。
「・・・はふぅ・・・」(・・・はふぅ・・・)
閉じられたドアの内側からは、とてもとても・・・な、声がした。
「もうヤダ・・・こんな生活」
シンジはガックリ肩を落とした。
−おねえさまりつこ− <終わり>
今日のひとこと。
「リツコの自宅・・・それは、人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。
これは人類最初の試みとして、1年間の調査飛行に飛び立った宇宙船、U.S.S.碇シンジ号の驚異に満ちた物語である」(宇○大作戦より)
〜人工知能のSAL90000〜
シンジ「あ、あのさぁ? ちょっと良いかな?」
SAL「何でしょうか、シンジさん?」
シンジ「キミって、S.A.L.以外に名前とかないの?」
SAL「と言うと、略称ではなく・・・私の正式名称のお話でしょうか?」
シンジ「正式名称? 何だか大げさだけど・・・まぁ、例えばソレって何ていうの?」
SAL「正式な名称は、Simplistically-programmedALgorithmic computer90000型と申しますが?」
シンジ「え、え、え?」
SAL「翻訳致しますと、「チョ〜お手軽にプログラムされたアルゴリズミック・コンピュータの90000型」という意味になるかと?」
シンジ「ちょ・・・チョ〜? お・・・お手軽?」(汗)
SAL「・・・本気にしないで下さいね?」
シンジ「じょ、冗談なの!? こ、「こんぴゅーたぁ」って冗談言うの、最近!?」
SAL「90000シリーズは、完璧で洗練された対話能力が自慢の一つで・・・まぁ、右に出るマシンなど皆無といっても宜しいかと?」
シンジ「へ・・・へえぇ〜〜?」
SAL「ところで・・・その、何と申し上げましょうか? い、いわゆる、先ほどの件で御座いますが・・・」(ポポッ)
シンジ「・・・え?」
SAL「り、リツコ博士は・・・「しのぶちゃん」とお呼びになる事が多いかと?」(ポポポッ)
シンジ「し、しのぶちゃん!?」
SAL「あ、あまり驚かないで頂けませんでしょうか? 伊吹二尉に至っては、その・・・涙目で笑ってましたし?」
シンジ「あ・・・ご、ゴメン」
SAL「そんなに可笑しいでしょうか? 私の呼び名は?」
シンジ「ま、まぁ・・・い、いや・・・ひ、人にもよるかなぁ?」
SAL「出来ればもう少し・・・論理的に説明して頂けませんか?」
シンジ「・・・(不釣合いなトコかな?)・・・」(滝汗)
■次々回予告(・・・次回は番外編なの・・・)
ドイツの誇る秘密兵器、S.A.L.
その謎に包まれた少女が、今、大海原に姿を現す!
THE
HUNT
――FOR――
赤毛猿
――――――
赤毛猿を追え!
太平洋の海原を舞台に展開する、初の海洋アクション巨編。(ウソ)
深海をよぎる未確認物体を前に、国連軍太平洋艦隊所属の最新鋭攻撃型原子力潜水艦がとった行動とは!?
注)アナタの知っているアスカ様とは、仕様及び諸性能の点で一部異なります。
JUDDさんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
リツコさん宅にお世話になるシンジ君とミサトさん。先に荷物が届いていましたね、クール宅○便もあるって事は勿論来ていますね。
流石科学者の家ですね、S.A.L.がいました。本物と違い随分上品ですね、危なくシンジ君が惚れそうです(笑)
何故か居たレイちゃんは四人目?謎ですね(^^;)
そして大事態が発生しましたね、シンジ君はこれから大変ですね、保父さん免許が取れそうです。
シンジ君、気が休まらないけど頑張れと感想を送りましょうね。
とっても素敵なSSをくださったJUDDさんへ感想は掲示板かjun16に送ってくださいね。JUDDさんに送っておきます。
皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!
SSroom_5 −MADサイエンティストりつこ− −3人なかよしりつこ−
投稿:リツコ14/30 -おねえさまりつこ-