少年よ珍話になれ

第参話

お正月なの

Made by 幻都























――これは三人のお嬢様方に日夜虐げられる一人の哀れな少年の真実の物語である――






































――午前五時

その少年は布団のなかでなにも知らずにすやすやと布団の中で寝ていた。

枕元ではペンギンの目覚ましが静かに時を刻んでいる。

実に平和な朝の光景である。

だがサードチルドレンである彼に天は心の休まる暇など与えなかった。

スッと襖が静かに開いて二人のお子様と三十路前のお姉さんが入ってきた。

侵入者に少年はちっとも気づかない。

三人組はニヤリと笑った。

「起きろおおおおおおおお!!シンジ〜!!」

ドゴッ!

赤毛のお子様のジャンピングブローがシンジの腹をとらえた。

少年は声にならない叫びを上げてベットで悶える。

だが、第二の危機がすぐそばまで迫ってきてたのだ。

「はっ、レイ様」

気づいた時にはもう遅い。

「起きて!シンジお兄ちゃん」

青い髪のお子様の足がゲシゲシとシンジの顔を踏みつけた。

「イタイ、イタイよ!」

たまらずにシンジはガバッと起きあがった。

だがその時にはもう第三の危機が迫ってくてたのだ。

シンジの瞳がくわっと見開かれる。

とってもアダルトな女性が飛びかかってきたのだ。

「おきなさあああああああい!」

「起きてるって…グハア!」

ミサトの膝がシンジの口に叩き込まれた。

これがいつもの葛城家の主夫、碇シンジ君の日常である…



「うう…」

口から血をだらだら垂らしながら味噌汁をかき混ぜた。

涙と鼻水が味噌汁に入らない様に気をつける。

もし鼻水が入ったりしたらどうなるか…

恐ろしすぎてここではいえない。

シンジはちらりと後ろの小姑達をみた。

「ちょっと〜まだなの?ボケナス」

「学校遅刻しちゃうわ、タコ」

「リツコに怒られたらど〜してくれんのよ!?オラぁ!酒もってこんかい!このクソガキが!」

何故かすでに出来あがってる人がいた。

「あ…あのぅ…ミサトさん、勤務前にお酒はちょっと…」

シンジは恐る恐る注意した。

出来あがっているこの人にこんなこと言ったらきっと怒られるに違いない。

だがミサトはニッコリと笑って…許してくれるわけなかった。

シンジの胸倉がグイッと掴まれる。

「ひ…ヒイっ!?」

「あー?なんか文句あんの!?」

「も…文句ないですぅ」

「ちゃんと人の目ェ見て謝りなさいよォ?」

「うう…ゴメン」

「すいませんでしょ!?カスが」

シンジは突き飛ばされた。

冷たく硬い床の感触が体を受け止める。

「うう…なんで僕が」

ドコっ!

小さな足がシンジの足を蹴りをいれた。

小さいながらに世界を狙える蹴りだった。

「うう…誰」

シンジはその女の子を見上げた。

その時偶然だったが少女のスカートの中身がちらりと見えてしまった。

「ちょっと今あたしのパンツ見たでしょ!?」

勘のいい少女はその事に気づいたらしい。

赤鬼のような真っ赤な顔をして問い詰めてきた。

シンジは手を振って体を振って全面否定をした。

「見てません!!本当に見てません!!ウサギさんがニンジンくわえてアッカンベーしてるかぼちゃパンツなんて見てましぇん!」

「しっかりと見てるじゃないのよ!!」

バキッ!!

少女が振るった金棒で殴られバカ正直なシンジ君は吹っ飛んだ。

「ナイスショット!」

レイちゃんとミサトさんはぱちぱちと拍手した。

シンジは床でピクつきながらガラの悪いペンギンに突つかれながらあえいだ。

「ううう…もう許してよぉ」

「ああ!?」

サラダにのっかった刻んであるハムを見つめながらレイちゃんは声を上げた。

「シンジお兄ちゃん、私、あんだけお肉は入れないでっていったのに…殲滅ね」

レイちゃんはハリセンを構えた。

目がイッちゃっている。

シンジの顔がナスの様に見る見るうちに青くなった。

「で…でもレイ様、お肉も体によろしいかと…。」

「なにいってんの、食べれないったら食べれないのよ!!私を豚にする気ィ!?」

レイはお行儀悪くテーブルに足を載せアスカ譲りの啖呵を切った。

「あ〜あ、シンちゃんやっちゃったぁ〜」

うれしそうにそう言うとミサトはムチを取り出しピシッ!っとしならせた。

「あんたバカァ?あんだけレイはお肉が食べられないってこの前耳かっぽじって聞かせたでしょ?」

ズシン!

金棒が椅子を粉砕する。

自分くらいある金棒を少女は軽々と振りまわす。

鬼に金棒とはこの事だ。

ゴ○ラよりも当社比数百倍はおっかない同居人たちにシンジは髪の毛の先まで震え上がった。

「も…申し訳ありません、もーしわけありません!」

泣いて誤るシンジ。

レイは土下座するシンジの頭をグリグリと踏み付けた。

「クスクス、あなたが死んでも変わりはいくらでもいるのよ?」

「うう…許してよぉ、みんなァ僕を苛めないで」

三人はお互いの顔を見まわすとニヤリと笑った。

それはとってもサディスティックな笑みだった。

「イヤ」

「ウワアアアアアア」

シンジは泣き叫んだ。

「誰か助けてよぉ!父さん、母さん、僕を助けてええええ」

「シンジ」

見れば髭親父が目の前にいた。

「父さん!助けて」

ゲンドウは眼鏡を上げた。

そしてにやりと笑う。

シンジは気づいてなかったがすでに周りにいたおっかない人達は消えていた。

「突然だが新しい母さんを紹介する」

唐突だった。

しばらく間が空いてからシンジは叫んだ。

「再婚するの!?」

「ああ、こちらがお前の新しい母さんだ」

ゲンドウは隣にいた女性を指した。

隣の女性はとっても体格が良かった。

なんかゴツゴツしてた。

プロレスラー並の体格だ。

そのナイスバディ(?)には何故かシワ一つ無い、ピンク色のエプロンをまとっている。

肌の色は紫色をしており…髪の毛はおろか頭皮すら存在していないツルツルの頭には角が生えていた。

結論、人間じゃなかった。

「これが、新しい母さん…」

ニイイイイイイイイ…!

その女(?)は笑った。

そしてシンジの方を向き直ると軽く会釈をした。

「そう、私がシンちゃんの新しいママになるエヴァゲリショゴーキ・ユイでっす(
はあと)」

「なんなんだよこの人!?大体この人あなたのお母さんになりたいわって言うより早く人間になりたいって感じだぞ!?ねえ、父さん!!」

「綺麗だ…ユイ」

父は
ユイを見つめながらニヤニヤしてるだけだった。

シンジは気づいた。

そうか…父さん致命的な変態だったんだ。

「シンちゃん、私のことママって呼んでくれなくていい…だから」

そいつはニヤリと笑った。

「ハニーって呼んでェ、ウオオオオオオオ!!(意味不明)」

「うわあああああ!!」

身の危険を感じシンジは逃げ出した。

その後姿を見つめながらユイは静かに微笑んだ。

「あらあら、シンちゃんったら、もう」

そう呟くと両手を地面について四つんばになった。

それからもう一度ニッコリ笑うと

「逃すかアアアア!!」

両方の目がビカっと光った。

覚醒したエヴァは獲物めがけて四つんばで走り出した。



シンジは逃げた。

闇の中をひたすら逃げた。

だがどこまでいっても奴は追ってくる。

「うわあああああああ」

お待ちなさアアアアいいいい〜♪シンちゃああああん

すでにユイの体は巨大化していた。

それが地響きを立てながらこっちに向かってくる。

「こんなバケモンほったらかして地球防衛軍は一体何をしてるんだ!?」

あいにく地球防衛軍は動きそうになかった。

動いたところでバル○ン星人にてこずっている

いる連中が暴走した奴の前で何が出来ると言うのだ。

この分だとウル○ラ兄弟も彼のために動きだしそうにない。

「うわああああああ!」

ガシッ

とうとう巨大な奴の手に捕まった。

そのままシンジはゆっくりと奴の口元へと運ばれていく。

シンジは手足をバタバタさせたりして必死に抵抗した。

しかし相手は最凶ママ、エヴァゲリショゴーキ・ユイ、使徒より強いのだ。

最強と言われている使徒ゼルエルなんて彼女にとっては朝ご飯に過ぎない。

相手が悪過ぎた。

シンジ…母の中へ帰りなさい

「嫌じゃあああああああああ」

パクッ…

必死の抵抗は空しくシンジ君は食べられちゃいましたとさ。チャンチャン♪






























「はっ…!」

シンジは目を覚ました。

汗でパジャマがぐっしょりだ。

心臓がまだバクバクいっている。

「な…なんだ今の夢は…ある意味EOEよりたち悪いぞ」

時刻は五時。

いつもの起床時間である。

バクバク心臓ちゃんの鼓動を落ち着けてからシンジはベットから起きあがった。

「あ〜あ、今日も一日こき使われんのかな」

そう言えば今日は何かの祝日だったっけ…

シンジは大きく伸びをしながら思った。

「ええっと…今日は確か」

その時襖が勢いよく開いて何かが部屋に飛び込んできた。

明けまして!!おめでとォ〜!!

「がはっ!!」

三人の同居人たちが放った蹴りがシンジを勢いよくぶっ飛ばした。

シンジはそのまま壁に頭をぶつけ床に沈んだ。

「明けましておめでとシンちゃん」

「早くあたしと初日の出を見に行くのよ!」

「今年もよろしくね、シンジお兄ちゃん」

三人は朗らかに笑いながらった。

僕が一体何をしたってゆ〜んだ?

頭からピューピュー血を吹きだしながらシンジは強く思った。

今年もろくな事無いかもしれん。

その日は一月一日、元旦。

少年が見た夢は紛れも無い初夢だった。



紋付袴を着たシンジの頭には包帯が巻かれていた。

目の前にはおせっち料理が並んでいる。

シンジとリツコが作ったものだ。

レイとアスカが手伝いたいと言ってきたが遠慮した。

怪我して料理がおせっ血料理になったら大変だからだ。

めでたい日に鉄の味がする料理を食べたくないのだ。

そして驚くべき事実だがあのリツコがかなり料理がうまいということがわかった。

さすがレイがお母さんと慕うだけのことがある。

おかげでおいしそうなおせっち料理を作ることができたのだった。

「あけましておめでと〜」

シンジ達チルドレン(つまり子供と言う事さ)はオレンジジュースをミサトとリツコはビールで乾杯した。

「はい、私からのお年玉よ」

「わぁ〜い」

シンジ達はさっそくミサトからもらった袋をあけてお年玉を見てみた。

三人はぶっ飛んだ。

「ミサトさ〜ん」

シンジは顔を引きつらせた。

中に入ってたのはなんとビール引換券だった。

「なんなんですかこれは!」

「見てのと〜りよん、あっ、有効機嫌十五日までだから、使わないんだったら私に頂戴ね」

ミサトはニヤニヤしながら手を伸ばした。

だがシンジは渡そうとしない。

「いいです、こんなのでも父さんにでも売りつければ金になるんですから」

「え〜」

ミサトは頬を膨らませた。

最初からビール目当てだったのだ。

「ねえねえ、アスカちゃんはなんだったの?私福引券だったの」

レイのお年玉袋には福引券が一枚入っていた。

つまり使えないってことだ。

「あたしは肩叩き券だったわ、もうミサトったらお金が無いからってぴちぴちのあたしにはこんなのいらないのに」

「ほほほほ、まっ、なにもお金だけがお年玉じゃないってことよ、大体あたしの親なんてピンポン玉落としてお年玉って言ってのよん、それに比べれば」

「あんたって不憫だったのね」

リツコが冷たくそう言うとミサトは泣き出した。

「無様ね、こんな駄目保護者はほっときましょう、はい私からのお年玉よ」

「えっ、リツコさんの?」

「なによ、いらないの」

「いります!いります!」

シンジは慌てて受け取った。

だが手にしたお年玉袋に底知れぬ恐怖を感じた。

開いたとたんに爆発するんじゃないか?

まるで安全ピンを抜かれた手榴弾を手に持っている様な不安が三十秒ほど流れた。

「すご〜い!十万も入ってるわよ!」

アスカがうれしい声を上げた。

彼女の手の中には一万円札十枚が扇になっている。

「ありがとう、お母さん!」

続けてレイ。

リツコは笑いながら

「コラ、レイ、お姉ちゃんでしょ、あなた八歳でしょ?私があなたのお母さんなら十二歳で産んでるはずだもの」

つまり私はハタチよと言いたいらしい。

「何がハタチよ、もう三十じゃない、十分親子よ」

泣いていたはずのミサトが酒を飲みながらぼそっと呟いた

リツコの目が初号機のように光った。

「ぬあんですってええええええええ」

「ほんとじゃないのよ、リツコおばさん」

「なによ、あんたなんかビール腹のオバタリアンじゃないのよ!」

「うっさいわね!私は二十代よ、少なくてもあんたより若いわ」

「くっ、でもたった一年の差じゃないのよ!」

「何よ、金髪ババア!」

「うっさい、酒徒」

とうとう掴み合った二人、このままでは流血沙汰になってしまう。

「あの…ケンカはよくないです…」

「ああ!?」

「もういいです、しくしく…」

シンジには止められなかった。

酒が入ったこの二人を止めるには飢えた猛獣と素手で戦う勇気が必要なのだ。

結論、彼にそんなんできたらあの映画は無かった。

「お〜い、葛城〜、遊びに来たぞ」

突然玄関から見知らぬ男が勝手に入ってきた。

取っ組み合ってた二人の手が止まった。

二人は男の顔をまじまじ見つめる。

誰ですか、あんた。

シンジがそう言おうとした瞬間だった。

「加持さん」

アスカが男の足に飛びついた。

加持はにこにこ微笑みながらアスカを抱き上げた。

「加持、いつから日本に帰ってきたの?」

ミサトは呆然とした顔で尋ねた。

加持はアスカの髪を撫でるとにいっと笑った。

「こいつと一緒にさ、こいつの保護者としてはるばる日本へとやってきたのさ」

「はっ、保護者?」

シンジは加持の前へとツカツカと歩み寄った。

ニヒルに口元を歪めながら

「この僕を差し置いて…保護者面をせんでいただきたいな」

「君はサードチルドレンの碇シンジ君だな」

名前を呼ばれシンジの眉がぴんっと跳ね上がる。

「なんで僕の名を?」

「あっちの世界じゃ有名さ、なんの訓練も無しにエプロンをつけた恥ずかしい人造人間を動かしたサードチルドレン、あっ、もちろんレイちゃんの事も知ってるよ」

あっちの世界ってどこの世界やとシンジはそう思ったが別に気にはならなかった。

「まあ、実力って奴かな」

シンジは自慢げにそう言うとストローをあたかもタバコのようにくわえた。

「ふっ」

加持もタバコをくわえ火をつける。

両者一歩も譲らず!(何を?)

そんな中加持の腕の中でアスカちゃんは手をくんで瞳をウルウルさせていた。

ああ…あたしを巡って二人の男が戦おうとしているのね、つい最近まであたしは加持さんだけの物だったのに、今は別の男に気持ちが傾いている、浮気なあたし、許して、加持さん、

でもあたしはシンジの事も気になるの、ああ、やめて!二人とも!あたしのために決闘なんかやめて!ああ…加持さん、シンジ…あたしって罪な女だね…

乙女心の暴走してアスカは別の世界に行っている。

「なあ、シンジ君」

加持が口を開いた。

「なんです?」

シンジは静かに聞き返す。

加持はアスカに指をさしながらへらへら笑った。

「こいつ寝小便酷いだろ」

「えっ?」

アスカとシンジは声を上げた。

「いえ、そんなことありませんが」

「そうか、いや俺といっしょに暮らして頃はもうしょっちゅうシーツを汚してな…もう、あの時は大変だった」

「ちょっと加持さん!!」

アスカは赤い顔をしながら加持の頭をポカスカ叩く。

「ははは、まあそれは置いといて俺からお年玉をやろう」

加持からもらったお年玉な中身は…

シンジは袋をさかさまにしてゆすった。

チャリン…

なんと五円だった。

冷たい沈黙が走った。

「ははははははは、ご縁があります様にだ、めでたいじゃねえか」

加持だけが大笑いしていた。

シンジ達は覚めた顔で五円玉を握りしめるとギロリと大笑いする加持を睨みつけた。

「おっさん、今時五円で何が買えるって言うんだよ!」

「チロルチョコも買えないじゃないのよ!」

「加持さんのぶぁかあああああ!!」

ボコボコボコ!

チルドレンを怒らせた罪は重い。

加持さんはあっという間にボコボコにされた。

「俺が悪かったよ!けど風俗の姉ちゃんに金使っていちもん無しなんだよォ、だからなんか食わせろォ!」

ボロボロになったよろけながらも加持は手掴みでテーブルの上のエビ様を奪い取ると口に頬張り込む。

バリバリ…(当然殻ごと食べている)

「う〜ん、でりしゃす」

「何がでりしゃすやねん!私のエビ様返せええ!」

ミサトの右ストレートが決まった。

「はは、腕を上げたな、葛城」

加持は涙を流しながらテーブルの上にダウンした。

テーブルの上の料理は…

ぐっちゃぐちゃのご臨終だった。

「ああ、おせっち料理が〜」

シンジは膝をついてすすり泣いた。

優しいレイちゃんはシンジの背中をさすりながら慰めた。

「そのうち良いことあるって」

「全く何しに来たのよ、こいつは」

「無様過ぎるわね」

無様とリツコは言ったがこの時加持のポケットの中には密かにおせっち料理がつめ込まれていたのだ。

加持リョウジ、こう見えてもプロのスパイだ、あなどってはいけない。



空は青く大きくその下にある第三東京市は平和だった。

何故かこの街では平和である事が少ないが…

ともかくそう言う意味で今日と言うお正月は絶好の日よりだった。

そんなわけで特務機関は碇司令の判断でお休みなのだ。

青い空の下で這えずるような少年のため息が響いた。

「ああ、僕のおせっちがあ」

おせっち料理とは正月中料理を作らないですむために昔の人が考えた秘法である。

それをあのどこかのアホスパイが台無しにしたイコールシンジは正月中にも料理を作らねばならないのだ。

「元気だそうよ、加持さんだって悪気はなかったんだろうしさ」

「いいよレイ、あ〜あ、僕はど〜せ世界一不幸な少年なんだ」

「お兄ちゃん」

「馬鹿シンジ!!」

シンジはアスカの方を振りかえった。

アスカはくるくるとまわってセクシーっぽいポーズを取った。

「どお?あたしの着物姿は?今日はあんただけに目いっぱい拝ませてあげるわよ!ありがたく思いなさいよね(
はあと)」

たしかにアスカの着物姿は可愛かった。

そっち系の男ならそのまま誘拐してしまうかもしれない。

だが、ノーマルのシンジは可愛いねというだけだ。

「…ああ、可愛いよ」

「それだけぇ!?もっと誉めてよ〜」

アスカは膨れるとピタッとシンジに体を密着させた。

「今日は特別だからね」

舌をペロリと出すとシンジの腕に頬ずりををした。

「よお〜し、私も」

レイも負けじとシンジにピタッとくっつく。

シンジは苦笑いしながら本当に残念そうに言った。

「くう〜、せめて君たちが僕と同い年ならよかったのにな〜」



しばらく行くとあの三人組にあった。

関西元気小僧と、学級委員長と…すこ〜しキケンな奴だ

「あっ、鈴原君、相田君、ヒカリちゃん!」

レイがそいつらの名前を呼んだ。

「アスカ、レイ」

ヒカリはうれしそうに駆け寄ってくる。

三人は手を取り合って三日振りの再会を喜んだ。

「あっ、シンジさん、明けましておめでとうございます」

ヒカリは礼儀正しく頭を下げた。

「こちらこそよろしく」

シンジも頭を下げる。

「おお、綾波と惣流の着物姿、さっそく撮らねば」

パシャパシャ

相田ケンスケ君は持っていたカメラで二人の美少女を写した。

アスカは眼鏡のガキをジト目で睨みながら

「あんた、あたしらの写真をどうする気よ?」

「売れるんだ、男子生徒や一部の女子生徒に、とくに綾波の写真は大人の人が大金で買ってくれるんだ」

「大人…?」

アスカとシンジの眉が釣り上がった。

美少女とは言え小学三年生の子供の写真を金はたいて買う大人なんて…

二人の頭の中に一つの言葉が浮かんだ。

絶対変態だ!

「あやしいよ、それ、一体どう言う人だったの?」

「ああ…、たしか髭面をしてて…赤いサングラスをかけていたな、歳は五十歳くらいで」

シンジの頭の中にあの男の顔が浮かんだ。

髭面でサングラスをかけた如何わしい男だった。

「そういえばよく口癖に問題無いなんて言っていたなあ」

「あう!!」

シンジはのけぞった。

ビンゴだ!!

98%うちの親父に違いない。

このままでは僕の父さんが変態だって事がみんなにばれてしまう。

体中の血液がサーっと引いていくのが自分でもわかった。

「許せない、そいつ絶対ロリコンよ」

アスカは顔を真っ赤にして怒った。

ヒカリちゃんも怒っている。

「なにそれ〜、信じらんな〜い」

「きっと人形に話しかけているような奴に違いないわ」

たしかにうちの親父は紫色の人造人間をまるで妻の様に可愛がる異常性では国外にも知れ渡っている。

どうやらアスカはまだ気づいてない様だが、もしみんなにバレたとしたら…

変態の息子として生涯、日の当たる生活が出来なくなってしまう。

将来の心配をするシンジの横でトウジはケンスケの胸倉をグイッと掴んだ。

そしてケンスケをギロリと鬼のように睨みつける。

いつもと違って真剣な顔だった。

「今後その親父に綾波の写真を売ったらわしが許さん!」

「トウジ…」

ケンスケは何故か頬を赤らめて唇を突き出した。

「うふ、もう今年もまた積極的なんだ・か・ら」

「反省せえゆ〜とるんじゃあああああ!!」

ケンスケの顔にトウジの拳がめり込んだ。

「はあはあ」

「もういいよ、鈴原君」

レイが鈴原とケンスケの間に入った。

「綾波」

トウジの顔がほころぶ。

空色の着物を身につけたいつもと一風変わったレイが瞳に飛び込んだからだ。

「でも…、綾波」

「はは、私は気にしてないよー、だからケンスケ君を許してあげて、友達なんだもんね」

「綾波…可愛い」

優しいレイちゃんに心を打たれついつい硬派のトウジ君の本音が出てしまった。

当然それを無視できないのが二名。

「ちょっと鈴原、それど〜ゆ〜意味ィ?」

「トウジ僕がいながら!!」

「おおおおおお前らそれは…」

抱き着いてくるケンスケを蹴り飛ばし踏みつけながら手を振った。

顔は赤ピーマンより真っ赤である。

「わしは別にそ〜ゆ〜意味で言ったわけやないんやで」

「じゃあ、ど〜ゆ〜意味よォ!?」

瞳をウルルンと潤ませながら胸倉を掴んでくる。

「鈴原はレイが好きなの〜?」

「だ…だからのォ、そ〜ゆ〜意味やないって」

「ふん、トウジは僕が好きなのさ、ねえトウジ」

三人の痴話喧嘩を見ながらシンジは吐き出す様に呟いた。

「付き合ってられるか」



第三東京神社。

出来たのが五年前と言うから驚くほど歴史が短い。

もっともこの街は使徒を迎え撃つために作られた都市だ。

そんな街にこんな古風な神社があるだけでも不思議なくらいである。

いつもはさびれている神社だが元旦になるとどこからともなく人間がやってくるのだ。

「人だらけ〜」

まだ新しい鳥居の下でレイは呟いた。

見渡す限り人、人、人である。

「あちゃ〜、こりゃあ本堂まで行くのに時間がかかるぞ」

「あたし疲れたァ」

シンジに肩車してもらいがらアスカはため息をついた。

「僕も結構疲れてるんですけど」

「なによ、男の癖にだらしないわね」

「誰かさんが重いからだよ」

「れでぃの禁句を言ったわねえ〜」

アスカはシンジの頭をポカスカ叩く。

「イタイイタイってば!」

そんな事やっている二人の横でレイは空を見上げた。

空にはたくさんのハト達が飛んでいる。

恐らく参拝客が餌をやるから集まってきたのだろう。

自由に空を飛ぶハト達を見ながらレイは微笑んだ。

「ここからどこに行くのかな…」

ハト達がどこに行くのかはレイは知らない。

だがこの街から離れた世界はレイにとっては未知の世界だった。

レイはケンカしている二人の顔を見た。

いつか平和になったらこの二人と一緒にどこか遠くに遊びに行きたいな…

レイの小さな小さな願いだった。



チャリ〜ン

賽銭が投げられた。

賽銭はさっき加持にもらった五円玉だ。

チロルチョコは買えなかったが神様への賄賂にはなったのだ。

賽銭を投げ入れて三人は手を合わせそれぞれのお願いをした。

「ねえ、何をお願いしたの」

レイは二人に尋ねた。

二人は何故かぶっと吹きだした。

「えっそれは、世界が平和になりますようにって」

だが本音はこうだ。

『女の子にモテてモテモテシンちゃんになりますよーに』

「アスカちゃんは?」

「えっあたしは、みんなが幸せになれますようにって」

だがこの子の本音は

『シンジとラブラブになれますように』

二人は、はははとごまかし笑いをした。

「でレイはど〜なのよ?」

「そうだよ、聞かせてよ」

「私、私は」

レイはペロリと舌を出した。

「ひ・み・つよん♪」

「ずるいよ、レイ」

「そうよ、私達に聞いた以上教えなさい」

「いや〜、教えない」

笑いながらレイは逃げ出した。

「逃げちゃ駄目だろ!」

「言わないまま逃げるなんて卑怯よ」

レイの跡をシンジ達は追いかける。

神社が混雑していると言うのに迷惑にも三人の追いかけっこが始まった。

「ふふ、言えないよね」

レイのお願い

『早く平和になってみんなと一緒に仲良く暮らしたいです』

新年はこうして暮れていったのであった。



〜おまけ〜《奴等の正月》

シンジ達が初詣に行っているその頃…

凧の変装してまんまと第三東京市に入り込んだ

一匹の使徒がとうとうジオフロントに侵入した。

ネルフはただいまお正月休み中だ。

誰も気づかないというか誰もいない。

こんにちはなんだな〜

ゼルエルはキョロキョロとあたりを見まわした。

攻撃してくる気配ない。

ゼルエルはピラミッドみたいな四角形の建物を見つけた。

あそこからアダムの気配がしている。

アダムさん、新年明けましておめでと〜なんだな

このままではレイちゃんの願いも虚しくサードインパクトが起こってしまう。

緊張の瞬間。

ドゴッ!

ゼルエルの頭に戦車がぶつかった。

いたいんだな〜

ゼルエルが振りかえるとそこにはド派手な着物をきた紫色の物体と赤い色の物体がいた。

何故か二人の顔には顔には髭が描かれている。

「ほほほユイ、私の勝ちね」

弐号機は初号機の目に丸を書く。

初号機は悔しそうに歯を食いしばりながら悔しそうにうめいた。

「くう、油断しただけじゃないのよ」

「ほほほ、それが実力の差よ」

「なにを〜、もう一戦よ」

初号機は羽子板を握りしめた。

人間時代からライバルだった二人だ。

エヴァになってからもそれは変わらなかった。

「あら」

初号機は上空に浮いているゼルエルに気づいた。

「あいつは…私のおまんまじゃないのよ!」

初号機は滝のようなよだれを垂らした。

ヒイ!?あいつは…ヤバいんだなあ

初号機の恐ろしさは漫画読んでるからよくわかっている。

自分をボコボコにした挙句ナマでそのまま食ってしまうあの鬼母である。

「いっただきま〜す!」

初号機は天高くジャンプした。

だが残念ゼルエルは初号機の手から離れそのまま上空に逃げてジオフロントを脱出した。

命拾いしたんだなあ、

もう、ここには近づかないんだなあ

第三東京市上空でゼルエルはそう強く誓った。

ドゴッ!

ジオフロントの地面が初号機の拳によって揺れた。

ド畜生が!ゼルエル食い損ねた!!

ジオフロントの下で初号機は悔しそうにそう叫んだ。



その姿をみた一人の男は…

「ユイ、着物姿もとってもぷりちー」

髭親父は羅刹のような初号機を見詰めながら一人喜んでいた。

碇ゲンドウ四十八歳、妻の幻影に生きる哀しき男。



だが彼は結構楽しんでいたりするのだった。



おまけ2

    ☆登場人物紹介T☆

碇シンジ 

 一応主人公らしい、可愛い顔をしたお坊ちゃんだがムッツリスケベのダメダメ男、他のSSではやたらカッコよくてモテモテのシンジ君が出てくるが幻都の小説ではそんな事は有り得ない。

綾波レイ 

 ニンニクをこよなく愛する能天気な少女、ファーストチルドレンということ以外は全て抹消されているこう見えても不思議少女。誰に対しても優しく母性あふれる女の子。

シンジが好き…らしい。

惣流=アスカ=ラングレー

 頭脳明晰、エヴァの運転テクニック抜群の 

お嬢様、いつもは勝気で生意気だが本当は寂しがりやで泣き虫、大好きなママはユイと同じく取り返しのつかないことになっている。

優しいシンジが大好き

鈴原トウジ 

 元気でジャージを身につけた何故か関西弁を話す少年、運動神経は抜群で実は妹想いな一面もある。

後でフォースチルドレンになるかどうかは現時点では微妙なとこ。

実はレイが好きだったりする。

相田ケンスケ

カメラオタクでミリタリオタク、しかもEVA

SSで珍しいホ○という設定である。

鈴原君が好きなちょっと個性的な少年でいつも禁断のLTK(ラブ・トウジ・ケンスケ)に挑戦している。

洞木ヒカリ 

レイ達のクラスの学級委員、アスカと手を組み

ますますその権力を拡大する。でも基本的には優しくて面倒見がいい。トウジにほのかな想いを寄せている。



〜あとがき〜

明けましておめでとうございます、皆さん、幻都でございます。

シンジの悪夢からユイの暴走に終わるこのLASでもなければLRSでもない小説いかがでした?

ちなみにこの小説ではトウジはレイが、ケンスケはトウジが、ヒカリはトウジがと言うような複雑な関係になっていますがけしてLRTにはならないのでLRSさんご安心を。

(でも希望があったらやるかもね…ククク)

王道のLHT(ラブ・ヒカリ・トウジ)になるか外道のLTK(ラブ・トウジ・ケンスケ)になるかはお楽しみです♪←
外道

それにしてもケンスケってSSの王道的変態キャラだけどホモってゆう設定は僕がはじめてじゃないだろうか、う〜ん。

じゃ、そうゆうことで〜

ユイ『今年も幻都よろしくねえええ!ウオオオオオオオオオオオオオ!!(意味不明)』


 幻都さんからSSを頂きました(^▽^)ありがとうございます〜
 
 主夫シンジ君の一日の始まりはお嬢様達の蹴りで目が覚めます(笑)世界を守るエヴァンゲリオンパイロットなのにいぢめられています。そしてゲンドウが再婚したとおもいきや相手は・・・食べられてしまいましたけど、夢で良かったですね(最悪な初夢ですね^^;)

 現実でも主夫シンジ君の生活は夢と変わりないですね(可哀想に)

 チルドレンにはお正月の楽しみ、お年玉がミサトさんとリツコさんから貰えましたが、ミサトさん・・・保護者失格!リツコさんが保護者になったらシンジ君はどんなに喜ぶでしょうね。

 ひょっこり登場の加持さん、シンジ君と対等に張り合えそうですね(実力は五分五分?何の?)お年玉が五円とは流石ミサトさんと付き合っていただけありますね。

 初詣には晴れ着でしょうね、アスカちゃんとレイちゃん可愛いですがシンジ君にとっては妹ですから萌えにはなりませんでした(シンジ君の野望は何年後でしょうね)

 そして登場するクラスメート、トウジがまさかレイちゃんを好きとはヒカリちゃんうかうかしていられませんね。ケンスケは小さくなっても変態(笑)写真を買う髭も変態ですね(爆)

 参拝する三人、シンジ君とアスカちゃんの願い事は私利私欲な事ですが、レイちゃん!流石ですねリツコさんの娘なだけあります。

 初号機と弐号機のお正月・・・これはこれで良いかも(爆)

 トウジは絶対にヒカリちゃんとラヴ〜と感想を送りましょうね。

 とっても素敵なSSをくださった
幻都さんに皆さん感想を送りましょう。

 皆さんの感想が作者の力になります!一言でもよいから感想を書きましょう!!


 第弐話 ひとりでできるもん!! エンド・オブ・葛城家 〜DEATH編〜

投稿:少年よ珍話になれ 第参話 お正月なの