EVA CHANGING
さんじゅうはちわ
ちょこっとらぶ
「完成!」
台所でレイは叫んだ、冷蔵庫から取り出された色々な形の茶色い物体を見て満足げである。
「ふふふ、これでシンちゃんのハアトは私のものなのだ」
茶色い物体を一つずつ区切られた箱の中に並べて詰め、ピンクのリボンでラッピングしていく。
「うふうふふふふ、これを食べたらシンちゃん、イチコロよ。美味しいんだから私の手作りチョコは」
今日は二月十四日、バレンタインデ〜である。レイは昨日から徹夜で手作りチョコを作っていたようである。
「そしてこっちはいつもお世話になっているアスカ用」
もう一つ箱を用意するとチョコを詰めていき、赤いリボンでラッピングする。
「ふふふふふ、アスカもこれで・・・うふうふうふうふ」
なぜか口元が歪んでいる。
「さあて、シンちゃんちへご〜」
二つの箱を持って意気揚揚と出かけるレイであった。
「ふんふんふんふ〜ん♪これを食べたらシンちゃんは・・・」
鼻歌を歌いながら葛城家へ向かう、シンジにあげるチョコを見ながらニヤニヤと妄想にふけり始めた。
「シンちゃん、はいこれ」
「ん?これはなに」
「んもう、わかっているくせに」
「わかんないなあ〜」
「シンちゃんの意地悪、チョコよチョコ」
「チョコ?どうして僕に」
「もう今日はバレンタインデ〜でしょ、だからあげるの」
「ふふ、ありがとうレイ嬉しいよ」
「シンちゃん」
「レイ」
「シンちゃん・・・」
「レイ・・・」
「な〜〜〜んてことになったらどうしよう?困っちゃう〜」
イヤンイヤンと首を左右に激しく振るが、顔は嫌がっていない口からだらしなく涎が垂れている。
「おっとっと、私としたことがはしたない、フキフキ。待ってってねシンちゃん」
ダッダッダッダッダ!
妄想を現実に早くする為にダッシュで葛城家へ向かうのであった。
ピンポンッ!ガチャッ!
「シンちゃん、いるぅ?」
呼び鈴を押したと同時にドアを開け、家中に聞こえるように大きな声で叫んだ。
「いらっしゃい、元気が良いね」
台所から顔を出したシンジ、お気に入りのエプロンを着けて何かを作っていたようである。
「元気だけが取り柄だからね、お邪魔します〜」
ドダドタと音を立ててリビングに向かう、リビングにはペンペンとアスカが居りトランプをしていた。
「やっほ〜アスカ、ペンペン元気〜?」
「アンタほどじゃないわよ」
「クエクエ」
「ふ〜ん、つまんない人生ね」
「アンタが明るすぎるのよ」
ちょっと不機嫌なアスカ、それもそのはずペンペンとトランプの最中であり連敗中なのである。
「で、何の用よ?」
「何の用って、今日は何の日か知っているでしょう?」
知らない人の方が珍しいだろう。
「知っているわよ、バレンタインでしょ」
「ピンポ〜ン正解!賞品はをあげるね」
背中に隠していた赤いリボンのついた箱をアスカに渡した、口元はちょっと不気味に歪んでいる。
「何よこれ?」
「チョコ、いつもお世話になっているから感謝の気持ち」
「ふ〜ん、珍しいわね」
箱を持ち上げるとジロジロ舐めまわすように見つめ、なかなか箱を開けない。
「どうしたの開けないの?」
「開けたら爆発するんじゃないの」
「しないよ〜、したら私まで死んじゃうじゃないの」
「そうね」
納得すると箱を開けた。ここでまたレイはニヤリと口元を歪めた、誰にも気づかれないように。
「どう、美味しそうでしょ?手作りなの」
「ふ〜ん」
「それで、こっちはシンちゃんの分」
「へ〜気合が入っているわね」
アスカの分が手作りならシンジの分も手作りだと思い関心するアスカ、そしてちょっと負けたと悔しがるのであった。
「アスカは?あげるんでしょ」
「え、ええ・・・」
声が小さく、耳を澄まさないと聞こえないほどの声である。
「へえ〜、作ったの?」
「・・・」
「えっ?聞こえな〜い」
ぶつぶつ呟くアスカに勝利を感じているのか声がさらに大きくなる。
「・・・うっさいわね、買ったわよ。文句ある!」
開き直って逆切れ、だがレイはその態度に大満足である。
「ふ〜ん、既製品ね既製品」
「二回も言うんじゃない!一回言えば十分でしょうが」
「はいはい、それじゃあレイちゃんのチョコを食べてね、自信があるんだから美味しいよ」
「へいへい、食べてあげるわよ」
アスカは丸いチョコを一つ摘むと口に持っていく、そこでもレイの口元はニヤリと歪んだ。
「ペンペン、毒味よ」
自分の口に持っていくとおもいきや、ペンペンのくちばしを強引に開けチョコを詰め込んだ。
「あ〜、ちょっとアスカ」
驚くレイ、予期せぬ出来事である。
「アンタが企んでいるのを見抜けないアタシだと思っているの?妙に口が歪むからチョコに何か入っているわね」
箱をレイの顔に押し付け、ぐりぐりホッペをつねる。
「いたたた、な、何も入ってないよ」
否定するレイ、だが・・・
「クエエエエエエ!!」
ペンペンは奇声を上げると泡を噴いてその場に倒れた、短い足が痙攣でピクピク動いている。
「ペンペンが、レ〜イ、アンタアタシを殺そうとしたわね」
アスカの髪が逆立ちSALに変身していく。
「こ、殺そうとしていないよ、死ぬほど毒は入ってないから」
「ほほう、毒ぅ〜、毒が入っているのね」
「はうっ、しまった」
アスカの瞳が赤鬼の血走った瞳に変わっていく。
「その分だとそっちにも何か入っていそうね」
無論シンジの為に作ったチョコである、アスカはゆっくりと箱を指差すとライオンが獲物を狙う体制に入る。
「な、何もはいってないよ、決してお母さんが作った食べてから最初に見た人を好きになる惚れ薬なんて入ってないもん」
「ほほう、リツコが作った惚れ薬ね」
「ど、どうしてわかったの?もしかしてアスカ、超能力者?」
驚くレイ、じりじりと壁際に追い詰められていく。
「アンタバカでしょ、自分で言ったじゃない」
「ありゃりゃ、失敗失敗」
舌を出し自分の頭をコンと叩き可愛く失敗を認める、もしこの場面の写真が撮られ売られれば瞬く間に完売になるだろう。
「はあ〜、相変わらず天然ね。オラァ!」
レイが気を抜いた瞬間、目にも止まらぬ早業で箱を奪い取った。
「あっ、返してよ〜」
「駄目よ、こんな危険なものシンジにあげるのは危険すぎるわ」
「返して〜」
恋は盲目、今アスカはSAL状態、使徒でも負けるだろう。レイは取り返すためにアスカに向かって行った。
「アンタが食べなさい」
「うぐんっ」
突進を避けると箱を開けチョコを一つ取り出しレイの口に詰め込んだ。
「さあてリツコの発明が成功したのかしら?」
レイの顔面を鷲掴みにすると、ある方向に向けた。
「あ・・・」
レイの瞳が捉えたもの、鼓動が高鳴る。
「ペンペン可愛い〜、大好き〜」
瞳がハ〜トマ〜クになると、気絶しているペンペンを抱き上げほお擦りをし始める。
「豪快な眉毛、つぶらな瞳、ふさふさした肌、愛くるしい短い足、はううう〜〜〜可愛い」
ペンペンは気絶しておりレイのなすがまま、抱き締めがだんだんと強烈になり背中が逆くの字になり始めている。
「せ、成功はしたようね、でも・・・」
レイの行動に汗をかきながらゆっくりとチョコを見、その成果に驚く。
「危険すぎるわこれは」
チョコは即行で廃棄処分になるのであった。
「お待たせ〜、おやつできたよ。あれ?綾波どうしたの」
そこへおやつを作っていたシンジがやってきた。両手にはアツアツのホットケ〜キ、蜂蜜の甘い香りが漂う。そして部屋の隅でペンペンを抱き締め頬擦りしているレイを不思議に思って首を傾げた。
「あれね、レイはペンペンが好きなのよ」
「ふ〜ん、ペンペン人気だね」
「そうね、それより・・・こ、これあげるわよ」
隠し持っていた、小さいラッピングされた箱をシンジに渡す、顔が少し赤い。
「これは?」
「今日はバレンタインデ〜でしょ、どうせ誰にも貰えないだろうからあげるわよ」
腕を組みソッポを向き照れを隠すアスカ、シンジはその姿にニッコリ微笑む。
「ありがとう、嬉しいよ」
「当然でしょ、でも義理よ義理」
「うん」
「義理でもちゃんとお返ししてよ」
「うん」
「ペンペン、かわゆい〜!」
シンジとアスカがLASモ〜ドに入る中、レイはいつ効果が無くなるかわからない惚れ薬の為にペンペンを抱き締めているのであった。
「ペンペン可愛い、身近に居たのに魅力に気がつかなかったなんてレイちゃん不覚」
「まだ効果が続いているわね、恐ろしいわリツコの発明は」
「ペンペン、今行くから〜」
「おおう、素早いダッシュね。となるとここにはアタシ一人ね」
「・・・何を喋ろうかしら・・・いざ一人になると何も話題が無いわね」
「・・・お腹すいたから帰るわじゃあね」
レイちゃん主役のCHANGINGなのにLASが入っちゃいましたね(^^;)リツコさんが作った惚れ薬、成功しましたが効果が強すぎました。これは失敗でしょうね。アスカちゃんは使わないのかな?
こんな連載小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
さんじゅうななわ おやこふたりで さんじゅうきゅうわ しょうげきもくげき
EVA CHANGING さんじゅうはちわ ちょこっとらぶ