エヴァンゲリオン学園
第拾弐話
悲しみの朝
チュンチュンチュン。
小鳥が囀り、今日も快晴だがアスカの心は雲がかかっていた。
「・・・・・・」
ベットから上半身を起こし時計を見る、いつもと同じ時間シンジを起こす為に早く起きることが身に染みていた。
顔を洗い、台所に向かった。
「ママおはよう」
「おはよう、アスカ昨日どうして行かなかったの?シンジ君来たのよ」
「・・・関係無いもん」
パンをパクツキ聞かないふりをする。
「ははーん、シンジ君とケンカしたのね」
「・・・違うわよ」
(何かあったわね)
否定をするが顔にいつもの明るさ活発さが無く、キョウコは態度で2人の間にトラブルがあったことを感じていた。
「・・・・ごちそうさま」
「あら?お弁当は作らないの」
「・・・・いい」
アスカは食事をしていないような、足取りで部屋に戻った。キョウコはため息をつきながら弁当を作り始めた。
「ふー・・・そうとう重症ね」
制服に着替え、学校に行く準備ができたアスカはベットに座ってうつむいていた。
(・・・・・・・・・・・・・)
(・・・起こしに行かなくちゃ)
(・・・・・・行きたくないな)
(・・・・・・・・・・・・・)
意を決して立ち上がり鞄を持って、部屋を出ていく。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
キョウコは心配してアスカを見送った。
ガチャ!
「おはようございます」
だがいつもの元気は無い。
「おはようアスカちゃん」
台所からユイが顔を覗かせ微笑む、アスカは微笑み返しシンジの部屋に直行する。
ドキドキドキ
部屋の前に立つと心臓の鼓動が高鳴る。それを押さえるように深呼吸して入る。
「ZZZ」
「ZZZ」
「ZZZZZZ」
相変わらずシンジは寝ていた。
「・・・・・」
アスカはシンジの顔を見たくなかった。昨日のスーパーでの出来事が思い出される。
「・・・・シンちゃん・・・朝だよ」
起きていても聞こえないような大きさ、そしてアスカの右手が空を切る。
バッチィーーン!!
「はううう」
ダダダダダ!!!
強烈なビンタを繰り出しシンジを起こす。起きたのを確認すると部屋を出ていき、玄関に向かった。
「あらアスカちゃん」
ユイがビンタと足音で台所から玄関を見るとアスカが素早く家を出るところだった。
「シンジと何かあったの?」
「・・・・違います」
態度でわかってしまう、2人に何かあったら必ず起こしにきても、ビンタをして走って出ていくことが毎度の事だった。
ガチャ!
扉が閉められ、台所に戻るとそこには左頬にハッキリ手形のついたシンジがいた。
「あらおはようシンジ」
「おはよう」
シンジは頬をさすりながら、考えていた。
(どうして頬が痛いんだろう)
「シンジ、アスカちゃんと何かあったの?」
「へ?」
「アスカちゃん落ち込んでいたわよ」
「・・・・・!」
思い出し気がついた。
「うん」
「何があったか知らないけどアスカちゃんを悲しませたらダメよ」
「わかってるよ、アスカはいつ出ていったの」
「五分ぐらい前よ」
シンジは急いで朝食を詰め込んだ、その姿にユイの心配は消えた。
「ごちそうさま」
急いで身支度を整え、家を出ていった。
「ふう、一安心ですね」
「ああ」
台所には新聞を見ていたゲンドウがまだ朝食をとっていた。
「あなた早くしてください、遅れるでしょ」
「う・・・うむ問題無い」
「問題あります」
「・・・すまん」
碇家の朝は過ぎていった。
「はあはあはあ」
全速力で通学路を走りながら昨日のヒカリとの事を思い出していた。
回想中
「ま・・まあそれほど料理がすきだから、明日アスカにお弁当を作ってもらったら」
「え・・・それは・・・・・」
シンジは頭をかきながら言いにくそうだ。
「どうしたの?」
「そ・・・その」
シンジは苦笑いをしながら言葉に詰まっていた。
「言えないことなの?」
「そっそんな事ないよ」
「じゃあ言って」
「う・・・うん」
ヒカリの迫力に圧倒され切り出す。
「実は明日マナに作ってもらう約束をしたんだ」
「!」
ヒカリは瞳を見開き一瞬止まった。
「・・・委員長?」
「なっなんですってー!!!!」
ヒカリの声が教室に響き渡りガラスを揺らした。
「うっうわ!」
シンジは突然の叫びに驚いた。
「碇君、あなたって人はどうして鈍感なの」
「へ?」
「アスカの気持ち知らないの」
「気持ちって?」
「アスカはね碇君の事がす・・・・・・なんでもないわ」
「?」
ヒカリは危うく口に出しそうになったがアスカから口止めされているので、とどまったが興奮が収まらない。
「まっまあいいわ。アスカね泣いていたのよ、霧島さんがお弁当を渡すところを見てね。だから明日お弁当を作ってあげたらって言ったんだけど、まさか約束をしてたなんて信じられないわ!」
「ごっごめん・・・」
「私に謝ったってしょうがないでしょ!とにかくアスカを悲しませたらダメよ」
「わかったよ・・・」
(ものすごく料理が好きなんだ)
鈍感。
「はあはあ」
シンジは全速力の甲斐あってまだ登校する生徒が少ない時間に着いた。下駄箱で上履きに履き替え急いで教室に走る。
ガラ!
まだ数えるほどしか生徒はいなかった。アスカの姿は見えない、机を見ると鞄は置いてあるので学校にはいるようだ。自分の席に向かい鞄を置き、探すために教室を出た。
(アスカ・・・どこにいるんだ)
シンジは走りまわった。
(はー・・・授業受けたくないな、サボっちゃおうかな)
アスカは屋上のベンチで空を見上げていた。サボると言ってもアスカが不良ではなくシンジに合いたくないために、思っていたのだ。
(怒っているかな・・・・)
右手を見つめ今朝の事を思い出した。
(私より・・・マナがいいのかな?・・・・)
(・・・・)
(・・・・)
(・・・・)
(・・・・)
(・・・・)
(・・・・)
ガチャ!
アスカはドアの音に気づき見てみるとシンジがそこには立っていた。
「シンちゃん!」
「アスカ」
アスカは驚いてその場を動くことが出来なかった。シンジは息を切らしながらゆっくりベンチに近づき、二人は無言で見詰め合った。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「ごめん!」
「ごめんなさい!」
2人同時に頭を下げた。
「「え?」」
2人はまた同時に疑問に思った。一瞬ほどしてシンジは頭をかきながら、ヒカリに言われたことを思い出していた。
「・・・あっあのアスカ昨日は弁当を断って・・・ごめん・・昨日の内に謝ろうと思っていたんだけど、合えなかったから・・・じ実は今日マナから弁当を作ってもらう約束をしたから無理だけど・・・明日作ってもらえないかな?」
「え?・・・・」
「ダメかな?」
アスカは昨日の行動を恥じた。シンジが合いに来たのに合いに行かない自分に恥ずかしくなった。
「そっそんなことより、私こそごめんなさい」
「へ?」
シンジはアスカから謝られる理由が思いつかなかった。
「・・・その朝・・ビンタをして起こしたから・・・ほらまだ手形が残ってるよ」
「あ!」
シンジは思い出した、洗面台で鏡を見たら頬に手形がついていたのだ。無論おぼえは無く疑問に思っていた。アスカはうつむき顔を真っ赤にして、シンジをチラチラ見ていた。
「まあいいや、罰が当たったんだよ」
「?」
「せっかくアスカが弁当を作ってあげるって言ったのにそれを断ったから、罰が当たらないように明日は作ってもらおうかな」
シンジは照れくさそうに笑い、アスカは涙を貯めて微笑んでうなずいた。
「うん!」
なんとか2人のすれ違いが無くなりました。
流石にヒカリは強いですね、シンジもタジタジ。
こんな連載小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
エヴァンゲリオン学園:第拾弐話 悲しみの朝