エヴァンゲリオン学園

第弐拾話

ゲンドウ、笑う

 シンジにとっては魔の期末テストが終わり、あとは結果を待つだけであった。学校、採点された解答用紙をもどされる。

「碇シンジ君」

「はい」

 ミサトの授業中人に見られないようにこっそりと点数を確認する。

(よしっ)

 心でガッツポーズ、点数が良かったらしくおもわず笑顔になる。

「シンジ君どうだったの?」

「よかったよ、ほら」

 マナに答案用紙を見せる85点。

「すごーい!頑張ったね」

「シンジ君、社会はいいのよ」

「アスカ」

 隣りから盗み見ていたアスカは自慢しているシンジに横槍をいれる。たしかに社会だけは毎回よかった。

 そのあとアスカやマナも返してもらう。2人とも優秀でシンジより点数は上だった。

「みんな、よく頑張ったわね。まあ今回は甘く採点しすぎたかな。サービス、サービス!」

 教卓でミサトはみんなの結果に満足してニコニコしていた。その後の授業もテストは返されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休みの屋上、いつものメンバーで昼食をとっていた。トウジはパンを頬張りながら、おもいっきり肩を落してため息をつく。

「はあー・・・・・最悪や」

「なにが最悪なんだよ」

 横でケンスケは呆れながら、コーヒー牛乳を口に運ぶ。

「点数や、ワシに大学のテストは解けへん。ショックでメシも通らんわ」

 モグモグ

 ため息をつき、3個目のパンを開ける。他は呆れて見ていた。

「そうだね、特にリツコ先生はひどかったね」

 シンジはリツコの授業を思い出した。生徒の名前を呼ぶとき背筋が凍るような、声で呼び点数が悪かったら『実験体、今不足しているのよ』と呟いて奮えあがらせた。

「まったくやワシでさえ、おもわずちびりそうになってもうた」

 トウジはリツコの不気味な微笑みを思い出して身震いをしてしまう。

「鈴原が悪いのよ。勉強しないから」

「ワシにはとけん!」

「・・・・」

 きっぱりと言いきるトウジにヒカリは瞳を丸くして呆れた。

「碇君はどう?」

「大丈夫みたいだよ。アスカとマナのおかげだよ」

 シンジのほほ笑みにアスカとマナはおもわず赤面する。

(シンちゃん、頑張ったもんね)

(シッシンジ君・・・ありがとう ポッ)

 そして数日後、期末テストの順位が1人1人に渡された。

 ドキドキドキ

(僕は何位なんだろう・・・緊張するな)

 渡されたが、見ることができずに心臓が高鳴っていた。アスカとマナは横で緊張している。

 ドキドキドキ

(だ、大丈夫!点数は良かったし、自信はある)

 ドキドキドキ

(みっ見るぞ)

 パッ

・・!、やっやった!9位だ

 紙に書いてあったのはこれまでとったことの無い最高位だった。握りこぶしを作り、気合を入れる。

「やったじゃない!」

「やったね!」

 2人は顔を見合わせて、勉強を教えた甲斐があったと喜んだ。

「ありがとう、2人のおかげだよ」

 シンジは深深と頭をさげ心から感謝した。そしてゲンドウとの約束に心躍らせる。

(これで小遣いアップ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 下校、シンジは嬉しさで足取りも軽くスキップをしたくなるが、2バカのあまりにも暗い状態に心の中でスキップしていた。

「「はあー・・・・」」

 トウジとケンスケは互いに肩を組み、どんよりとした表情を浮かべていた。

「2人とも元気出してよ」

「センセはよかったから、そう言えるんや」

「そうだぞ、裏切りやがって」

「トウジ、ゲーセンに行って爆発しようぜ」

「そやな、いっちょうかましたるか」

 2人はそれまで曲げていた背中をキチンと伸ばすと、もうダッシュでかけていった。

「あっトウジ、ケンスケ!まってよ」

「フン、裏切り者は敵だ!」

 ケンスケは振り向きざまに捨て台詞を叫ぶと角を曲がっていった。

「なんだよそれ」

「何よ!碇君は頑張ったのに」

 ヒカリは頬を膨らませ怒って今度、注意しようと思っていた。

 その後途中ヒカリやマナと別れ、家についた。

「ただいま」

「おかえりなさい」

 リビングからはユイの声がする、シンジは玄関の靴を見てゲンドウが帰ってきている事がわかった。

 リビングに行くとゲンドウとユイがお茶を飲んでいた。

「父さん、これを見て」

「なんだ」

 シンジは急いで順位表を鞄から取り出し渡す。ゲンドウは広げると眼鏡がキラリと光った。

「9位か、よくやったなシンジ」

「おめでとうシンジ、頑張ったわね」

「うん」

 2人の喜びの言葉にシンジは笑顔になり満足した、そして重大な事がまっている。

「次も頑張るんだ」

「へ?」

 ゲンドウはそれだけ言うと順位表をシンジに返し、お茶を飲みだした。

「あのー父さん」

「なんだ、お前も煎餅を食べるか?食べないなら今すぐ帰れ」

「・・・・食べるよ」

 シンジは煎餅を渡されると、一口かじる。そして本題に持っていく。

「父さん、小遣いの事なんだけど」

「その事か問題ない」

「そのいくらぐらい上げてくれるの?僕としては・・・」

 精一杯力を振り絞り要求していくが、ゲンドウはお茶を飲み一息つくと口を開いた」

「100円だ」

「は?」

「100円あげてやる」

 シンジは一瞬耳を疑ったが何度聞いても同じであった。

「そっそんな、どうして100円なんだよ。上げてくれるんでしょ?」

「小遣いを上げてくれといったのは憶えているが、いくら上げるかは聞いていないからこちらで決めた」

 ニヤリ!

 ゲンドウは笑い煎餅に手を伸ばす。シンジはただ口をパクパクしていた。そして体を震わせた。

「裏切ったな、僕の気持ちを裏切ったな。父さんは僕の気持ちを裏切ったんだ。うわーー!」

 シンジは奇声を上げると自室に閉じこもってり、ベットにうつ伏せになりこぶしを震わせていた。

「ちくしょう、ちくしょう」

 一方ゲンドウは5枚目の煎餅に手を伸ばし味わっていた。ユイは心配そうに襖を見つめていた。

「アナタ、あまりにも酷いんじゃありません。100円じゃシンジが可哀想ですよ」

「フッ問題ない」

「アナタ、いいかげんにしてください。それと食べるときは肘をつかないで」

 ゲンドウはお決まりのポーズで煎餅を食べるのを注意され仕方なく、ポーズを崩した。そこへ着替えたアスカがやって来た。

「こんにちは、おじ様、おば様。シンちゃんは?」

「いらっしゃい、それがね・・・・」

 ユイはアスカにお茶を出し、先ほどの事を話した。

「おじ様!シンちゃんが可哀想です。一生懸命頑張ったんですよ」

 アスカは湯のみが倒れるほど、テーブルを叩くとゲンドウに説教をはじめた。

「うっうむ」

「それを、100円だなんてあまりにも酷すぎます。シンちゃん、今日をずっと楽しみにしていたんですよ。私、おじ様をみそこないました」

 ガーン

 ゲンドウは最後の一言に頭をハンマーで殴られる衝撃を受けた。

(まっまずい。ここでアスカ君に嫌われてはシナリオが、フッ・・・ここまでは)

 表情を変えずに、怒りながらお茶をすすっているアスカに、懐から封筒をだした。

「これをシンジに渡したまえ」

「?」

「頑張った、臨時の小遣いだ。見合う額が入っている」

「おじ様」

 アスカの表情が変わっていく。ゲンドウはひとまず安心すると、眼鏡をあげる。

(フッ、シナリオどおりだ)

「見直しました。シンちゃんに渡してきます」

 立ちあがるアスカにゲンドウはまた懐から2つの封筒を取り出した。

「まちたまえ、これはアスカ君に私からの気持ちだ。マナ君にも渡しといてくれ」

「そんな、要りません」

 アスカは拒むが、ゲンドウは腕を掴むと無理やり手に乗せる。

「子供は遠慮しなくていい。甘えなさい」

「・・・・はい、おじ様」

「ああ」

 アスカは封筒を握り締めると、襖を開けた。するとシンジがベットにうつ伏せになって呟いていた。

「シンちゃん、どうしたの?」

「・・・・何でもないよ」

「これ、おじ様から」

 そっと封筒を差し出すと、シンジは?な顔をして聞いた。

「これは?」

「臨時のお小遣いだっておじ様、ちゃんと用意していたの」

「父さん・・・・」

 封筒を受け取ると中身を見てみる。そこには中学生には嬉しいほどの金額が入っていた。シンジは素早くベットから飛び降りると、リビングに走った。

「父さん!ありがとう」

 深深と土下座をする。ゲンドウは満足そうに眼鏡を上げ、笑う。

「ふっ」

「僕、父さんの事を尊敬するよ」

「シンジ、まだまだ尻が青いな」

「シンちゃん良かったね」

 アスカはシンジの隣りに座り、勉強を教えた苦労話しをゲンドウ達に話して楽しい時間を過ごした。


 七話にまたぐテスト編、終ーー了です。ゲンドウはシンジに意地悪しても甘いですね。アスカに嫌われたくありませんからね。

 次からは多分、楽しい夏休み編です。学生にとっては最大のイベント、どうなりますかお楽しみに!

 こんな連載小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。


第拾九話 シンジVS試験 第弐拾壱話 夏の始まり

エヴァンゲリオン学園:第弐拾話 ゲンドウ、笑う