エヴァンゲリオン学園

第弐拾弐話

頑張れ!アスカ

「ふう・・・・」

 アスカは昼食のチャーハンを口に運びながら、ため息をついていた。昼からシンジ達とプールに行くのだが、泳げない。マナが教えてくれると言っていたが泳げるかどうかは自信が無かった。

「アスカ、元気だしなさい。今年こそは泳げるようになるといいわね」

 キョウコは麦茶をつぎアスカにわたすと、自分もチャーハンを口に運ぶ。

「わかんない」

「シンジ君が教えてくれるんでしょ」

「・・・・」

 アスカは無言で昼食を済ますと部屋に駆け込んだ。キョウコはヤレヤレと呆れながら後姿を見ていた。

「浮きわはもう卒業しなさーい」

 キョウコの台詞を背中に受け部屋でプールの準備をする。水着、タオルとバックにいれていき、横にはまだ空気が入ってない浮きわがあった。

「・・・いらないもん」

 壁に放り投げると、シンジを呼びに行くために家をでていった。

「シンちゃーん、行こーう」

「わかったー」

 シンジが奥から走ってやってきた。

「あれ、浮き袋は?」

「シンちゃん、今日は泳げるようになるの!」

「ははは、そう頑張れよ」

「もう」

 からかいにアスカは真っ赤になって言い返したが、シンジはただ笑っているだけであった。そして2人は待ち合わせの公園に向かった。

「おう、シンジに惣流遅いやないか」

 公園のベンチにトウジとケンスケが座っていた。

「遅いって、トウジ達が早いんじゃないかい?」

 待ち合わせ時間は午後1時、現在は12時40分である。ヒカリにマナはまだ来ていない。

「そうか?ケンスケがはよう呼びに来て、暇やったんや」

「ふふふ、楽しい事は早めにだからな、くくく」

 ケンスケは眼鏡をクイッとあげると不気味に笑う。まわりの温度が2℃は下がった。

「あいかわらずだね、ケンスケは・・・」

「ヤッホー、おまたせー」

 それから5分もしないうちにマナとヒカリがやってきた。これで全員そろった。

「よっしゃあ、全員そろったことやし、いこか」

 公園を出てプールに向かう。第3プールはここからそう遠くはない、歩いて10分くらいのところにあった。シンジ達男子が前を歩き、アスカ達女子は後ろを話しながら歩いていた。

「今日はバシバシ泳いたる」

「今日のように暑い日はきもちいいだろね」

「俺は撮る事に快感をおぼえるね」

「「はあ?」」

 

「まさにプール日和ね、アスカ覚悟はいい?」

「覚悟って・・・」

「霧島さん、来る途中に指を鳴らしていたのよ」

「うそ?」

 和気あいあいと話しをしていると、あっという間に第3プールに到着した。シンジ達は入場チケットを買い、更衣室に入っていった。

 

 男子更衣室

「2人とも見てみい、ワシの体を」

 トウジはポーズをとり引き締まった身体を見せる。

「さすがだね、トウジは」

「シンジも鍛えや」

 バシッ!

 少し白いシンジの背中を勢いよくたたく。

「イッター、トウジ」

「はははは」

「さあ用意ができたら行こうか?」

「?ケンスケそれだけでいいの」

 ケンスケは着替え終わったのだがカメラを持っていなかった。

「フフフ、シンジこれを見ろよ」

「時計じゃないか、それがどうしたの?」

 ケンスケは右手首につけた少し大きな腕時計をシンジに見せつける。

「これは超小型防水対衝撃付きカメラ時計さ、高かったんだぜこれー」

「そ、そう」

「ああ、今日は撮りまくるぞー」

 気合を入れ燃えるケンスケ、2人は呆れていた。

「・・・トウジ、行こうか」

「・・・そやな」

 

 女子更衣室

「ジャーン!1番、2人とも早く」

 マナは服を脱ぐと水着に素早くなった。単に水着を服の下に着ていたのである。

「まってよマナ。私も着てくればよかったかな?」

 アスカは服を脱ぎながら考えていた。そこにマナの手が伸びる。

「ほらほら、早く手伝ってあげる」

「キャー、やめてマナ」

 脱がされそうになりおもわずしゃがみこむ。

「もうマナー」

「ははは、ごめんごめん」

「霧島さん、張りきっているわね」

「早く泳ぎたいからね。アスカも泳ごうね」

「あ・・・う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお!流石に多いな。これは撮りがいがあるぞ」

 プールサイドに出た3人はまわりを見まわしていた、夏休み初日ということで人は多かった。

「遅いなー、準備体操でもしとこか?」

「そうだね」

 シンジとトウジは体を動かし始めた。ケンスケは早速写真を撮り始めた。

「お待たせー」

 3人の後ろからマナの声がかかり振り向く。

「「「おっおお!」」」

 そこにはマナを真ん中に左右少し後ろにアスカとヒカリが立っていた。

「どう?似合うかしら」

 マナはスポーツタイプのビキニで腰をくねらせポーズをとる。ケンスケは喜びの声を上げた。

「似合う、似合いすぎるよ!」

 誉めると同時に気づかれないように写真を撮る。

「シンジ君どう?」

「あ、似合うよ」

「ありがとうね」

 シンジはマナに見とれていた、アスカはその様子に不機嫌になる。

「シ、シンジ君、私はどうかな?」

 アスカは手を胸の前でイジイジさせて照れていた、水着はおとなしく普通のタイプ。青を基調とした夏らしい色である。中学生ながら整った身体と照れの仕草がシンジをドキリとさせる。

「う、うん似合うよ。アスカらしいね」

「うん」

 シンジの誉め言葉にアスカはいっそう赤くなった。ケンスケは気づかれないように熱心に写真を撮っていた。

「お!委員長、大胆だね」

「やめてよ相田君、恥ずかしい」

 ヒカリはおとなしい性格に似合わずに黄色のビキニであった。恥ずかしさのあまりマナの後ろに隠れる。

「そんなことないよな。トウジ」

「ああ、よう似合うとる」

「あ、ありがとう」

 トウジに言われるといっそう赤くなった。ケンスケは気づかれないように熱心に写真を撮っている。

「それじゃ、泳ぐとしよか」

 シンジ達は3バカは準備体操(ケンスケはしてない)をしたので、すかさず走って流れるプールに飛び込んだ。

「うひゃー気持ちええの」

「そうだね」

「うしゃしゃしゃ、宝の山だ」

 3人はそのまま流れていった。アスカ達はストレッチを5分ぐらいすると同じように、流れるプールに向かった。

「うーん、冷たくて気持ちいいわ」

「そうね」

「・・・」

 マナとヒカリは足から飛び込んだがプールサイドでアスカは内股で震えて立っていた。

「アスカ、こないの?」

「・・・」

「怖くないから」

「・・・」

 2人が誘っても、まだ膝がガクガク震えていた。

「もうしょうがないわね」

 マナは1回プールから出るとアスカの手をつかんで入ろうとしたが座りこんでしまった。ここの流れるプールは足はつくのだが流れる早さが少し急であるが普通の人には何ともない。

 しかしアスカにとっては流れがものすごく早くに見えた。

「こ、こわい〜」

「怖くないわよ。冷たくて気持ちいいから」

「で、でも〜・・・」

「デモもストライキもない、泳げるようにしてあげるわよ」

「う〜・・・」

「霧島さん、アスカが怖がっているでしょ。私に任せて」

 ヒカリはプールから上がるとアスカの横に座った。マナは交代すると1人で泳いでいった。

「アスカ、まずは座ってから足を水につければいいわ」

「う、うん」

「大丈夫でしょ?」

「うん」

「次は体に水をかけるといいわ」

 ヒカリがやってみせてアスカが真似をしていく。

「じゃあ入るわよ」

「う・・・・」

 ヒカリは入るがアスカは震えて入りきれなかった。

「大丈夫怖くないから」

「う・・・」

 だが石のように動こうとはしない。

「アスカ、まだ入ってないの?」

 シンジが流れながらやって来た。他の2人は自分のペースで泳いでいて、1人で泳ぐかっこうとなっていた。

「う、うん・・」

「アスカ怖がっちゃって、碇君お願いね。アスカそのほうが聞くから」

「え?」

 ヒカリはそう言い残すと手を振って泳いでいった。流石に小学校からの付き合い、アスカがシンジの言う事を聞くと熟知していた。

「たっく、アスカ怖くないよ。ほら」

「でも・・・」

「大丈夫、ほら」

 シンジはプールの中から腕を広げた。アスカはゴクリと息を飲み目をつぶって入った。

「きゃあ、シンちゃん」

「大丈夫だよアスカ」

 アスカは入って衝撃で顔に水がかかりパニック状態となりシンジに抱きついた。

「・・・ご、ごめんなさい」

「ほら平気だろ」

「う、うん」

 シンジはアスカを落ち着かせると微笑む。

「歩こうか?」

「う、うん」

 アスカの手を水中でつかむと歩き出した。アスカはちょっぴり赤くなっていた。流れるプールなので歩行スピードは多少早いものの泳いでいる人には抜かれていく。

「おうセンセ、やさしいの」

「くう、シンジ。記念だー」(音は聞こえないが撮っている)

「こらアスカ!後で特訓よ」

「アスカ、頑張ったわね」

 次々に抜かされ、台詞を言っていった。

「慣れたようだね。泳いでみる?」

「え!」

「大丈夫持っていてあげるから、体を浮かすだけだよ」

「う、うん」

 シンジは後ろ向きに歩き出すとアスカの両手を握った。

「浮かんで」

「う、うん」

「足を動かして」

「う、うん」

 言われたとおりやっていく、アスカは返事しかできない必死である。 

「左手を離すよ」

「う、うん」

「左手を動かして」

「う、うん」

「右手離すよ、動かして」

「う、うん」

 シンジは右手を離すとアスカはクロールの格好となった。そのまま泳ぎ・・・・沈んだ。

「ブクブクブク・・・・・うへあ〜・・・ヒドイよ〜」

 顔を一生懸命拭き、怒るがシンジは笑っていた。

「はは、ごめん練習だよ。さあもう1回!」

 腕を出すがアスカは掴もうとはしなかった。

「いや!シンちゃんのうそつき」

 アスカは頬を膨らまし1人歩いていった。

「あーあ、怒らせちゃったかな」

 シンジは頭をかきながら、アスカがおぼれないように遠くから歩いた。

「シンジ君、アスカは?」

 すでに何周もまわっていたマナがやって来た。

「前にいるよ」

「そう、そろそろ特訓ね」

「やめたほうがいいよ。さっきちょっと怒らせたからね」

「え?」

 シンジは申し訳なさそうな顔を浮かべていた。マナは?マークを浮かべアスカを見た。

「泳ぐ練習をしてちょっと嘘をついてね」

「それで、ねえアスカってどうして泳げないの?」

 昨日の疑問をシンジにぶつけてみた。

「?なぜだろう。わかんないや」

 シンジは首をかしげて考えていたが思い浮かばない。

「シンジ君でも知らないの?」

「うーん・・・昔の事だからわからないや」

「そう」

 マナは残念そうな顔をすると、楽しみが減ったと嘆いた。

「泳がない?」

「いいけど、アスカが心配だよ」

「平泳ぎでゆっくり泳げば大丈夫よ」

「そうだね」

 2人は平泳ぎをしながらアスカがおぼれないように監視しながら泳いだ。

「アスカが泳げないなんて」

「本人の前で言っちゃダメだよ」

「わかったわ。1周まわったら私が教えてあげようかな」

「うーん拒否すると思うよ。僕が怒らせちゃったから、アスカ頑固だから」

「ふーん、アスカって妙なところが変わっているわね」

 ゆっくりと時間をかけて泳ぐ、すると後ろからトウジとヒカリが泳いでやって来た。

「ありゃセンセ、今度は霧島とかい」

「アスカはどうしたの?」

「前だよ。歩いているよ」

 トウジとヒカリは前方の一目でわかる髪を見つけた。

「碇君、ついていなくていいの?」

「ちょっと怒らせちゃって」

「何をしたの?」

「泳ぐ練習をしてちょっと嘘を」

 シンジは先ほどの事を話した。ヒカリはため息をついた。

「そう、アスカ今年も無理かしら?」

「そうだね」

 2人はうなずきアスカは歩きだけのプールでケンスケは写真だけのプール、シンジ達は普通の夏休みのプールであった。 


 ・・・アスカ頑張れていない。

 この性格のアスカでは水着はやや普通です。マナは活発らしくお腹出しています。ヒカリはうーん大胆でいきました。

 本当はマナの特訓で泳げると考えていましたが、冒頭でうきわを持っているのにイキナリ泳げるか?とおもい結局は泳げないほうにしました。

 どっちがよかったかな?でも「EVA CHANGING」では泳いでいますので、こういうのもいいかな。

 こんな連載小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。


第弐拾壱話 夏の始まり 第弐拾参話 花火大会、6時間前

エヴァンゲリオン学園:第弐拾弐話 頑張れ!アスカ