エヴァンゲリオン学園
第弐拾参話
花火大会、6時間前
「ママー、似合うかしら?」
アスカは浴衣姿で1回転、ふわりと髪がなびき浴衣のすそがめくれあがる。
「ふふ、似合うわよ。でもアスカ着るのには早すぎるわよ」
「へへ、新調した浴衣だから待ちきれないんだもん」
今日の夕方から近くの河原で花火大会があり、アスカは赤地に黄色をあしらった浴衣を着ていた。だがまだ朝10時である。
「早くシンジ君に見せたいのね。今すぐ見せてきなさい」
「どどどどどうしてシンちゃんが出てくるのよ?私は浴衣が着たかったの!」
顔を真っ赤にして反論するがキョウコには可愛い娘の照れ隠しが微笑ましく、もっと意地悪したくなる。
「シンジ君も今か今かと待っているかもよ。早く愛しのアスカの浴衣を見たいって」
「だだだだから急がなくてもいいの!あとで見せてあげるから!」
「へえーおあずけ状態ねシンジ君可哀想だわ」
「ちちちち違うわよー!」
アスカはもう熟しきったりんごのように赤くなり、キョウコから逃げるために部屋にこもった。
そのとき碇家では・・・
「あらアスカちゃん、元気いいわね」
「花火大会が待ちきれないんだよ。アスカは昔から早く行こうってうるさかったからね」
アスカの声はここ碇家まで聞こえた。
「あら?シンジも行こうってうるさかったんじゃないかしら?」
「む、昔の事だよ。今はゆとりをもって、出かけるんだ。アスカが早く行きたいのは出店が目当てだからね」
「ふふ、出店は楽しいものね。アスカちゃんにちゃんと買ってあげなさいよ」
「なんでアスカ買ってやらなくちゃならないの?」
「デートは男の子が払うものなのよ」
デートの言葉に顔が赤くなる。ユイは笑っていた。
「デデデデデートじゃないよ。トウジ達と一緒に行くんだよ」
「でも2人っきりになれるでしょ。はい臨時のお小遣い」
ユイは財布から5000円を出すとシンジに手渡した。
「あ、ありがとう。デートじゃないの」
「アスカちゃんに買ってあげなさいね」
ユイはシンジの発言などお構いなしに、ニコニコと笑っていた。
「・・・・」
シンジは開いた口が塞がらなかった。
「ユイどうだ、似合うか?」
「あらアナタ、素敵ですよ」
夫婦の部屋から早々と浴衣を着たゲンドウが現れた。彼も花火大会を待ちきれない1人である。ユイが誉めると、表情を変えずに頬を赤らめた。
「問題ない」
「ええ、とってもお似合いですよ」
「・・・・・」
シンジは開いた口が塞がらない。
再び惣流家、アスカの部屋。
浴衣を着替えてベットの上に寝転がっていた。
「うー、早く時間にならないかな。まずは綿菓子ね、その次はクレープ、リンゴ飴も外せないわ。焼きそば、たこ焼き、えーとお小遣い足りるかな?」
出店で買うリストを上げ、財布の中身をチェック。
「ひいふうみい・・・・・足りないわねえ・・・・・シンちゃんに買ってもらおうかな」
シンジにおねだりして買ってもらおうと考え、リストは次々と増えていった。
「あと6時間か」
マナの部屋。
「河原での2人、空には花火・・・うーーんロマンチック」
マナは少女漫画を読みながら、ある人物との花火大会を妄想していた。
日が沈んだ河原、打ち上げ花火の明かりが2人を照らしている。
「マナ、綺麗だね」
「うん、花火があんなに高く上がっているわ」
「違うよ、マナ。君が綺麗だよ」
「えっ?」
「花火より君が綺麗さ」
「シンジ・・・・」
「マナ」
そして花火の明かりの中2人の影は、やがて1つに・・・・
「うふ、うふふふ。なーんてことなったらどうしよう?困っちゃうな。じゅるじゅる」
ヨダレを拭きながら掛けてある浴衣を見た。水色が朝顔が染め付けてある浴衣。
「よーし、これでシンジ君をゲットだぜ!」
立ちあがりこぶしを上に高々と突き上げポケモン風に叫び気合をいれた。
ヒカリの部屋。
「ふふ、今年も着れてよかったわ」
ヒカリは鏡の前で黄色に向日葵と明るい浴衣を着て、クルリと1回転。彼女のお気に入りで何年も前から着つづけているのである。
「アスカは新調したって言っていたわね。赤かな?霧島さんはどういうのかしら?」
洋服に着替え、アスカ達の浴衣を想像した。アスカは大体あっていたのだが、マナは予想がつかなかった。
「鈴原、私の浴衣姿どう思うかな?」
ヒカリは去年の事を思い出し、頬を赤らめていた。トウジは毎回似合っていると言ってくれているのだ。
トウジの部屋。
「おっしゃあ、これで完璧や」
トウジはアスカと同じように出店で買うものをリストアップしていた。だがそれはアスカより徹底していた。
アスカは頭の中で買うものを考えていただけなのだが、トウジはキチンとノートに書いて予想した金額も記入していた。
「まっときや、出店!」
ケンスケの部屋。
「赤外線に高性能カメラと・・・・」
カメラのチェックに余念がない。
「今日は夏休み最大のイベントだ。撮って撮ってとりまくるぞ」
無論、撮る被写体は決まっている。
「浴衣が多いだろうな。くくくく」
シンジの部屋。
シンジはベットに横たわり、漫画を読んでいた。
「小遣いくれたけど、アスカの為に使いなさいか・・・」
昔の事を思い出した。毎年アスカはハシャギ出店のものを片っ端から買っていった。満足な笑顔で。
「まあ、いいかな」
少し間があきましたが、連載爆走中です。
花火大会か・・・うんうん綺麗だ。
次はjun16の出店です。
アスカちゃん
第4話
「うらめしや〜〜」
「うわっ」
「へへ、ひっかかった、ひっかかった」
リビング、アスカちゃんはシ〜ツを被りシンジ君を脅かしました。
「もうびっくりしたな」
「ふふふ」
シンジ君は笑いながら怒っていました。微笑ましい光景。
「ペンペン、うらめしや〜」
「クエエエッ」
調子にのって今度はペンペンを脅かします。驚きました。
でも本当は怖くありません。怖いフリをしました。
ペンペン曰く
(驚かないとアスカちゃんは泣くからです)
と言うことでした。シンジ君もそうでした。
「たっだいま〜」
ミサトさんのご帰宅です。
「そうだミサトにも」
アスカちゃんは隠れました。
コツコツコツ
足音が近づいてきます。
(今よ!)
「うらめし・・・・キャアアアア!!!!」
アスカちゃんは悲鳴を上げ腰を抜かしました。
ミサトさんはホラ〜映画のマスクを被っていたのです。
「うえ〜〜〜〜〜ミサトの顔が〜〜不細工に」
「失礼しちゃうわね。マスクよマスク」
ミサトさんはマスクを脱ぎ、アスカちゃんに近づけます。
「いやああああああ」
間近で見て、恐怖倍増、3倍満いいえ数え役満です。
「うえ〜〜〜〜〜ん」
「ミサトさん、アスカが怖がっていますよ」
「そりゃそうよ、1番怖いマスクだから」
「うわ〜〜〜ん」
アスカちゃん、ボロボロと涙を流しました。
「ほらアスカ涙を拭いて」
「クエ」
シンジ君とペンペンはアスカちゃんをなだめました。
「う、ううひっく。ミサト憶えておきなさいよ」
ヨロヨロと立ちあがりミサトさんにビシっと指をさしました。
「憶えておこうかしらん。ガオ〜」
ミサトさんはニヤリとまたマスクを被りました。
「ひええええええ!」
アスカちゃんはまた泣きだし、シンジ君の後ろに隠れました。
「ミサトさん、やめてください」
「はいはい、シンジ君ご飯お願いね」
「はい」
「ううひっく、ひっく・・・」
「クエクエクエ」
アスカちゃんはペンペンに頭を撫でてもらっていました。
おしまひ
アスカちゃん第4話公開です。第3話は「EVA CHANGING」Vol.12 エ〜スをねらえ 後書きに載っています。
こんな連載小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
エヴァンゲリオン学園:第弐拾参話 花火大会、6時間前